サイエンス

SFでおなじみの「ワープドライブ」をより現実的とする理論が発表される、はたしてどれだけのエネルギーが必要なのか?


巨大な宇宙船が何光年もの距離をワープによって一瞬にして移動するというのは、SF作品でよく見られる場面です。光の速さを超えて移動する「超光速航法」は創作の世界にしか存在しませんが、現実に可能かどうかについては多くの物理学者が考えています。そんな中、全宇宙に存在するエネルギーの100億倍を必要とするとされてきたワープのアイデアをより現実的なものとする理論が発表されました。

Breaking the warp barrier: hyper-fast solitons in Einstein–Maxwell-plasma theory - IOPscience
https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1361-6382/abe692


Warp Drive: New Warp Drive Design Based on Real Physics
https://www.popularmechanics.com/science/a35820869/warp-drive-possible-with-conventional-physics/


地球から最も近い恒星であるケンタウルス座アルファ星(アルファ・ケンタウリ)は地球からおよそ4.3光年離れています。これは、もし光速で進めばアルファ・ケンタウリの恒星系まで4.3年でいけるということですが、人類は光速で宇宙を移動する技術を手にしていません。


光速で移動するためには、理論的には無限のエネルギーが必要となります。そこで、有限のエネルギーで光速を超えて移動が可能な超光速航法について、多くの科学者が実現できないかを模索してきました。

そんな中、1994年にメキシコの物理学者であるミゲル・アルクビエレ氏が提唱した「アルクビエレ・ドライブ」は、アインシュタインの一般相対性理論に準拠しながら超光速航法を実現できるアイデアとして注目されました。

SFドラマシリーズ「スター・トレック」に登場するワープ航法をヒントとしたアルクビエレ・ドライブは、「宇宙船の後方の時空を膨張させ、同時に前方の時空を収縮させることで宇宙船を動かす」という、いわば時空の波に乗ってサーフィンをするように航行する考え方です。


しかし、アルクビエレ・ドライブを実現させるためには「時空のゆがみ」を故意に発生させる必要があり、そのためには全宇宙に存在するエネルギーの100億倍にも匹敵する膨大な量の負のエネルギーを必要とすることがわかっています。そのため、アルクビエレ・ドライブは理論的には可能でも、現実的には破綻していると考えられてきました。

しかし、ゲッティンゲン大学の理論物理学者であるエリック・レンツ氏が発表した理論によれば、光速で移動する幅656フィート(約200メートル)の宇宙船をアルクビエレ・ドライブで移動させるために必要なエネルギーは、木星の質量に相当するエネルギーの100倍になるとのこと。これは現代の核分裂炉が出力できる最大エネルギーの1030に匹敵するそうですが、それでも全宇宙に存在するエネルギーの100億倍の「1060分の1」にまでエネルギーを抑えることに成功しており、アルクビエレ・ドライブがより現実的なものとなったことを意味します。

レンツ氏は、「この研究は、超光速航法の問題を、基礎物理学の理論から工学に一歩近づけました」と述べています。

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in サイエンス, Posted by log1i_yk

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