サイエンス

エイズを2倍以上の速さで進行させるHIVの変異株が発見される


エイズの原因ウイルスであるHIVに関する研究は世界中で行われており、2022年にはHIVに効果を発揮するmRNAワクチンの臨床試験が始まりました。そんな中、従来のHIVよりも毒性の強い変異株を発見したとする研究結果が新たに報告されました。

A highly virulent variant of HIV-1 circulating in the Netherlands
https://www.science.org/doi/10.1126/science.abk1688


Newfound variant of HIV progresses to AIDS faster and may be more transmissible | Live Science
https://www.livescience.com/new-severe-hiv-variant-netherlands

HIVは免疫細胞の1種であるCD4陽性リンパ球を破壊し、感染者の免疫力を弱めることで多様な症状を引き起こすウイルスです。このHIVには特徴の異なるサブタイプが複数存在しており、ヨーロッパで広がっているHIVは「サブタイプB」が主流とされています。

新たに発表された研究では、ヨーロッパとウガンダのHIV追跡プロジェクト「BEEHIVE」に登録された8000人以上のHIV遺伝配列を分析し、オランダを中心に合計109人の患者がHIVのサブタイプBの変異株に感染していたことを突き止めました。加えて、この変異株に感染していた患者のウイルス量は通常のサブタイプBに感染した患者の3.5倍~5.5倍となることが判明。さらに通常のHIVでは感染確認からエイズに進行するまで平均6~7年かかるのに対して、変異株では平均2~3年でエイズに進行することも明らかになりました。


研究チームによると、発見された変異株では遺伝配列が変化している部分が多く、どの遺伝配列がエイズの進行を早めているかは特定できていないとのこと。また、変異株は1980年代後半~1990年代前半に登場したと推測されており、当時はHIV抑制剤の使用が広まっていなかったことから広範囲に変異株が広がったと考えられています。

一方で、発見された変異株の確認数は2008年をピークに減少に転じていたとのこと。この理由について論文の筆頭著者であるクリス・ウィマント氏は「変異株が多く確認されたオランダにおけるHIV感染を防ぐ努力の結果である可能性が高いです」と述べています。

なお、HIVの感染が全体的に減少していることから、発見された変異株が他のHIVと比べて感染力が高いか否かを判断するのは困難とされています。また、ウィマント氏は「HIVに感染するリスクのある人は、定期的に診断を受けることで感染の早期発見とその後の即時治療が可能です。この原則は、変異株にも同様に当てはまります」と述べ、定期的な診断の重要性を強調しています。

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in サイエンス, Posted by log1o_hf

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