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新型コロナのインド変異株「デルタ株」のさらなる進化形「デルタプラス株」とは?


2021年6月末、新型コロナウイルスのインド型変異株「デルタ株」に関してインド政府が「感染力の向上」などのさらなる変異を果たした「デルタプラス株」を確認しました。インドでも感染が増えつつあるとされるデルタプラス株について、ウイルスに関する専門家であるバナーラスヒンドゥー大学免疫学科部のスニット・K・シン教授が解説しています。

What's the 'Delta plus' variant? And can it escape vaccines? An expert explains
https://theconversation.com/whats-the-delta-plus-variant-and-can-it-escape-vaccines-an-expert-explains-163644

2021年6月25日、インド保健省は記者会見の中で、デルタ株がさらに変異した亜種「B1.617.1」「B.1.617.2」「B.1.617.3」について言及し、このうちB.1.617.2を「Variant of Concern(懸念すべき変異株)」に分類したと発表しました。


インド保健省によると、B.1.617.2が懸念すべき変異株とされたのは、「感染力の向上」「肺細胞受容体に対する結合力の向上」「モノクローナル抗体反応に対する耐性を有する可能性」「ワクチンによって産生される免疫を回避する可能性」などの人類にとって不利益な特性が確認されたため。デルタプラス株の元となったデルタ株ですら、2021年6月末時点でアメリカの感染症例の約20%、インドでの感染症例の約76%を占めており、「感染力の強い」変異株とされています。しかし、デルタプラス株はデルタ株の感染力をさらに強化したものとみられています。

シン教授によると、デルタプラス株は2021年3月にヨーロッパで発見されたものですが、インドでも4月・5月・6月の3カ月に集計された4万5000件の症例のうち48件でデルタプラス株の感染が確認されたことから、インドで今後感染が拡大し、支配的な変異株になると予想されているとのこと。


デルタプラス株は「ワクチンの免疫を回避する能力」と「モノクローナル抗体の効果を減らす能力」を獲得している可能性が示唆されていることから、シン教授はウイルスが細胞に侵入する際に活用するスパイクタンパク質が変異している可能性があると指摘。既存の研究によって、デルタ株はワクチンの感染予防作用が効きにくいという結果が得られているため、デルタプラス株も同様にワクチンの予防効果に対する耐性を有している可能性があるという懸念を示しました。

イギリスの公衆衛生庁の(PDFファイル)公式発表によると、デルタ株に対する感染予防効果は、ファイザー製ワクチンの単回接種では33%、2回接種(接種完了)では88%の有効性。アストラゼネカ製ワクチンでは、単回接種では33%、2回接種では60%の有効性とされています。

デルタプラス株に対する各種ワクチンの有効性については現在インドで研究が進められている段階。シン教授は「予防接種率が低い国では新たな変異株が今後も発生し続ける可能性がある」と述べつつ、その対策については「特別な措置を講じる必要はありません。我々が続けるべきことは、引き続きワクチン接種数を最大化し、変異株の察知のためにゲノム監視を強化し、新型コロナウイルス対策として適した行動をとることです」と語りました。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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