アメリカで行われたベーシックインカムの実験はどのような結果をもたらしたのか
2019年2月からカリフォルニア州ストックトンで開始されていた「使用用途を制限せずに毎月500ドル(約5万4000円)を生活に困窮する人々に与えたら何が起こるのか?」という実験が、2021年1月に終了しました。この実験がもたらした成果について海外メディアのThe Atlanticが解説しています。
Stockton’s Basic-Income Experiment Pays Off - The Atlantic
https://www.theatlantic.com/ideas/archive/2021/03/stocktons-basic-income-experiment-pays-off/618174/
この実験は、ストックトン在住かつ平均年収の中央値である4万6000ドル(訳494万円)を下回る住民から、ランダムに選ばれた125人を対象として行われました。選ばれた住民には毎月500ドルが支払われ、住民はそのお金の使い道などの報告義務はなく、自由に使うことが許されました。
実験中に記録された住民の声などの一部始終は以下の記事に詳しく記述されています。
毎月5万4000円を市民に配り続けた結果何が起こったのか?という記録 - GIGAZINE
テネシー大学のステイシア・マーティン・ウェスト助教授とペンシルバニア大学のエイミー・カストロ・ベイカー助教授は何人かの住人をこの実験の対象となった住人と対象になっていない住人のグループに分け、データを収集し分析を行いました。その結果、いくつかの事実が明らかになっています。
1つ目は、お金を受け取ったグループの収入の変動性が減少したということです。お金を受け取っていないグループの世帯月収が68%変動したのに対し、お金を受け取ったグループの世帯月収は48%に抑えられていました。受け取ったお金の大半は食料品や公共料金などの生活に必要な費用の支払いに充てられ、1%未満がタバコやアルコールなどの嗜好(しこう)品に充てられたとのこと。
被験者の1人であるローラ・プランマー氏は「月に3回フードバンクに出向かなくてもよくなり、滞納していたクレジットカードの支払いも無事返済できた」と語ります。
2つ目は、「人々はお金を受けとることで働かなくなる」という考えが誤りだったということ。お金を受け取ったグループの就業率は、お金を受け取っていないグループに対して7%高かったことが分かっています。ウェスト助教授らはインタビューで「お金を受け取ったことが個人の目標設定やリスクテイクに影響を与えた可能性が高い」と述べました。
別の被験者、トーマス・バーガス氏は「以前は物流業界で働いていたが、自身が考案したビジネスのアイデアで起業したいとも思っていた」と語り、実際にお金を受け取った後はケースマネージャーとして働いているとのこと。
最後は、お金を受け取ったグループの幸福度が高く、健康で、不安が減少したということです。この実験を主導したストックトンの元市長であるマイケル・タブス氏は「お金は向精神薬よりも、うつ病を治すずっといい手段です」と語ります。
ストックトンの実験は終了しましたが、タブス氏が設立したグループ「Mayors for a Guaranteed Income」の活動により、さまざまな都市で低所得者への現金給付制度が計画されているとのことです。
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in Posted by log1p_kr
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