サイエンス

ミックスナッツの袋の中で一番大きいナッツが上に来る現象はなぜ起きるのか?


ミックスナッツやシリアルなどのさまざまな大きさの粒が入った袋を振ると、次第に大きな粒が上の方に偏り、小さな粒が下の方に偏ることがあります。ミックスナッツの中で最も大きな粒がブラジルナッツであることから「ブラジルナッツ効果」と呼ばれるこの現象が起きる理由について、研究者が3Dイメージ技術を使用して調査しました。

Size segregation of irregular granular materials captured by time-resolved 3D imaging | Scientific Reports
https://doi.org/10.1038/s41598-021-87280-1

Size segregation of irregular granular materials captured by time-resolved 3D imaging | Scientific Reports
https://www.nature.com/articles/s41598-021-87280-1

Scientists crack ‘the Brazil-nut’ puzzle, how do the largest nuts rise to the top?
https://www.manchester.ac.uk/discover/news/scientists-crack-the-brazil-nut-puzzle-how-do-the-largest-nuts-rise-to-the-top/

We Finally Know How The Biggest Nuts Always Rise to The Top
https://www.sciencealert.com/scientists-finally-learn-why-the-biggest-nuts-rise-to-the-top

ミックスナッツやシリアルの袋を開けると、上のほうに大きな粒があって下の方に小さな粒があるという偏りを見つけることがあります。せっかく複数の粒をミックスしているのに特定の粒だけが集まってしまうのは、食品メーカーにとって頭が痛い問題です。また、均質でない粒子をシェイクすることで偏りが生じるという現象は、粒状物質を扱う材料科学や製薬、鉱業といった幅広い分野に影響を及ぼしているとのこと。


マンチェスター大学の研究チームはそんなブラジルナッツ効果について調べるため、世界で初めてタイムラプスでX線コンピューター断層撮影を行い、どのようにしてブラジルナッツ効果が生じるのかを分析ました。研究チームは論文で、「人を引きつける魅力と多くの業界にとっての決定的な重要性により、シミュレーションやモデリング、実験を通じてブラジルナッツ効果を調査することにかなりの作業が費やされてきました」と述べています。

ところが、粒状物質の経時的な観察は難しいものだそうで、研究チームは「非均質な粒子の動きに関するデータは非常に限られており、3次元でそれらの挙動を経時的に追跡することはできませんでした」と指摘。そこで研究チームは実際にピーナッツとブラジルナッツを使用し、容器の中に入れて振る様子をタイムラプスのX線コンピューター断層撮影で観察する実験を行いました。


実際に研究チームがシェイクしたミックスナッツの動きを3次元で撮影した様子は、以下のムービーを見るとよくわかります。

Scientists discover why the big nuts rise to the top - YouTube


最初の時点では小さなピーナッツが上に、大きなブラジルナッツが下に集まっています。


40回ほどシェイクを繰り返すと、いくつかのブラジルナッツが水平状態から垂直状態に向きが変わり……


70回ほどシェイクすると、垂直状態のブラジルナッツがピーナッツを押しのけて上に突き出ました。


最終的に複数のブラジルナッツがピーナッツの上で安定しました。


今回の実験では、ブラジルナッツは最初に垂直軸へ回転してから上昇を初め、一番上に達するまで垂直状態のままであることが判明。そして、一度ブラジルナッツが垂直状態になると粒の小さなピーナッツを押しのけて移動しやすくなり、周囲のピーナッツが音楽ライブ会場のクラウド・サーフィングのようにブラジルナッツを押し上げることが発見されました。

また、今回の実験では全てのブラジルナッツが上方に移動するのではなく、いくつかのブラジルナッツは下方に閉じ込められていることも観察されました。これは、ブラジルナッツを押し上げるのに十分なピーナッツが下方へ移動できなかったことが原因だと研究チームは考えています。

研究チームのPhilip Withers教授は、「この実験では容器を繰り返しかき混ぜながら、タイムラプスX線コンピューター断層撮影でブラジルナッツとピーナッツの動きを追跡しました。これにより、ブラジルナッツがピーナッツを乗り越えて上昇するプロセスを初めてみることができました」とコメント。実験の結果は、異なる大きさの粒子が分離するのを防ぐ適切な産業機器の設計につながり、複数の粒子を均一に分配したい製薬・食品加工・鉱業・建設分野での応用が期待できるとのこと。

また、今回の実験は非均質な粒子の分離における粒子形状と方向の重要性を強調しているだけでなく、3Dで動きを追跡する新しい実験的研究や現実的なシミュレーション、強力な予測モデルへの扉を開くと研究チームは述べました。

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in サイエンス,   動画,   , Posted by log1h_ik

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