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法執行機関がGoogleに対して「ユーザー情報の提供」を要求したら何が起こるのか?


GoogleアカウントはGmailやYouTube、Google フォト、Google Payといったさまざまなサービスと紐付いており、Googleは多くの個人情報を保持しています。そんなGoogleに対してアメリカの法執行機関がユーザー情報の提供を要求した場合、一体何が起きるのかについてロサンゼルス・タイムズが報じています。

What happens when ICE asks Google for your user information - Los Angeles Times
https://www.latimes.com/business/technology/story/2021-03-24/federal-agencies-subpoena-google-personal-information

ロサンゼルス・タイムズに匿名で情報を提供した人物はある日、自身のGmailアカウントに、いくつかの数字に続いて「Notification from Google(Googleからの通知)」と記された不思議な件名のメールが届いているのを見つけました。一見するとスパムメールのようにも見えるこのメールですが、実は移民法及び関税法を執行するアメリカ合衆国移民・関税執行局(ICE)などの法執行機関にユーザー情報が提供されるのを防ぐ唯一のチャンスだとのこと。

Google・Facebook・Twitterなどのハイテク企業は、ビジネスの中で膨大なユーザー情報を入手しています。ICEなどの法執行機関が捜査の中でGoogleなどにユーザー情報の提供を求めた場合、Googleの法務調査サポートチームは対象ユーザーにメールで通知することがあるそうです。

情報提供者が受け取ったメールには、Googleが法執行機関からGoogleアカウントに関連したユーザー情報を引き渡すように要求されたことが記されており、要求を破棄するには「7日以内に裁判所のスタンプが押された申立書のコピーをGoogleに送る必要がある」と説明されていました。移民法事務所・Just Futuresの共同創設者であるParomita Shah氏は、「どれほどの人々が要求を破棄するために弁護士を雇うリソースがあるのでしょう」と述べ、7日以内に申立書のコピーを送付するのは非常に難しいと主張しています。


Googleが法執行機関からユーザー情報の提供を求められるのは珍しいことではなく、Googleがアメリカの法執行機関から受け取った開示要求は、2020年1月~6月の半年間だけで4万件近くに上っています。そのうち1万5000件以上が召喚令状によるものであり、83%のケースで何かしらの情報を提供したとGoogleは説明しています。なお、Facebookは同時期に6万件の要求を受け取って88%で何らかのデータを渡し、Twitterは同時期に3000件を超える要求を受け取って59%で要求に応じたとのこと。

今回のケースにおいてGoogleにユーザー情報の引き渡しを要求したのはICEであり、要求は行政召喚令状という法的手続きを介して行われていました。行政召喚令状は裁判所の許可を必要としない手続きである代わりに、裁判所命令の召喚状よりも執行力が弱いとされています。

裁判所の許可を得た召喚令状では、捜査対象となる人物に対して召喚令状の存在自体が知らされない「かん口令」が伴うことが一般的ですが、行政召喚令状にかん口令を強制することはできません。そのため、Googleはユーザーに対してメールを送り、法執行機関から情報提供を求められたことを通知しているとのこと。Shah氏や移民の擁護者らは、裁判所の許可を得ていない行政召喚令状などの法的要求に対し、Googleなどの企業が情報提供を差し控える余地があると主張しています。

Googleの広報担当者であるAlex Krasov氏はロサンゼルス・タイムズへの声明で、Googleは法執行機関の重要な業務を支援しながら、ユーザーのプライバシーを積極的に保護していると主張。「当社には、ユーザー情報に関する法執行機関からの要求を管理するための確立されたプロセスがあります」と述べました。

by Thomas Hawk

一部の公民権団体や法律事務所は、ICEなどの法執行機関が行政召喚令状などの手続きを通じてユーザー情報にアクセスすることが、アメリカに住む人々に対する監視拡大につながるのではないかと懸念しています。公民権団体や法律事務所の連合はICEの行動について「位置情報や住所、コミュニケーションといった私たちの日常生活における最も親密で個人的な情報を侵害します」と非難し、情報自由法に基づいて、ICEがGoogle・Facebook・Twitterに情報提供を求めた件数を開示するように求めているとのこと。

また、移民の権利保護を訴える団体連合はGoogleの最高法務責任者であるケント・ウォーカー氏に宛てた書簡の中で、裁判所命令が伴わないICEの要求には応じるべきではないと主張。Googleのサービスを利用する人々の意見に耳を貸し、方針を再考するべきだと訴えました。


なお、アメリカの政府機関はGoogleなどのハイテク企業が所有するデータを行政召喚令状を通じて要求する以外にも、さまざまな方法で人々の情報を収集していることが知られています。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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