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「ドージコイン」の開発者が仮想通貨を強く批判し賛否両論が巻き起こる


インターネットミームから発祥した仮想通貨「ドージコイン」開発者の1人であるジャクソン・パーマー氏が、Twitter上で仮想通貨全体について言及し、「仮想通貨は本質的に右翼の超資本主義技術である」と強く批判する論説を展開しました。これに対し、分散型金融アプリケーションを開発するAva Labsの共同創設者兼COOのケビン・セークニー氏が一つ一つ反論しています。

On Myopic Critiques of Crypto - by Kevin Sekniqi - Markov
https://sekniqi.substack.com/p/on-myopic-critiques-of-crypto

ビットコインの人気が高まっていた2013年、ソフトウェア開発者のパーマー氏は同じく開発者のビリー・マーカス氏とともに、ジョークとして「ドージコイン」を作成。その後2015年にパーマー氏はドージコインの開発から離れました。柴犬のインターネットミーム「Doge(ドージ)」のパロディとして作られたドージコインはしばらくの間ほとんど取引されることがありませんでしたが、テスラのイーロン・マスク氏の発言を受けて、2021年2月上旬ごろから価格が急上昇。マーカス氏はわずか数時間で書いたコードの価格が上昇している点について、「これは非常にバカげています」と述べていました。

イーロン・マスク氏がジョークで作られた柴犬印の仮想通貨「ドージコイン」に言及、価格が一気に上昇する - GIGAZINE


そして2021年7月15日、パーマー氏が「『仮想通貨に再び手を付けるのか』という質問がよく来るため、質問が繰り返されることを避けるために理由を説明しつつ回答します」とツイート。これに対し、分散型金融の専門家であるセークニー氏は「パーマー氏の主張は近視眼的で仮想通貨の本質を見逃しており、まっとうな文体で書かれているため虚偽が広まる可能性があります」と反論しました。以下はパーマー氏のツイートと、それに対するセークニー氏の意見です。

◆パーマー氏の発言その1
何年にもわたって調査した結果、仮想通貨は本質的に右翼の超資本主義技術であり、主に租税回避、規制・監督の緩和、人為的に強制された「希少性」を組み合わせて、支持者の富を増幅するために構築されたのだと思います。


・発言その1に対するセークニー氏の反論
テクノロジーがどのように政治的に左右するのでしょうか?インターネットは情報の自由な往来を可能にするので右翼の技術なのでしょうか?確かに、画期的なテクノロジーの支持者は、通常自分たちのために富を生み出します。そして、多くの支持者は怪しげな売買人と初心者とを区別できないため、支持者の富は悪者の手に渡ってしまいます。仮想通貨においては特にこれが顕著です。

「租税回避」という点については、私はアメリカのように強力な税制が敷かれている法域に住んでいながら仮想通貨を通じて税金を回避している人を誰も知らないので、これは単純な間違いです。また「規制・監督」という点についても、これらは通常新しいテクノロジーに遅れをとるものですが、必然的に追いつくものであり、今後適切に規制されるようになります。


「人為的に強制された希少性」という点はパーマー氏の主張の中で最も面白い部分です。なぜなら、パーマー氏は完全に要点を見落としているからです。仮想通貨の取引台帳であるブロックチェーンはプロトコルであり、仮想通貨の経済ルールはコードにより施行されています。ダイヤモンド業界が人為的にダイヤモンドの希少性を高めているような「強制された希少性」は仮想通貨にはありません。

◆パーマー氏の発言その2
「分散化」の主張にもかかわらず、仮想通貨業界は裕福な人物らの強力なカルテルによってコントロールされています。彼らは時間と共に既存の中央集権化された金融システムと結び付いた機関を組み込むよう進化しており、おそらく取って代わろうとしています。


・発言その2に対するセークニー氏の反論
一部の仮想通貨は億万長者によってコントロールされていますが、そうでないものもあります。また、どの仮想通貨プラットフォームが機関を組み込もうとしているのでしょうか?この主張においてより適切な表現は「組み込む(incorporate)」ではなく、「混乱させる(disrupt)」もしくは「変える(transform)」です。

◆パーマー氏の発言その3
仮想通貨業界は、経済について何も知らない初心者からお金を巻き上げるカルトのような一獲千金的な仕組みを長持ちさせるために、インフルエンサーやメディアがいかがわしい取引関係を築いて利益率を高めています。


・発言その3に対するセークニー氏の反論
確かに、仮想通貨業界の一部はパーマー氏の言うとおりのことをしています。これはマーケティングの世界が生み出した不幸な結果であり、私にとって仮想通貨の最も嫌いな部分の1つでもあります。

◆パーマー氏の発言その4
金融的な搾取は間違いなく仮想通貨発足以前から存在していましたが、仮想通貨はとりわけトップ層がより効率的に稼ぐためのファネルを作るために構築されており、下層に対する保護はぜい弱です。


・発言その4に対するセークニー氏の反論
仮想通貨はそのようなことをするために作られたものではありません。ただし、ドージコインやShiba Inuなどは違います。パーマー氏はカジノやメガ・チャーチのようなものを思い浮かべているのかもしれません。たばこ産業、アメリカの医療制度など、弱者を搾取するために進化したものは他にもあります。

◆パーマー氏の発言その5
仮想通貨は今日の資本主義システムの「腐敗」「詐欺」「不平等」といった最悪の部分を獲得し、平均的な人々のセーフティネットとして機能する「監査」「規制」「課税」といった介入をソフトウェアを使って技術的に制限しているようなものです。


・発言その5に対するセークニー氏の反論
ブロックチェーンは完全に公開されて透明性があり、高度に監査可能で追跡可能なため、この主張も非常に「面白い」と思います。たとえば、最近ランサムウェア攻撃を受けたColonial Pipelineはほとんどすぐに損失を取り戻しています。ブロックチェーンは多くの点で規制当局にとって夢のような仕組みです。パーマー氏の主張は、単にパーマー氏が「テクノロジーを規制する方法を進んで学ぶ練習をすること」か「テクノロジーを理解せずに禁止すること」のどちらを選ぶかという違いにすぎません。

◆パーマー氏の発言その6
仮想通貨の口座のパスワードを忘れた?あなたのせいです。詐欺被害に遭った?あなたのせいです。億万長者は市場を操作していますか?彼らは天才です。

これらは「参加自由」の資本主義仮想通貨の危険なところであり、残念ながら仮想通貨はその発足以来、これらを促進する設計になっています。


・発言その6に対するセークニー氏の反論
確かに、仮想通貨のUIは最悪です。仮想通貨に関わる誰もが絶えず不平を漏らしています。ごく一部の人が「仮想通貨の秘密鍵を失った場合に資産を回収できなくなるというのはバグではなく仕様です」という極端な主張をしていますが、ほとんどの人はこの主張に賛同していません。

◆パーマー氏の発言その7
最近では、仮想通貨に対する極めて謙虚な批判でさえ、業界を支配する億万長者や、「億万長者の仲間入りになれる」とうそをついて取引をした個人投資家の怒りを買います。誠実な議論はほぼ不可能です。


・発言その7に対するセークニー氏の反論
可能です。私たちはちゃんと「誠実な議論」ではない「露骨な虚偽の陳述」に対し批判しています。

◆パーマー氏の発言その8
これらの理由から、私は仮想通貨に関する議論にわざわざ参加することはありません。そのようなことは私の政治・信念体系とは異なります。

難しい質問を投げ続け、全てのテクノロジーに対し妥当性や客観性を吟味する姿勢で見る人々に拍手を送ります。新しいテクノロジーは世界をより良い場所にすることができますが、テクノロジーの本質的な政治性や社会的影響から切り離されてしまった場合はそうではありません。


・発言その8に対するセークニー氏の反論
その通りですが、私たちはみんな、より友好的な方法で仮想通貨について議論を得ることでお互いの利益になると思います。

セークニー氏は「全体として、パーマー氏は仮想通貨業界の大部分を『誇大で強欲なプロジェクト』と見なしていますが、その一方で価値を保存・伝達・表現する方法に変革をもたらそうとする人々も多数います。その意味で、仮想通貨は非常に重要なテクノロジーです」と述べています。

パーマー氏のツイートには賛否両論が多数寄せられています。

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in Posted by log1p_kr

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