4万人以上が参加した新型コロナの臨床試験プロジェクト「RECOVERY」が1年間の成果を発表
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の有効な治療法を研究するために創設された、イギリス国内の4万人以上のCOVID-19患者を調査した実績を持つ大規模なランダム化比較試験プロジェクト「RECOVERY(Randomised Evaluation of COVID-19 Therapy)試験」が、2021年3月23日に1周年を迎えました。RECOVERY試験の共同リーダーであり、このプロジェクトを主導したオックスフォード大学の新興感染症教授でもあるピーター・ホービー氏が、1年間の成果について語っています。
RECOVERY 1 year on: a rare success in the COVID-19 clinical trial landscape
https://www.nature.com/articles/d41573-021-00068-w
ホービー氏はCOVID-19の流行以前から感染症の研究に取り組んでおり、感染症が発生した際の臨床試験を開始する速度を改善しようと努めてきました。2009年の新型インフルエンザの世界的な流行では試験を行うことに失敗したものの、2014年の西アフリカでのエボラ出血熱の流行の際には、発生から数カ月以内で試験を開始することができたとのこと。しかし、この試験も流行が終わりに向かう頃に始められたものであったため、満足のできる結果を得られなかったといいます。
COVID-19の発生が報告された時、ホービー氏は中国の同僚とそのチームと協力し、武漢での試験を設定していたとのこと。MERSコロナウイルス用に準備していたプロトコルを実行し、最初の感染症例が発表されてから20日以内にHIV治療薬のロピナビルとリトナビルを用いた臨床試験登録を行いました。それから間もなく、レムデシビルを用いた2回目の臨床試験を武漢で実施しています。
しかし、中国で積極的な公衆衛生管理措置がとられたために武漢での症例数が急落し、研究のための目標サンプルサイズに到達しなかったとのこと。その頃にはヨーロッパでも症例が報告されはじめたことや、資金提供者からの追加の援助とオックスフォード大学の医学・疫学教授のマーティン・ランドレイ氏との出会いなどから、イギリス国内でさらなる研究が進められることになりました。
ホービー氏とランドレイ氏は世界保健機関(WHO)が行っている連帯試験に協力するためにWHOと話し合いを進めていたのですが、ホービー氏らはその枠組みが複雑すぎると判断したとのこと。これは、イギリスの国民保健サービス(NHS)が患者の対応に手一杯だったことから、患者の臨床試験登録手順を簡略化することが急務であると考えたからです。
その後、ロピナビルとリトナビルを含む4つの薬で臨床試験を実施。殺到する臨床試験登録申請にはイギリス政府が設立したCOVID-19治療諮問委員会を通じて受け入れの可否を決定するような仕組みにしたとのこと。RECOVERY試験はイギリスの175カ所以上の病院で行われ、十分なフィードバックを得ており、これまで設計が不十分なまま行われた試験で膨大な量のリソースが無駄になったことや、信頼性の低いデータが発生していた状況が改善されたとホービー氏は語っています。
ホービー氏は「製薬会社が数千万ドル(数十億円)を費やして1000人の患者を対象とした試験を行うのか、それよりもはるかに低コストで明確な回答が得られる大規模な試験を採用するのかを考えるようになるでしょう」と述べています。
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