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なぜイギリス近衛兵は「帽子がデカすぎる」のか?

by Can Pac Swire

イギリスのバッキンガム宮殿は、荘厳な外観だけでなく夏季限定の館内ツアーで見ることのできる豪奢なインテリアと調度品も一見の価値アリとして知られていますが、外周護衛を担当するイギリス近衛兵の歩兵部隊がマーチングバンドとともに行進する「衛兵交代式」はロンドン観光の目玉として特に名高いものです。そんなイギリス近衛兵を語る際に欠かすことのできない「大きすぎる帽子」の謎について、サイエンス系ニュースメディアのLive Scienceが解説しています。

Why do the queen's guards wear such tall hats? | Live Science
https://www.livescience.com/why-queens-guard-bearskin-hats.html

イギリス陸軍近衛師団に属する近衛兵は主に君主の警護や衛兵任務を務める特殊部隊。エリザベス2世が普段生活しているバッキンガム宮殿や週末を過ごすウィンザー城では、直立不動の姿勢で観光客を見守る近衛兵の姿を見ることができます。

そんな近衛兵を見るとどうしても気になってしまうポイントが、頭部の倍はあろうかという「大きすぎる帽子」。この帽子は熊の毛皮を使っていることから、名前も「Bearskin(ベアスキン:熊の毛皮)」というものですが、その不釣り合いなまでのサイズが特に目を引きます。

by SouthEastern Star ★

イギリス王室に関する専門家として名高いリチャード・フィッツウィリアムズ氏によると、この帽子は「敵軍を威嚇する」ことを目的としてあえて大きく作られているそうです。起源を遡るとフランス第一帝政の皇帝となったナポレオン・ボナパルト率いるフランスとイギリスを中心とする対仏大同盟諸国の間で繰り広げられたナポレオン戦争において兵士の背を高く見せるために用いられたそうで、イギリス軍だけでなくナポレオン旗下の帝国軍まで似たような帽子を装備していたとのこと。

イギリス近衛兵の帽子に使われている熊の毛皮について、フィッツウィリアムズ氏はカナダ産のアメリカグマの毛皮を使っていると解説。帽子に用いられる毛皮は頭数管理によって処分されたアメリカグマのものを使っているため、毛皮を目的としてわざわざアメリカグマを殺しているわけではありませんが、動物愛護の観点からたびたび非難を招くことがあったとのこと。イギリスの高級紙であるTatlerによると、毎年イギリス陸軍は50~100個ほどのベアスキン帽子を購入しており、価格は1個あたり900ドル(約9万5000円)だそうです。

by Ronnie Macdonald

また、近衛兵の正装について、大きすぎる帽子の次に目を引くのが赤い上着。この赤い上着には「血痕をごまかすため赤色が採用されている」という伝説がありますが、フィッツウィリアムズ氏によると伝説は全くのナンセンスで、実際には単に値段の問題から赤色が採用されているとのこと。「赤色は目立つので戦場での被弾率が上がるのでは」という意見については、フィッツウィリアムズ氏は「ヨーロッパにおける戦争は布陣した陸軍同士が正面衝突するというものがほとんどで、赤色の制服は煙による視界低下と戦闘による混乱の中での友軍と敵軍の区別に役立ち、同士打ちを防いでいたと考えられます」とコメントしています。

by Defence Images

フィッツウィリアムズ氏は近衛兵の装いについて、「我が国は世界で最も知名度の高い君主制国家であり、近衛兵は重要な役割を果たしています。時代錯誤かもしれませんが、このような伝統を保ち続けているからこそ、イギリス王室は世界的に有名なんです」「イギリス近衛兵はロンドンの偉大な観光名物の1つです」とコメントしています。

なお、イギリス近衛兵は一般部隊と同様に実戦部隊としての任務もこなすため、「儀式的な任務しかないと思っているなら大間違いです」とフィッツウィリアムズ氏は解説しています。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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