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SF作品によく登場する「ワームホール」とは一体どういうものなのか?


ワームホールという言葉がよくSF作品に登場しますが、「宇宙の一点から別の一点へワープできる抜け道」といったこと以上に、具体的にどういうものなのか説明することは難しいものです。そんなワームホールについて解説したムービーが、YouTubeで公開されています。

Wormholes Explained – Breaking Spacetime


もしもワームホールというものが目の前に現れたとしたら、それはブラックホールに似たものだと考えられています。


一体ワームホールは実在するのでしょうか、それとも物理学者の頭の中にだけ存在する幻のような存在なのでしょうか。


長い間、人々は宇宙空間を平らな舞台のようなものだと考えていました。舞台の上には太陽や地球、他の星々が配置されており……


恒星や惑星が取り除かれたとしても、そこには舞台としての宇宙が残るものだと思われていたのです。


ところが、アインシュタイン一般相対性理論が登場したことによって従来の宇宙観は覆されました。


アインシュタインによれば、宇宙は空間と時間によって構成されており、舞台の上に置かれた天体などによって宇宙空間は伸びたりゆがんだりしているそうです。


従来の宇宙が硬い板の舞台だとすれば、相対性理論による宇宙はウォーターベッドのように柔らかいもの。相対性理論における宇宙は弾力のある舞台である一方、穴が空いたり裂けたりしてしまうことも考えられますが、だからこそワームホールが存在する可能性があるとのこと。


宇宙の遠い場所同士をつなぐワームホールがあれば、普通に宇宙空間を移動して進む光よりも……


ワームホールを通って移動した物体のほうが速く宇宙を旅することが可能かもしれません。


しかし、ワームホールは実際に発見されたわけではなく、あくまでも研究者が記した紙の上にだけ存在しています。理論的にワームホールの存在があり得るとされたところで、ワームホールが実際に存在しているというわけではないのです。


理論的には、複数のワームホールが存在している可能性があるとのこと。


最初に理論化されたワームホールは、「アインシュタイン-ローゼン橋」と呼ばれるもの。


アインシュタイン-ローゼン橋は、全てのブラックホールを平行宇宙の入り口と見なします。


極度に圧縮された天体によって宇宙の時空がゆがみ……


そのゆがみが極端になると、ブラックホールとなります。


ブラックホールは光を含むあらゆるものを飲み込み、何一つとして特異点から出ることはできないとされています。


ところが、特異点は実のところ存在せず、ブラックホールが持つ事象の地平面は別の宇宙につながっているという可能性があります。ブラックホールの反対側の宇宙は、こちら側の宇宙とは時間が逆向きに流れている鏡像の宇宙であり……


こちら側の宇宙で吸い込まれたものが放出されているかもしれないのです。


反対側の宇宙に空いた穴のことをホワイトホールと呼びますが、実際にはアインシュタイン-ローゼン橋を通り抜けることはできないとのこと。


ブラックホールからホワイトホールへ抜けるためには無限の時間がかかってしまうため……


ブラックホールに吸い込まれた宇宙飛行士は、ホワイトホールへ抜けるまでの間に死んでしまいます。


宇宙空間を一瞬でワープするように移動するためには、アインシュタインーローゼン橋とは違うワームホールが必要です。


古典的ひも理論が正しく宇宙を記述しているとすれば……


すでにこの宇宙には、無数のワームホールが張り巡らされているかもしれないとのこと。


ビッグバン直後の微少な空間に存在した量子ゆらぎが、物体の通過が可能なワームホールを作った可能性があります。


もし量子ゆらぎによるワームホールが形成されているならば、宇宙ひもと呼ばれるひもがワームホールを貫いており、急速に数光年もの距離に引き延ばされたワームホールの端と端をつないでいるそうです。


ひょっとすると、人類が想像する以上にワームホールは近くに存在しているかもしれません。


研究者の中には、「銀河系の中心にある超大質量ブラックホールは、ワームホールの可能性がある」と考える人もいますが……


地球から銀河系の中心まで2万6000光年もの距離があるため、実際に見て確認するわけにはいきません。


しかし、ワームホールを人間が間近で観察する方法があります。


それは、「人工のワームホールを作り出す」という方法。


ワームホールはリビングとバスルーム、もしくは地球と木星といった宇宙間の2点をつないでおり……


双方向の移動を妨げる事象の地平面があってはいけません。


加えて、通り抜ける人間が死なないように、ワームホールには十分な大きさが必要です。


ワームホールには重力によって閉じようとする力が働いているため……


放っておくと通路が事象の地平面と化し、ブラックホールになっていまいます。


そうならないために、ワームホールの通路は何かによって支えられていなければなりません。


古典的ひも理論におけるワームホールにおいて、ワームホールを支えるのは宇宙ひもですが……


人工のワームホールで通路の空間を支えるものは、エキゾチック物質と呼ばれる、既知の物質とも反物質とも全く違う性質を持つ物質です。


エキゾチック物質は負の質量を持っており……


重力によって引かれ合う既存の物質と反発するとのこと。


この反発する性質が反重力を生み、ワームホールを閉じようとする重力に対抗するのです。


エキゾチック物質の候補として注目されているのが、真空の宇宙です。真空の量子ゆらぎは絶えず素粒子反粒子のペアを生成しており……


素粒子と反粒子のペアは生成直後に消滅しています。


このような状態の真空の宇宙を操作して、負の質量と同等の効果を生む方法があるとのこと。


ワームホールの安定化に成功した場合……


地球の近くにワームホールの一端を配置し、もう一端を宇宙の好きな場所に配置することができます。


そうすれば、地球が恒星間文明のハブとなることも不可能ではありません。


しかし、ワームホールを人工的に作った結果……


タイムパラドックスのように宇宙の構造を破壊してしまう可能性もゼロではありません。


そういう事情から、ワームホールは存在しないと考える研究者も多いとのこと。


残念ながらこれまでのところ、ワームホールは紙の上と科学者の頭の中にしか存在していないのです。

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in サイエンス,   動画, Posted by log1h_ik

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