メモ

若い頃に職業教育を受けると長期的に収益がブーストされるという調査結果


2021年1月30日、ハーバード大学博士課程のミッコ・シリマン氏とフィンランドの経済研究機関ETLAのハンナ・ヴィルタネン氏は、「フィンランドにおいて、義務教育を終え進学先として職業学校を選択した学生は30代半ばで平均6%収入が増加し、職業学校を希望するも入学できずそのまま就職した学生は30代半ばでの就業率が20%減少する」との研究結果を発表しました。

Access to vocational education can boost income over the long term | VOX, CEPR Policy Portal
https://voxeu.org/article/access-vocational-education-can-boost-income-over-long-term

フィンランドを含む北欧などの一部の国では、義務教育を終えた子どもは日本の高等学校にあたる普通後期中等学校もしくは後期中等の職業学校への入学を選択します。多くの人々にとって、この選択で労働市場に参入する前の最高教育機関が決まることを考えると、進学先のカリキュラムがもたらす潜在的な結果を理解することは特に重要であるとのこと。しかし普通高校にしろ職業学校にしろ、それぞれの特徴は一長一短であるといいます。

職業学校は学校卒業から就職までの移行を容易にし、普通高校を中退した若者の代替手段ともなります。また、普通高校は高等教育学校以降も継続して教育を求める学生に対し、キャリアの後半で労働市場への見通しを明るくするだろうと考えられてきました。一方で、技術の変化と仕事の変化に伴い、職業学校で身につく技能は時代遅れになるのではないかとの懸念もあります。

このような考え方は実際のデータとも一致します。1996年から2000年の間にフィンランドで義務教育を終えた学生の「進路別の就業率」と「収入のデータ」をグラフにすると以下のような感じ。縦軸が年間雇用月数、横軸が後期中等教育期間入学後の経過年数であり、破線で表された職業学校は最初は労働市場で優位に立っているものの、年数が経過すると実線で表された普通高校に追い抜かれます。


また以下の収入のグラフは、縦軸が年収、横軸が入学後の経過年数を表しており、後期中等教育期間の入学から17年が経過した33歳の時点では、職業学校に入学した人の収入は普通高校に入学した人よりも年間4000ユーロ(約50万円)少なくなっています。


しかし、これまでの研究は調査対象となったコホートの規模や政策の影響を受けやすかったとして、新たにシリマン氏らが回帰不連続デザインを使って検討した結果、職業学校へ入学した人は義務教育の終了後そのまま就職した人よりも初期年収は増加し、33歳の時点で6%の増加が見込まれると示されたのこと。また職業学校への入学者が普通高校の入学者と比べて後に高等教育機関に入学した際の卒業率が低くなることはなく、卒業後も仕事が自動化に取って代わられたりオフショアリングの影響を受ける可能性は低いとのことです。さらに職業学校への入学を希望するも叶わなかった人は17年後に就業率が20%近く減少するとのこと。

これらの研究結果は普通高校を卒業する可能性が低い人々にとって、職業学校が貴重なスキルをもたらす可能性が高いことを示唆しており、学生のほぼ半数が職業学校に出願しているフィンランドの事例を挙げ、他の先進国でも職業学校の選択肢を拡大する余地があるのではないかと締めくくっています。

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in Posted by log1p_kr

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