人の悲鳴には「6種類」の感情が込められていることが判明、危険を知らせる警告の声より喜びの方が優先度が高い「逆転現象」も
人間は危機が身に迫っている時など、恐怖を感じると悲鳴を発しますが、気分が高揚した時の歓声など恐怖以外の感情でも悲鳴のような声を出します。人がさまざまなシチュエーションで発する悲鳴を被験者に聞かせる実験により「人間の悲鳴に込められた感情は6つの種類に分けられる」ということが判明しました。また、危機が迫っていることを知らせる警戒の悲鳴と、そうでない悲鳴を処理している脳をスキャンした結果、専門家が予想していなかった逆転現象も発見されました。
Neurocognitive processing efficiency for discriminating human non-alarm rather than alarm scream calls
https://journals.plos.org/plosbiology/article?id=10.1371/journal.pbio.3000751
Human screams communicate at least six emotions
https://medicalxpress.com/news/2021-04-human-emotions.html
Why do we scream? The six types of human screams have an evolutionary basis
https://www.inverse.com/mind-body/why-do-we-scream-science
人間以外の霊長類や哺乳類の社会では、個体間の衝突や捕食者の出現など、何らかの脅威が存在するネガティブな状況における警報としてのみ、悲鳴が用いられます。一方、人間の悲鳴は喜怒哀楽を始めとするさまざまな感情によっても引き起こされますが、これまで行われた悲鳴に関する研究は、恐怖や攻撃を感じた時の悲鳴に関するものがほとんどでした。
そこで、スイス・チューリッヒ大学心理学部のSascha Frühholz教授らの研究チームは、男女6人ずつ合計12人の被験者にさまざまな状況を想定した「ネガティブな悲鳴」と「ポジティブな悲鳴」を発声してもらい、その声を録音しました。被験者に提示された状況は、「あなたは暗い路地で武装した見知らぬ人に攻撃されています」「あなたは相手を脅そうとしています」「あなたが応援しているサッカーチームがワールドカップで優勝しました」「あなたは性的な快感で思わず声を上げてしまいました」といったものだったとのこと。また、悲鳴は「a」という母音のみで表現することが求められました。
研究チームは次に、収集された420個の悲鳴を別のグループの被験者に聞かせて、その悲鳴から感じる「警戒の度合」を評価してもらったり、聞いている最中の被験者の脳を磁気共鳴機能画像法(fMRI)でスキャンしたりする実験を行い、悲鳴を聞いた被験者の反応を記録しました。その結果、人間の悲鳴に込められた感情は「痛み・怒り・恐れ・喜び・悲しみ・楽しみ」の6つに分類できることが判明しました。
また、悲鳴を聞いている人の脳のスキャン結果から、人間は「痛み・怒り・恐れ・悲しみ」といった警戒の意味合いが強いネガティブな悲鳴より、「喜びや楽しみ」といった警戒色のないポジティブな悲鳴の方が、より迅速かつ正確に処理することが可能だということも分かりました。具体的には、警戒色のない悲鳴は、聴覚を処理する領域や前頭葉などの領域で警戒の悲鳴より大きな活動を引き起こしたとのこと。
この結果について、Frühholz教授は「今回の研究結果は驚くべきものでした。というのも、研究者たちはこれまで『霊長類を始めとする動物の認知システムは、生存メカニズムの一環として、環境中の危険や脅威のシグナルとしての悲鳴を検知することに特化している』と想定してきたからです。しかし今回の研究により、人間の場合はポジティブな感情を悲鳴で伝えたり、それを感じ取ったりすることが、警戒のシグナルより優先されているようだということがわかりました。この優先順位の変化は、人間が発展させた複雑な社会に対応する必要性から生じたものではないかと考えています」と話しました。
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