ティラノサウルスの歩行速度は「歩く人間」並にゆっくりだった可能性が示される
映画「ジュラシック・パーク」ではティラノサウルスから他の恐竜や人間が走って逃げ回る様子が描写されましたが、新たな調査で、ティラノサウルスは体の構造上「徒歩の人間並にゆっくりと動いていた」可能性が示されました。
Walk the Dinosaur
https://drive.google.com/drive/folders/1g42g7aSmlgCNptjVowfpx2a7UgLO69YU
Never mind outrunning a T. rex — you could probably outwalk it | Live Science
https://www.livescience.com/t-rex-slow-walker-tail.html
T. rex walked surprisingly slowly, new study finds - CNN
https://edition.cnn.com/2021/04/20/world/t-rex-walked-slowly-study-scn/index.html
白亜紀末期に存在していたティラノサウルスは、全長12メートル、高さ3.6メートル、体重5トン~7トンの大型肉食恐竜だと考えられています。映画の中でティラノサウルスは走り回って獲物を襲う様子が描写されていますが、近年は体の大きさを考慮するとティラノサウルスの移動速度は速くなく、最高でも16~40kmだと考えられています。
既存の研究には、ティラノサウルスの臀部(でんぶ)の高さや歩長から歩行速度を計算した結果、時速7.2~10.8kmほど、つまり人間のランナー程度だと示されたこともあります。
新たな研究でシミュレーションを行ったのはオランダにあるアムステルダム自由大学の修士課程学生であるパシャ・ファン・ベイラート氏ら研究チーム。今回、研究チームはティラノサウルスの体高や足ではなく「尻尾」の動きに注目してシミュレーションを行いました。
写真の人物がベイラート氏。
ベイラート氏は「恐竜にとって尻尾は歩き回るために必要不可欠のもの」と述べています。恐竜は尻尾をバランスをとるためだけでなく、体を前に進めるための推進力を生み出すものとしても利用していたとのこと。ティラノサウルスは二本足で立ち、尻尾を上下に揺らしながら歩いていました。このような動き方は恐竜独特であるとして、ベイラート氏らはティラノサウルスの歩行における尻尾の役割を調査しようと考えたそうです。
研究チームはシミュレーションに使うモデルとして、ナチュラリス生物多様性センターに保管される大人のティラノサウルスの標本を利用。研究チームは標本の尻尾の骨をスキャンして、椎骨についていた靱帯の位置を参照しながら、3Dモデルを構築し、尻尾の動きをシミュレートして歩行速度を割り出しました。
ナチュラリス生物多様性センターで保存されるティラノサウルスの標本「Trix」は以下から確認できます。
Spotlight: 3d T. rex - YouTube
この結果、ティラノサウルスの歩行速度のベースラインは時速4.6kmほどだと示されたとのこと。椎骨と靱帯がどのように動くのかによって時速2.88~5.9kmまでの振り幅があるものの、基本的にはこれまでの研究で示されていたよりも遅い速度でティラノサウルスは動いていたと研究者は考えています。
ベイラート氏らが作成した動くティラノサウルスの3Dモデルは、以下の画像をクリックした先で見ることができます。
ただし、この研究は、他の筋肉の動きや尻尾の左右の揺れなどを考慮していないため不完全なものであると、ロイヤル・ベタリナリー大学のジョン・ハッチンソン氏は指摘します。一方で、このモデルは将来的に、他のアプローチと組み合わせることでティラノサウルスの生態把握に役立つともみられています。
なお、上記とは別に、アメリカ・アーカンソー大学の研究チームは新たな研究で、ティラノサウルスが群れで狩りをしていた可能性を示しています。これは同じ場所から複数のティラノサウルスの骨が発見されたことから示された可能性。一方で研究チームは「環境が厳しくなるにつれティラノサウルスの生息地域が集中した可能性があり、ティラノサウルスが集団で行動していたと断定するにはさらなる証拠が必要です」とも述べています。
Tyrannosaurs may have hunted in packs like wolves, new research has found | Dinosaurs | The Guardian
https://www.theguardian.com/science/2021/apr/19/tyrannosaurs-may-have-hunted-in-packs-like-wolves-new-research-has-found
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