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AppleのM1搭載「iPad Pro」レビューまとめ、M1搭載で狂喜乱舞かと思いきや辛口レビューが目立つ


Appleが2021年4月21日に開催した配信イベントの中で、第5世代の新型「iPad Pro」を発表しました。この新型iPad Proには海外メディアから絶賛の嵐を受けた「M1」チップが搭載されているということで、iPadを新次元に導くことが期待されています。そんなM1搭載iPad Proのレビューがさっそく海外メディアから続々登場しているので、いったいどんな反応なのかまとめてみました。

M1搭載の新型iPad Proは、前モデルのiPad Proと比べてCPUは50%、GPUのグラフィックス性能は最大40%高速になりました。筐体デザインは変わっていませんが、電力効率も向上し、ストレージへのアクセス速度も2倍となります。また、入出力ポートはUSB 4にも対応するThunderboltポートとなったことで、有線接続での帯域幅が従来の4倍(最大40Gbps)となっています。加えて、Pro Display XDRと同等のディスプレイを搭載することで、「最も先進的なモバイルディスプレイ」に仕上がっているとAppleは豪語しました。

M1チップ搭載の新型「iPad Pro」が登場、iPadはさらなる高みへ - GIGAZINE


The Vergeは新型iPad Proを「夢のディスプレイ」と評しており、「新しい12.9インチのiPad Proにおいて重要な唯一の質問が、『あなたは素晴らしいディスプレイが欲しいですか?』というものです。新しいディスプレイはとても素晴らしいため、ハイエンドのテレビ以外で映画を見るにはベストの選択肢だと思います」と記し、新しいiPad Proのディスプレイを称賛しています。

The Vergeは、新型iPad Proが優れたベンチマークスコア叩き出したM1チップを搭載し、さまざまなアップグレードを果たしていることを考慮しながらも、「素晴らしいM1チップでさえ、iPad Proとは何か、iPad Proで何ができるか、という話を根本的に変えることはありません。結局のところ、iPadはiPadです」と記し、チップや細かなアップデート以上に、美しいディスプレイに重きを置くか否かが購入の際には重要な要素となると指摘しています。

ディスプレイには「液晶」と「有機EL」の2種類が存在しています。有機ELでは各ピクセルが自己発光しますが、液晶は複数のLEDバックライトを用いてまとめてピクセルを照らします。そのため、液晶ディスプレイは比較的安価で長持ちし、明るく焼き付きにくいという利点を有しており、有機ELは黒色のピクセルが全く点灯しない、つまりは優れたコントラストを表現できるという長所を有しています。ただし、有機ELには液晶よりも高価で明るくない、という短所があります。


しかし、12.9インチの新型iPad ProのディスプレイはミニLEDディスプレイ(公式はLiquid Retina XDRディスプレイと呼称)を採用しています。このミニLEDディスプレイは、液晶ディスプレイで有機ELレベルのコントラストを再現できるような技術です。これにより、従来の液晶ディスプレイを採用している11インチモデルと比べ、12.9インチモデルは黒が真に黒く、高いコントラスト比を提供しながら非常に明るいディスプレイに仕上がっているとのこと。なお、ミニLEDディスプレイの利点を感じられるのは「ムービーや写真を全画面で表示している時」だそうで、「HDRコンテンツが特に素晴らしく、ディスプレイ品質のマニアではありませんが、12.9インチモデルのディスプレイは特に暗い部屋ではハイエンドの有機ELテレビと同等のパフォーマンスを示してくれます」とThe Vergeは記しています。

なお、The VergeはM1搭載iPad Proの優れた点として、「素晴らしいミニLEDディスプレイ(12.9インチモデルのみ)」「高速なM1チップ」「インカメラが採用した被写体をフレーム中央に配置するようカメラが自動でパン&ズームするセンターフレーム機能」の3つを挙げています。

一方で、悪い点としては、「マルチユーザーサポートがない点」「カメラの位置」「iPadOSそのものにまだ制限が存在するという点」の3つを挙げています。特に、M1チップを搭載しているものの、iPad ProでMac向けのアプリを使えるというわけではない点にThe Vergeは不満を示しています。また、M1チップのパフォーマンスは圧倒的であるものの、iPad向けのアプリを使用しても「ほとんど速度の向上は感じられなかった」と記し、iPad ProではM1チップの恩恵をMacのように劇的に感じることはなかったとThe Verge。ただし、間もなく登場予定の「LumaFusion」のような高いコンピューティング能力を必要とするアプリを使用するユーザーは、M1チップの恩恵を感じるだろうと指摘しています。また、入出力ポートが相変わらず少ないため、iPadをコンピューターのように使用するにはまだまだ制限が多く存在するとも記しました。

iPad Pro (2021) review: M1 processor, Mini LED screen, and more - The Verge
https://www.theverge.com/22442084/ipad-pro-2021-review-features-screen-mini-led-m1-processor


MacStoriesは「iPad Proの登場以来、飛躍的に進化を遂げるハードウェアに対して、ソフトウェアの進歩は遅く、2つの隔たりに疑問を抱く人が多く存在しました。この隔たりを埋めるため、AppleはiPadOSをリリースするなど、ソフトウェアのアップデートにも尽力してきました。しかし、2021年の新型iPad Proはハードウェアとソフトウェアの隔たりをより大きくするだけで、Appleが独自設計した最新のM1チップや、最先端のLiquid Retina XDRディスプレイ、16GBのメモリといった強力なハードウェアを余すことなく使い尽くすようなエキサイティングなソフトウェアがまだ存在していない」と記し、ハードウェアをいかし切ることができていないソフトウェア面に問題があると指摘。

さらに、「10年近くiPadをメインのコンピューターとして使用している者として言わせてもらいますが、単なるハードウェアの観点からすると、新しいiPad Proは我々が夢見ていたものです。そのため、2021年のWWDCでiPadOSがどのようにアップデートされるかを待ちましょう」と記し、新しいiPad Proをいかせるソフトウェアアップデートを待望しています。

iPad Pro 2021 Review: Future on Standby - MacStories
https://www.macstories.net/stories/ipad-pro-2021-review/


Six Colorsは「2021年のiPad Proは4つのMacに搭載されているのと同じM1チップを採用し、Thunderbolt 3や5Gへの対応により、2020年版の時よりもはるかに大きなアップデートが施されたといえます。実際、12.9インチモデルは見事なディスプレイのおかげで非常に画期的な端末に仕上がっています。それでも、2018年の時と同じ『これらのパワフルなスペックは一体何のためにあるのでしょうか?』という疑問が浮かんできます。iPad ProはiPadOSにより、その驚くべきハードウェアの可能性を十分に発揮できない端末となっているように感じます」と記し、こちらもハードウェアの進化にソフトウェアが追い付いていないと指摘。

さらに、2021年モデルのiPad Proで最も印象的な新機能は「12.9インチモデルにしかないLiquid Retina XDRディスプレイ」と断言。「映画を見るための素晴らしいディスプレイに仕上がっている」と評しています。

なお、新しいディスプレイを採用したことで起きた副作用として「端末が0.5mm厚くなり、重量が約50g重くなったこと」が挙げられていますが、「初めて手にした時に確かに気づいたものの、それほど大きな差異ではなく、すぐに慣れることができた」とSix Colorsは記しました。

2021 iPad Pro review: All systems go, but where? – Six Colors
https://sixcolors.com/post/2021/05/2021-ipad-pro-review/


一方で、The Loopは「M1搭載iPad Proを約1週間使用していますが、この新しい端末にはたくさんの魅力があります。明らかに、新機能の主役はAppleが独自設計したM1チップですが、それ以外にもiPadを誰にとっても楽しく使えるようにする機能がたくさんあります」と、M1搭載iPad Proを手放しで称賛しています。

他メディアからはM1チップの性能にソフトウェア面が追い付いていないという指摘もありましたが、The Loopは「今後登場するであろうより高いコンピューティング能力を必要とするアプリでも容易に処理できるようにM1搭載iPad Proは設計されている」と評し、プロユースや科学、教育、ビジネスといったさまざまな分野で活躍するポテンシャルを秘めていると指摘しました。特に、オーディオ業界ではM1搭載のiPad Proを使うことで、あらゆることが可能になるとThe Loopは期待しています。

他にも、専用アクセサリーのMagic KeyboardはiPad Proを効率的なものに変える「大多数のユーザーにとって必要不可欠なもの」と評し、USB-Cポートを使うことなく本体に接続できる点や、汚れや変色に対する高い耐性などを称賛しています。

iPad Pro M1 Review
https://www.loopinsight.com/2021/05/19/ipad-pro-m1-review/


iMoreは新型iPad Proの優れた点として、「ミニLEDディスプレイ(12.9インチモデルのみ)」「インカメラのセンターフレーム機能が便利」「M1チップは信じられないほどのパフォーマンスの向上を提供」「タブレットとしては最高のスピーカーとマイク」「Magic Keyboardを使えばノートPCに非常に近い感覚」という5つを挙げる一方で、悪い点としては「平凡なバッテリー」「5G」「11インチモデルにミニLEDディスプレイが採用されていない点」「アクセサリーを追加すると非常に高価になる」という4点を挙げました。

iPad Pro (2021) review: One more reason to go pro | iMore
https://www.imore.com/ipad-pro-2021-review


Pocket-lintは「新型iPad ProはiPadのノートPCへの移行を継続していますが、これまでで最も近い交換体験を提供しています。ハードウェアは準備できているのですが、唯一の抑制はソフトウェアです」と記し、ソフトウェアがiPad Proに制限を課していると指摘。さらに、「基本的なタイピングやネットサーフィン以上の体験を求めているユーザーにとって、M1チップを搭載したiPad Proは仕事と遊びの両方に大きな機会をもたらしてくれます。あらゆる面において、12.9インチモデルのiPad ProはmacOSの代わりにiPadOSを実行する5G&タッチスクリーン対応のMacBook Proのようなものです。これはノートPCに最も近いものです。それでもiPad ProはまだノートPCへの移行段階にあり、Appleはまだまだソフトウェア面での制限を解放していく必要があります。よりノートPCライクなものを求めているなら、2021年後半にリリースされるiPadOS 15に期待しましょう」と記しています。

なお、Pocket-lintは新型iPad Proの優れた点として、「より明るく美しいミニLEDディスプレイ(12.9インチモデルのみ)」「使いやすさ」「インカメラ」「5G対応」の4つを挙げ、悪い点として「インカメラのセンターフレーム機能はミスするケースがある」「ソフトウェア面での制限」の2つを挙げました。多くのメディアがインカメラのセンターフレーム機能を称賛する中、Pocket-lintはそれを欠点として挙げている形です。

Apple iPad Pro 12.9-inch (2021) review: The iOS laptop
https://www.pocket-lint.com/tablets/reviews/apple/156870-apple-ipad-pro-12-9-inch-2021-review


CNETも「ハードウェアに関しては飛躍的です。新しいM1チップと12.9インチモデルに搭載された有機ELと同じくらい見栄えのするミニLEDディスプレイ、Zoom中に私を追跡してくれるインカメラなど、いくつかの新しい機能があります。そして、5Gを忘れないでください。ハードウェアはほぼ完璧に見えます。しかし、他のすべてのiPadと同じOSを実行しているため、まだMacではありません」と記し、複数のメディアと同じようにソフトウェアの制限によりMacになれていない点を指摘。

なお、CNETはM1搭載iPad Proのお気に入りの点として「非常に高速なM1チップ」「広角フロントカメラのセンターフレーム機能」「12.9インチモデルのミニLEDディスプレイ」「5G対応」の4つを挙げ、嫌いな点としては「マルチタスクの可能性を解き放つほど柔軟ではないiPadOS」「インカメラの位置はZoomなどのビデオ通話に最適な位置ではない」「アクセサリーにより価格が高額になる」という3つを挙げました。

Apple iPad Pro review: New screen, 5G and M1 chip, but FYI it's still not a Mac - CNET
https://www.cnet.com/news/apple-ipad-pro-review-new-screen-5g-and-m1-chip-but-fyi-its-still-not-a-mac/


TechRadarは「M1搭載の12.9インチiPad Proは、最高のパワーと素晴らしいディスプレイ、多数の小さなアップグレード、そしてAppleにと手なくてはならないオールラウンドな体験を備えた、お金で買える最高のタブレットです。ファンや比類のないタブレット体験をしたい人にとってはベストの選択肢です。ただし、サイズが大きく、価格が高いため、すべての人に適しているわけではありません。よりポータブルで手ごろな価格の別のタブレットを購入した方がいいケースもありますが、間違いなく最高のタブレットです」と、M1搭載の12.9インチiPad Proを称賛。他メディアとは異なり、あくまでもタブレットとしてiPad Proを評価している印象でした。

M1搭載の12.9インチiPad Proの優れた点として、「驚異的なパワー」「素晴らしいディスプレイ」「強力なバッテリー寿命」の3つを挙げており、悪い点として「価格」「128GBのストレージは少なすぎる」「光沢のない色のオプション」という3つを挙げています。

iPad Pro 12.9 (2021) review: a best in class tablet | TechRadar
https://www.techradar.com/reviews/ipad-pro-129-2021-review


Digital TrendsもiPad Proは移行期にあると指摘。新しいiPad Airが手頃な価格でユーザーを引き付けたため、AppleはiPad Proの水準を引き上げるために、Macでも採用した驚くほど高性能なM1チップをiPad Proに採用したと記しています。

また、Digital Trendsは「M1チップ以外にも複数のアップグレードがありますが、おそらく目ぼしいものはありません。その他の機能の中では、12.9インチモデルに搭載されたミニLEDディスプレイ、次に5G対応といUSB 4ポートが目新しい機能かもしれません。しかし、これらをすべて合計したからといって、iPad Air以上にお金を費やす価値のあるタブレットになるでしょうか?」と疑問を呈しています。加えて、前モデルのiPad Proでも十分に強力なチップを搭載しており、「いまだに購入当時のような高いパフォーマンスを維持しているため、M1チップのパフォーマンスを十分に発揮するようなシーンは少なくともまだないように思えます」とDigital Trendsは記しました。

Digital Trendsは12.9インチiPad Proの優れた点として、「信じられないほどのパフォーマンス」「美しいディスプレイ」「見事なデザイン」「センターフレーム機能」「USB 4/Thunderbolt 3ポート」の5つを挙げています。一方で、悪い点として「ほぼMacBookレベルの価格」「11インチモデルにはミニLEDディスプレイが搭載されていない点」の2つを挙げました。

Apple iPad Pro 12.9-inch (2021) Review: The Best Gets Better | Digital Trends
https://www.digitaltrends.com/tablet-reviews/apple-ipad-pro-review-2021/


The Independentは「新型iPad Proの外観は2020年モデルと同じように見えます。しかし、電源を入れるとLiquid Retina XDRディスプレイと超高速なM1チップにより、iPad Proが他に何よりもはるかに優れたタブレットに仕上がっていることに気づきます」と記し、新型iPad Proを称賛。

iPad Pro review: Don’t be fooled into thinking this is more of the same – it is a vision of the future | The Independent
https://www.independent.co.uk/life-style/gadgets-and-tech/ipad-pro-review-apple-5g-display-b1850125.html


12.9インチのM1搭載iPad ProをレビューしたTom's Guideは、「新しいiPad Proはこれまでで最高で、最も明るく、最速のiPadです」「M1チップ、ミニLEDディスプレイ、5G対応のおかげで、贅沢気分を味わいたいなら最高のiPadです」と称賛。12.9インチのM1搭載iPad Proの優れた点を「競合製品と比べて最大200%も明るいディスプレイ」「iPad史上最高パフォーマンスのM1チップ」「クールなセンターフレーム機能」「USB 4/Thunderbolt 3ポートのサポート」「5G対応」の5つを挙げ、マイナス点としては「HDRコンテンツに最適なディスプレイ」「高価なアクセサリー」の2つを挙げました。

Tom's Guideは12.9インチのM1搭載iPad Proについて、「間違いなく今日入手可能な中で、最高のタブレット」と記していますが、一方で「明らかにやりすぎで、ここまで高速にする必要はあったのでしょうか?ディスプレイにも同じことが言えると思います。1500ニトを超える輝度が必要だったのでしょうか?」と言及し、ハードウェアが過剰なスペックを有してしまっていると指摘。12.9インチモデルのLiquid Retina XDRディスプレイは多くのメディアが絶賛しましたが、Tom's Guideは「11インチモデルと12.9インチモデルを並べてHDRコンテンツを視聴したものの、期待していたほどの劇的な違いは感じられませんでした」と記しています。

iPad Pro 2021 (12.9-inch) review: The best kind of overkill | Tom's Guide
https://www.tomsguide.com/reviews/ipad-pro-2021-129-inch

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in ハードウェア, Posted by logu_ii

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