世界から隔絶された空間で孤独に生活すると人はどのようになってしまうのか？

by Amber Kost

「誰とも関わらずに一人で孤独に過ごす」という発想は、他人との交流に煩わしさを感じている人にとっては非常に魅力的である一方、「孤独は健康に悪い」という指摘もされています。孤独は人体に有害だとする説も多く提唱されていますが、「外界から隔絶されて孤独に暮らしている人はどのようになってしまうのか？」について解説したムービーがYouTubeで公開されており、孤独と健康のつながりについて知見を広げることができます。

What Would Happen If You Were Alone Forever? ft. GingerPale


ひとりぼっちで過ごす時間は心を落ち着かせ、忙しい毎日にゆったりとした時間を与えてくれるもの。

しかし、もし仮にずっと一人で過ごしていたならば、人間はどうなってしまうのでしょうか？

友達と一緒に過ごす時間は幸せを増し……

寿命を延ばすことにもつながります。

1950年代、「孤独な状態に置かれた動物はどのようになってしまうのか？」を研究するために、ウィスコンシン大学の研究者によって恐ろしい実験が行われました。

研究者は複数のサルを実験体とし、それぞれ別のオリに閉じ込め続けたとのこと。

すると、実験開始からわずか数日でサルには悪影響が出始めました。

閉じ込められたサルは前後に体を揺すったり、自分の体を傷つけたりといった奇妙な行動を取り始め……

何もない虚空を見つめ続けるサルも現れ出したと研究者は報告しています。

サルを対象に行われた実験の結果が明らかに悪いものであったことから、同様の実験は人間に対してほとんど行われてきませんでした。

しかし、研究者が意図した実験ではなく、結果的にサルを使った実験と同様の状況が作り出されてしまうケースがあります。

それは、囚人を閉じ込める独房です。

刑務所で独房に収監された囚人を対象にした研究では……

人間が外界から隔絶された時に、行動や思考が自身のコントロールを失ってしまう可能性が示唆されています。

独房に閉じ込められた囚人の認知機能は低下し、脳波も減少し、不安は増大するとのこと。

囚人にはパラノイア、強烈な怒り、パニック発作を始めとするさまざまな症状が表れ始めます。

独房内での自殺率および自傷率は非常に高いとのこと。

ある研究によれば、カリフォルニアの刑務所で発生した自殺の73％が外から隔絶された独房で発生しています。

ただし、そのような独房に収監されている囚人は、全体のわずか10％以下に過ぎないとのこと。

また、隔離された空間に拘束されると……

囚人は自分にしか見えない幻覚を見たり、幻聴を聞いたりすることがあります。

幻覚や幻聴は、外界からの刺激を感じ取る能力に関する脳の部分が、異常な活動を行うことによって引き起こされます。

極度に孤立した状況で、ほとんど運動することもなく同じ風景ばかりを見続けた人は、外界から受ける刺激があまりにも少ないために、こういった幻覚や幻聴といった架空の刺激を作り出してしまうことがあるそうです。

しかし、孤独な環境がもたらす人体への影響は、こうした心理的なものだけではありません。

心臓の痛みや消化器系の疾患、食欲不振による体重減少といった、身体的な悪影響も孤独な環境によってもたらされます。

アメリカで最も長く独房に収監されてから釈放された人物は、ルイジアナ州アンゴラにある刑務所の独房に長期間収監され、同様に長期間収監された囚人2人と共にアンゴラ・スリーという異名を取るほどになったアルバート・ウッドフォックス氏。

黒人運動活動家だったウッドフォックス氏は、1972年に看守を殺した罪に問われてから43年間もの長期間にわたって独房に収監されていたとのこと。

ウッドフォックス氏は1日に1時間だけ、オリに入ったままの状態で外に出されましたが、他の囚人との交流や運動などは許されませんでした。

長年にわたる独房への収監が人体に悪影響を与えるのは確かですが……

人によっては、数日間社会から隔絶されただけでも、後々の人生にまで影響を与える精神的ダメージを負ってしまうことがあるとのこと。

「家から出ないで一人で過ごすのが好きだし、それで何も不都合はない！」と思っている人でも……

気がつかないうちに精神にダメージを負っているかもしれません。