中国のサブカルチャーをけん引する動画サイト「Bilibili」はどうやって成功をおさめたのか?
by Yxh1433
日本のニコニコ動画と同じようにコメントを画面上に表示する機能が特徴の、中国の動画共有サービスが「Bilibili(ビリビリ)」です。ユーザーが編集・制作した動画や生放送だけでなく、日本の企業と提携して正式に日本のアニメを配信し、大規模なイベントも定期的に開催するBilibiliは、中国のZ世代を中心に強く支持されており、中国のサブカルチャーシーンをけん引する存在といえます。そんなBilibiliの歩みについて、中国のニュースサイト・South China Morning Postが報じています
Bilibili: How a Chinese site dedicated to anime subculture grew up with its Gen Z users to become a mainstream success | South China Morning Post
https://www.scmp.com/tech/big-tech/article/3125129/Bilibili-how-chinese-site-dedicated-anime-subculture-grew-its-gen-z
2009年にサービスを開始して以来、Bilibiliは中国で最も有名な動画ストリーミングサイトの1つに成長しました。記事作成時点で約5400万人のデイリーアクティブユーザーが、1日平均約75分をBilibiliで過ごしています。ユーザーの多くは、Bilibiliが「Z+世代」と呼ぶ1985年から2009年までに生まれた人々だとのこと。
Bilibiliではアニメだけではなく、漫画やゲーム、ネットミームに至るまで、サブカルチャーに関連するさまざまなムービーがアップロードされています。また、自作のムービーを公開するユーザーは「Upzhu(Up主)」と呼ばれ、Bilibili独自のコミュニティと文化を築いています。
by 李 言滄
中国には他にもTencent VideoやiQiyiといった動画配信サービスが多数存在しています。しかし、その中でも特に異質な存在であるBilibiliは、サブカルチャーを好む若者層に人気のある独自のコンテンツクリエイターが最も集まるサイトとなっています。Bilibiliによれば、2020年第4四半期(10月~12月)には190万人のUpzhuによって月平均590万本以上のムービーがアップロードされたとのこと。
Bilibiliを7年以上利用している25歳のグラフィックデザイナーは「Upzhuは視聴者を魅了し続けるために、常に新しい動画を作り出しています。例えばゲームのプレイ動画の場合、かつてはゲームをプレイし始めてから終わるまでを単に録画してアップロードしていました。しかし、今やゲームのプレイ動画は自分たちのアイデアを表現するための媒体となっています」と語りました。
人気のあるUpzhuは、ソーシャルメディアにおけるインフルエンサーのような影響力も持ちます。そのため、Bilibiliは積極的にUpzhuをサポートしており、「プロの動画アップローダー」の育成を支援しています。
経済アナリストのFu Tianzi氏は「BilibiliはトップクリエイターであるUpzhuたちを抱え込み、『緊密で感情的な絆』を築き、『ユニークなコミュニティの雰囲気を構築する』ことで、Bilibiliに忠実なユーザーを維持しようとしています」と指摘しています。
by Wise Hou
Bilibiliの陳睿CEOは2019年に行われたインタビューで「インターネット上には優れた製品と死んだ製品の2種類しかありません。Bilibiliを囲む業界はあまりにも残酷です。長期的には、中国での市場規模が100億ドル(約1兆円)を下回るコンテンツプラットフォームは排除されてしまうでしょう。私は目標について話しているのではありません。100億ドルという基準に到達できなければ死ぬだけだと言っているのです」と語っています。
Bilibiliの株価は、アメリカ市場で上場してからおよそ10倍に上昇し、市場価値は記事作成時点で既に360億ドル(約3兆7000億円)以上となり、陳CEOの定めた基準は超えました。しかし、Bilibiliは13四半期連続で赤字決算で、2020年の純損失として31億元(約520億円)を計上しています。
そこで、Bilibiliは動画配信サービスだけではなく、モバイルゲーム事業も立ち上げ、2020年の収益の40%をスマートフォン向けゲームから得ています。また、月額有料のプレミアム会員プランも次第に登録者数が増え、2020年第4四半期にはBilibiliの事業の中でも最大の収益を上げたとのこと。
しかし、Bilibiliの古参ユーザーの一部は、プレミアム会員プランの導入に対して反発しました。陳CEOは、「プレミアム会員の導入時にはユーザーコミュニティが激しく混乱しました」「プレミアム会員以外のユーザーエクスペリエンスを低下させることはしなかったので、最初は特に問題がないと思っていました。しかし、プレミアム会員以外のユーザーは、Bilibiliが自分たちをもう愛していないのではないかと懸念していました」と答えています。
2012年からBilibiliを利用しているというYoyo Guanさんは、主にアニメのミュージックビデオやアニメ本編、ゲームのコンテンツをよく試聴していたとのこと。しかし、Bilibiliというプラットフォームが大きくなって、それまで放置されていたアニメの違法コピーや不適切なコンテンツが削除されるようになってから、Bilibiliを見なくなったと語ります。
Yoyoさんは「以前のBilibiliは、タブー視されているものや暴力など、ありとあらゆる種類のサブカルチャーコンテンツを含んでおり、率直で多様的でした。それは治安が悪いというよりも、異質な趣味の存在を認め、容認するだけの心の広さがあったのです」「Bilibiliは、私のようなユーザーが世界をのぞくための望遠鏡みたいなものでしたが、今はただの鏡になってしまったのかもしれません。今のBilibiliはポジティブなエネルギーに満ちあふれています」と語ります。
by Leiem
あるBilibiliユーザーは「Bilibiliはハードコアなアニメ・漫画・ゲーム(ACG)コミュニティとしてスタートしましたが、その後ますます大きくなりました。今のBilibiliでもACGコンテンツを視聴できますが、本当の魅力はたくさんある小さなコミュニティであり、Bilibiliではさまざまな人々に会うことができます」と語りました。
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