サイエンス

宇宙が収縮することはないとする「平坦な宇宙説」に反する証拠が見つかったと研究者が主張

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宇宙はおよそ130億年前に誕生して以来、今に至るまで膨張を続けているといわれています。近年では、将来的にも宇宙の膨張が収縮することはないとする「平坦な宇宙」説が科学者らに有力視されていますが、新たなデータを分析した研究チームは、「宇宙は平坦ではなく、『閉じた宇宙』である可能性が高い」とする説が発表されました。

Planck evidence for a closed Universe and a possible crisis for cosmology | Nature Astronomy
https://www.nature.com/articles/s41550-019-0906-9

Everything We Know About the Shape of the Universe Might Be Wrong | Live Science
https://www.livescience.com/universe-may-be-curved.html


ビッグバン以来膨張を続けてきたとされる宇宙が、今後も膨張を続けるのか、それともやがて収縮するのかについてはさまざまな説が提唱されています。そんな宇宙の膨張パターンについて、時空の曲がり具合を示す「宇宙の曲率」の考えから、宇宙のパターンは「閉じた宇宙」「平坦な宇宙」「開いた宇宙」の3つがあるとのこと。

宇宙全体に含まれる質量が一定の臨界量を超えると、膨張を続けた宇宙はいずれ自身の持つ重力によって収縮に転じます。このケースを「宇宙の曲率が+」であるとし、質量と臨界量が釣り合っている状態を「宇宙の曲率がゼロ」、質量が臨界量を下回っている状態を「宇宙の曲率が-」と呼びます。宇宙の曲率が+の場合、宇宙はやがて収縮に転じる「閉じた宇宙」であり、宇宙の曲率がゼロの場合は無限の未来で膨張が止まる「平坦な宇宙」、宇宙の曲率が-だと膨張が永遠に続く「開いた宇宙」になるといわれています。

開いた宇宙と閉じた宇宙について解説した国立科学博物館のウェブサイトで、それぞれの違いをわかりやすく図示したものがこれ。開いた宇宙では左端のビッグバンから次第に宇宙が膨張していきますが、閉じた宇宙ではあるレベルを超えると収縮に転じ、やがてビッグクランチと呼ばれる宇宙の終わりを迎えます。


宇宙の質量を正確に計測することは難しいものの、近年の観測結果から、「宇宙は平坦である」とする説が科学者らに有力視されてきました。ところが、マンチェスター大学Eleonora Di Valentino氏、ローマ・ラ・サピエンツァ大学Alessandro Melchiorri氏、ジョンズ・ホプキンズ大学Joseph Silk氏の宇宙学者グループは、「新たな観測データから、宇宙は閉じられているという証拠が見つかった」と主張し、議論を呼んでいます。

研究チームが閉じた宇宙の証拠としてあげているのが、欧州宇宙機関(ESA)が2018年に「Planck 2018 Results」として発表した、宇宙マイクロ波背景放射の詳細なマッピングデータです。宇宙マイクロ波背景放射は、天球上の全方向からほぼ等方的に観測されるマイクロ波であり、ビッグバン理論の証拠ともいわれています。

この宇宙マイクロ波背景放射は、ビッグバン直後に発生したと考えられているだけでなく、宇宙全体に広がっており、宇宙の歴史と振る舞いに関する最も重要なデータの一つとみられています。ESAによる最新の観測データによると、宇宙マイクロ波背景放射における重力レンズ効果は予想よりも大きかったそうで、「既存の物理学によって説明されない重力が宇宙マイクロ波背景放射を曲げているのではないか」と、研究チームは考えました。

そこで研究チームが余分な重力レンズ効果を説明する方法を探った結果、「平坦な宇宙ではなく、閉じた宇宙であればこの現象を説明できる」ことが判明したとのこと。「これは、一般相対性理論で説明できるため、(未知の現象を説明するために)新たなパラメーターを付与するよりも物理的な解釈です」と、Melchiorri氏は述べています。

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Melchiorri氏は自身の研究チームが発表した説について、結果が統計的に十分な信頼度に達しているとはいえず、決定的なものではないと認めています。また、宇宙が平坦でなかった場合、宇宙に関する多くのメカニズムを調整し直す必要が生じ、多くの問題を引き起こすことになるとも説明しています。

「私は閉じた宇宙を信じるとは言いたくありません。私はもう少し中立的な立場です。今のデータと、さらに新しいデータが何を示すのかを待ちましょう。今のところは矛盾があり、私たちは注意を払って矛盾の原因を見つけ出そうとする必要があると信じています」と、Melchiorri氏は述べました。

by Jacub Gomez

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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