サイエンス

他人の食事の音や呼吸音にイライラする「ミソフォニア」の脳科学的理由が明らかに


咀嚼(そしゃく)する音や飲み物を飲む音、呼吸する音など、他人が日常的に出す音を過剰に嫌う病気を「ミソフォニア」といいます。ニューカッスル大学の研究者によって行われた研究によって、ミソフォニアを患う人は「音を処理する脳領域」と「口と喉の筋肉の動きを処理する脳領域」が通常よりも強いつながりをもっていることが明らかになりました。

The motor basis for misophonia | Journal of Neuroscience
https://www.jneurosci.org/content/early/2021/05/20/JNEUROSCI.0261-21.2021


Research reveals why some find the sound of others eating so irritating | Neuroscience | The Guardian
https://www.theguardian.com/science/2021/may/24/research-reveals-why-some-find-the-sound-of-others-eating-so-irritating

ミソフォニアは音恐怖症あるいは音嫌悪症と呼ばれ、他人が発する咀嚼音や飲み物を飲む音、タイピング音などを聞くと否定的な感情反応を引き起こす医学的障害です。ミソフォニアの原因は「脳における情報処理が通常と違うこと」にあると以前から指摘されていましたが、具体的にどういう違いがあるのかははっきりしていませんでした。

タイピングや呼吸などの「音」に反応して苦しんでしまう「ミソフォニア」の原因とは? - GIGAZINE


ニューカッスル大学バイオサイエンス研究所のSukhbinder Kumar氏らの研究チームは、ミソフォニアの原因が他人の動きを過剰にトレースしてしまう「ミラーニューロンシステム」にあるという仮説を唱えていました。これは例えば、他人がもぐもぐと口を動かすのを見たり聞いたりすることで、実際に口を動かしていないのにもかかわらず、自分も口を動かすための脳領域が活性化されてしまうというものです。

研究チームは、ミソフォニアの症状を引き起こす音のほとんどが「顔の動きから生まれる音」であることに注目し、脳や脊髄の血流動態反応を視覚化できるfMRIを使って、およそ40人のミソフォニア患者と33人の対照群の脳神経活動を比較しました。

その結果、ミソフォニア患者群と対照群の間で、聴覚をつかさどる脳領域である聴覚野の活動に違いは見られませんでしたが、ミソフォニア患者群は対照群よりも「顔面運動をつかさどる脳領域」がトリガー音に反応して強く活性化することがわかりました。


今回の研究結果から研究チームは、ミソフォニアが「音に対する脳の反応によるもの」ではなく「音を出すための運動システムによるもの」であり、トリガー音は他者の運動を伝える情報媒体となっていると主張しました。Kumar氏は、ミソフォニアがミラーニューロンシステムによるものであることが将来的に立証されれば、ミソフォニアのより効果的な治療法も発見できる可能性があるとしています。

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in サイエンス, Posted by log1i_yk

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