私たちはなぜ不安を感じてしまうのか?
by Teodor Bjerrang
不安に駆られた時に不安な気持ちは抑えつけようとして、気にしすぎてしまったがゆえに逆に不安が増大してしまう……ということはしばしば起こりがち。「なぜ不安になるのか」を理解すれば少しは気分が軽くなるはず、ということで、「不安」が生まれる仕組みを科学的に説明したムービーがYouTubeで公開中です。
Why Are You Anxious?
多くの人がテストを解いているときや就職活動のときなど、不安に駆られて心が暗くなってしまった経験があるはず。そして不安な気持ちが平穏なはずの日常にまで続いてしまい、人生がつらくなってしまうこともしばしばあります。なぜ不安な状態というのは簡単に収まらず、持続してしまうのでしょうか?
世界では700万人近い人々が不安障害に悩まされています。不安障害とは、過度の不安に6か月以上続けて悩まされる症状を指します。
不安障害によって体に表れる症状として、不眠や刺激に対して過敏になったり、筋肉の張りが出たりすることもあります。
不安障害に似た病気としてパニック障害を連想する人もいるかもしれませんが、パニック障害は極度の恐怖が短時間で発現する、不安障害とは異なるものです。
パニック障害は身体的な症状として激しい動悸や過呼吸、めまいを引き起こします。パニック障害は不安障害を抱えていない人でもいきなり発症し、明確な発症原因が突き止められていません。
不安な気持ちが何によって引き起こされているのかまだ完全には解明されていませんが、不安な気持ちを引き起こす要因の一部に扁桃体と視床下部が関連していることがわかっています。扁桃体と視床下部は、ホルモンの一種であるコルチゾールとアドレナリンの循環を支配する部位です。
不安障害を持つ人の40%には同様の症状を持つ親族がいるという遺伝的結果もあり、これは遺伝子に組み込まれたホルモンレベルが関与しているものと考えられています。
また、環境も不安障害を引き起こす要素の一つ。一定の不安障害は子ども時代のトラウマと関連している言われています。
GABA、セロトニン、ドーパミンなどの神経伝達物質の増減も、不安障害の原因かもしれません。
セロトニンが分泌され、脳のニューロンからニューロンへシナプスを通って移動することによって人は幸福を感じますが、シナプスを通れなかったセロトニンは、セロトニントランスポーターによって元のニューロンへと戻ります。
不安障害の一種であるOCD(強迫性障害)はセロトニントランスポーターが突然変異を起こし、大量のセロトニンがニューロン間を移動できず、元のニューロンへ戻ってしまうことが原因と考えられています。
ニューロンへ戻るセロトニンが増えるとシナプスを通るセロトニンの量が減り、不安障害を引き起こしてしまうのです。
そのため、セロトニンが元のニューロンに取り込まれないようにする選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)という薬が、不安障害の薬として処方されることが多々あります。
多くの不安障害は扁桃体と中脳の灰白質エリアが過剰反応するという症状を引き起こしますが、これは私たちの脳ではなく体に悪影響を与えます。
300人の被験者を5年にわたって研究した結果によると、扁桃体が過剰反応する人は心疾患のリスクが高まり、骨髄内の白血球が増加したり、炎症反応が起こって動脈内に脂肪が沈殿したりします。
なにかの恐怖症を持っている人は不安障害のリスクが増加しますが、クモ恐怖症や高所恐怖症などは生存に有利だからこそ遺伝子に組み込まれているのも事実。
フルーツを食べた後のネズミに電気ショックを与えると、そのネズミはフルーツの匂いを恐れるようになります。そして、「フルーツの匂い恐怖症」となったネズミの子孫は、実際に電気ショックを受けていないにもかかわらず、生まれつきフルーツの匂いを恐れるのです。これは、「フルーツの匂いは危険だ」という生存に有利な情報が、恐怖症として遺伝していることを示しています。
不安障害の治療法としては、認知行動療法によって行動につながる考えを変えることで、結果的に引き起こされる行動を変えて不安に対処するという方法がとられています。
SSRIやセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)などの薬剤を処方して、セロトニンやノルアドレナリンの再吸収を阻害することも有効ですが、副作用や薬に対する耐性がついてしまう点には注意が必要です。
ベンゾジアゼピンは睡眠導入や筋肉のリラックスに有効ですが、高齢の人が摂取すると認知障害を引き起こしてしまうこともあります。
不安に関する神経の作用は非常に複雑で、不安を抱えている人に「大丈夫だから落ち着いて」「頑張って不安を乗り越えなくちゃ」と伝えても効果がないことは頭に置いておくべきでしょう。
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