絵文字の使用パターンを観察すれば「リモートで働く人が辞職するリスク」を予測できるかもしれない
新型コロナウイルスのパンデミックに伴ってリモートワークを導入する企業も増えていますが、リモートで働く従業員の幸福度や仕事に対する満足度、メンタルヘルスを雇用主が知ることが課題の1つとなっています。新たにミシガン大学、メリーランド大学、北京大学の国際的な研究チームが、「絵文字の使用パターンを観察することでリモートの従業員が辞職するリスクを予測できる可能性がある」との研究結果を報告しました。
[2102.05737] Emojis Predict Dropouts of Remote Workers: An Empirical Study of Emoji Usage on GitHub
https://arxiv.org/abs/2102.05737
Patterns in the use of emojis could predict the dropout of remote workers
https://techxplore.com/news/2021-03-patterns-emojis-dropout-remote-workers.html
論文の筆頭著者であるミシガン大学のXuan Lu氏は、「リモートで働くと、同僚の感情やメンタルヘルスの状態を追跡するのが難しくなります。これはパンデミック時や将来の仕事における大きな課題です」と、テクノロジー系メディアのTechXploreに語っています。
リモートワークの際に主なコミュニケーション手段として使われるのはテキストメッセージであり、Slackなどのチャットツールを導入する企業も増えています。「対面での会話が減ったにもかかわらず、リモートワーカーは仕事に関連するオンラインのコミュニケーションで絵文字を頻繁に使用し、仕事における感情を示す効果的なセンサーとして利用できることに気がつきました」とLu氏はコメント。
そこでLu氏らの研究チームは、ソフトウェア管理プラットフォームのGitHubを利用するソフトウェア開発者約1000万人のテキストを分析。2018年に投稿された6300万件のテキストを対象に、絵文字が使用される頻度と投稿者の作業ステータスとの関係を調査しました。
分析の結果、投稿のうち5.53%に何らかの絵文字が含まれていたことや、プログラミング言語や投稿の種類ごとに絵文字が使われる頻度に差があったことがわかりました。絵文字を使用した開発者は26万4808人で、これらのユーザーが2018年のGitHubにおける全投稿のうち52.78%を投稿していることも判明。これは、絵文字を使うことがプラットフォームにおけるコミュニケーションの活発さに関連している可能性を示しています。
また、研究チームが「2018年の投稿における絵文字の使用頻度と、2019年にGitHubの使用をやめて離脱する割合」についての相関関係を調査したところ、絵文字の使用が少ないユーザーはGitHubをやめる割合が高く、絵文字の使用が増えるとGitHubをやめる割合が低い傾向が明らかとなりました。
Lu氏は「私たちの調査結果は、絵文字の使用頻度がオンライン作業プラットフォームから脱落するリスクと関連していることを示唆しています」「投稿に絵文字を使用する開発者は、GitHubから脱落する可能性が大幅に低いことがわかりました」とコメント。機械学習モデルで開発者の投稿における絵文字の使用頻度を分析することで、将来的なプラットフォームからの脱落を十分な精度で予測可能だとしています。
今回の発見はGitHub上の投稿とプラットフォームからの脱落に関するものですが、将来的には絵文字の使用に基づいてリモートワーカーの仕事の満足度を測定したり、メンタルヘルスの悪化やうつ病の兆候を検出したりして、従業員をサポートするシステムの開発につながる可能性があるとのことです。
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