サイエンス

光速の20%で宇宙船をアルファ・ケンタウリに送りこむ「ブレイクスルー・スターショット」計画の技術的課題とは?


人類最速の宇宙船でさえ、地球から最も近い恒星系であるケンタウルス座アルファ星(アルファ・ケンタウリ)に到達するには何千年もの時間がかかるため、人間の乗組員は生きている間に到着を迎えることができません。そんなケンタウルス座アルファ星におよそ20年で到着することを目指す「ブレイクスルー・スターショット」計画を実現するための技術的課題の解決策を、オーストラリア国立大学の研究チームが発表しています。

OSA | Photonic solution to phase sensing and control for light-based interstellar propulsion
https://www.osapublishing.org/josab/fulltext.cfm?uri=josab-38-5-1477&id=450064


Scientists lead ambitious study to reach infinity and beyond - ANU
https://www.anu.edu.au/news/all-news/scientists-lead-ambitious-study-to-reach-infinity-and-beyond


A Mission To Alpha Centauri Within A Human Lifetime Has Just Become More Realistic | IFLScience
https://www.iflscience.com/space/a-mission-to-alpha-centauri-within-a-human-lifetime-has-just-become-more-realistic/


アルファ・ケンタウリは太陽系からおよそ4.3光年離れたところにある恒星系です。4.3光年はキロメートル表記に換算すると約40兆6800億kmで、現代の宇宙船を使って移動するには、最低でも7000年以上かかるといわれています。

by NASA Goddard Space Flight Center

2016年に物理学者のスティーブン・ホーキング氏とロシアの大富豪であるユーリ・ミルナー氏が提唱した「ブレイクスルー・スターショット」は、宇宙に打ち上げた超小型の宇宙探査機をたった20年でアルファ・ケンタウリまで飛ばし、通り過ぎる一瞬で撮影した写真を地球に送信するという壮大な計画です。しかし、技術的制約が大きく、計画の実現はまだ遠い先のことだといわれています。

アルファ・ケンタウリへ20年で到達する宇宙船を射出する計画をホーキング博士らが始動 - GIGAZINE


宇宙探査機を光速の20%にまで加速させるには膨大なエネルギーが必要となります。そこで、ブレイクスルー・スターショットでは「宇宙探査機に搭載したエンジンとブースターで加速する」という従来の方法ではなく、「地上から強力なレーザー光を照射して宇宙探査機を加速させる」という方法が検討されています。

オーストラリア国立大学のロバート・ウォード博士によれば、「ブレイクスルー・スターショット」プロジェクトに必要なレーザーのエネルギー総量は約1億GWだとのこと。しかし、この大出力レーザーをわずか数メートルの小型宇宙探査機に照射するのは至難の業です。特に、地球を覆う大気によって生じる誤差によって、レーザーによる加速力が大きく低下するとみられています。


そこで、オーストラリア国立大学で応用計測学を研究するカトゥーラ・バンドゥトゥンガ氏は、「人工衛星を使ってレーザーを補正する」というアイデアを発表しました。このアイデアは、宇宙探査船へ正確に大出力レーザーを発射する前に、人工衛星から地上に向けてレーザーを発射することで大気によって生じる誤差を測定するというもの。

バンドゥトゥンガ氏はこのアイデアがうまくいくかを確認するためのテストを計画しており、衛星を使って大気補正を測定する技術や、小さなレーザーを集束させて大きなレーザーを作る技術を実験室レベルで成功させたいと述べています。


ただし、このアイデアでレーザーを正確に照射できても、もう1つ大きな技術的課題がある、とバンドゥトゥンガ氏。照射したレーザーを加速力に変換するために、宇宙探査機は、ヨットが風を受けるように、レーザー照射を受けるための帆を持つ必要があります。

この帆が光の99.99%を反射することで加速力を得られるようになりますが、大出力レーザーのエネルギーで溶けたり変形したりして帆が損傷してしまうと、加速力を得ることができません。バンドゥトゥンガ氏は「大出力レーザーを受けても溶けない帆を開発することは、間違いなく大きな技術的課題の1つです」と述べています。

バンドゥトゥンガ氏は「このブレイクスルー・スターショット計画を成功させるために、世界中の科学者が考え出したユニークで巧妙な解決策を1つにまとめていくのは、とてもエキサイティングです」とコメントしました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
アルファ・ケンタウリへ20年で到達する宇宙船を射出する計画をホーキング博士らが始動 - GIGAZINE

光速の20%の速さで飛ぶ小型探査機計画「ブレイクスルー・スターショット」が直面せざるを得ない危険とは? - GIGAZINE

ホーキング博士らが史上最大の地球外知的生命体探査プロジェクトを発表 - GIGAZINE

30億光年の彼方から届く「高速電波バースト」の観測データを機械学習で再分析したところ新たなバーストが見つかる - GIGAZINE

中国が宇宙人発見を目指す世界最大の望遠鏡、責任者を募集するも応募者ゼロ - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by log1i_yk

You can read the machine translated English article here.