インタビュー

ロボットアニメ魂を宿したスタッフが生み出す美少女×メカアニメ「装甲娘戦機」についてインタビュー


2021年1月6日(水)からアニメ『装甲娘戦機』の放送・配信がスタートします。本作は「レベルファイブの人気タイトル『ダンボール戦機』をもとにしたプロジェクト」で、すでにゲーム版『装甲娘 ミゼレムクライシス』が発表・展開されていますが、キャラクターも世界観も異なっています。

一体、ゲーム版とはどういう関係でどういった立ち位置の作品なのか、第1話から見る作品のリストに入れるべき作品なのかを判断してもらえるように、監督の元永慶太郎さん、シリーズ構成のむとうやすゆきさん、DMM.comの高篠秀一プロデューサーにいろいろな話を聞いてきました。

装甲娘戦機【アニメ】 | 装甲娘PROJECT
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・目次
◆アニメ『装甲娘戦機』の位置づけ
◆メインキャラについて
◆『銀河機攻隊 マジェスティックプリンス』とほぼ同一のチームでの作品作り
◆「コロナ禍」の影響はどうだったのか
◆メインスタッフの「推し」ポイント

◆アニメ『装甲娘戦機』の位置づけ
GIGAZINE(以下、G):
この『装甲娘戦機』という作品を知ったのは、AnimeJapan 2019のDMM picturesブースの展示でした。『ダンボール戦機』をもとにしつつも、ゲームとはまたパラレル展開ということでしたが、そもそも「装甲娘PROJECT」はどのように生まれたのですか?

装甲を身にまとった少女たちの物語「装甲娘戦機」TVアニメ化始動、「ダンボール戦機」からパラレル展開 - GIGAZINE


プロデューサー・高篠秀一さん(以下、高篠):
ゲーム『装甲娘』(旧装甲娘)が立ち上がる前後に、メディアミックス企画として展開しようという話が弊社内で持ち上がったのがプロジェクトのきっかけです。本家『ダンボール戦機』がそうであったように、ゲームを中心として横への展開が広がるように、という考えだったと記憶しています。企画当初のメモを読み返してみると、最初は旧装甲娘から派生した、オリジナル要素が強い外伝だったんです。本家の別働隊……いわば、『機動戦士ガンダム』に対しての『第08MS小隊』みたいな感じですね。アニメ版の敵が「ミメシス」、というのは旧装甲娘の敵の名前で、当初の企画の名残です。

G:
なるほど、それはたとえがわかりやすい(笑)

高篠:
「同じ世界観だけれども、別の部隊のお話」ということで企画がスタートしたと思います。むとうさん、覚えてます?

シリーズ構成・むとうやすゆきさん(以下、むとう):
企画書にそう書いてあったのを覚えています。

高篠:
そうやって企画を練っていたんですが、ゲームがいったんサービス休止して、『装甲娘 ミゼレムクライシス』へとリニューアルすることになりました。アニメの企画は結構進んでいたため、そのタイミングでアニメも一大転換するには難しく、「なにか、ゲームもアニメも、全部を内包できるやり方はないか」と考えたときに、パラレルワールドとしてやろうと。ちょっと力技ですが、「旧装甲娘も新装甲娘もダンボール戦機も、色んなパラレルワールドが存在している世界」を設定しました。先ほどのガンダムの話で言うと、「08小隊」ではなくて、「W」とか「00」っていう方向に舵を切った感じです。これなら別の世界観だけれど「装甲娘」の話ができるのではないか、ということですね。

企画書より一部抜粋したものが以下。当初、アニメとゲームは地続きの異世界として設定されていました。


しかし大きく方向転換し、それぞれ並行世界の1つということになりました。


監督・元永慶太郎さん(以下、元永):
僕は、studio A-CATという3Dメインの会社がオリジナル案件をやるというので「来ませんか?」と声をかけられて、「いいよ」と応じたのが参加のきっかけです。その作品が『装甲娘戦機』だということはその後で知りました。顔合わせの前に、いったん挨拶する機会があったことを覚えています。

高篠:
結果、いろいろな事情も相まって、独自路線を歩む企画へと変容しました。アニメはこういうオリジナル路線にしようと決めた初代プロデューサーも途中でいなくなったりしましたが(笑)。ただ、当初からぶれていないのは、「ゲームファンだけに向けたもの」ではなく、「アニメが好きな人」に向けた作品にしようということです。一概には言えませんが、ソーシャルゲームのアニメ化作品というと、「ゲームファンは喜ぶけれど……」になるケースもあって、新規のファンが入りづらい印象がありました。要は、原作ゲームのファンだけではなく、新規のアニメファンにもしっかり入ってきてもらいたい、「IPを広げる」という役割を担っているということですね。

G:
公式サイトの「STORY」ページに「命がけの修学旅行」とあるように、本作はロードムービー的な内容となっていると聞いています。この展開はどのように決まっていったのですか?

元永:
「1カ所でやっていると退屈だから、旅しようか」と出てきたように思います。

高篠:
「いろんなロケーションがあった方がいいな」という話でしたね。企画の話ともつながるんですが、旧装甲娘の舞台が東京中心だったこともあり、東京以外の所を舞台にしようという話だった気がします。それから「あそこをやりたい」「ここもやりたい」と言っているうちに、旅に広がっていったような……。

元永:
「ロケハンにみんなで行こう」と言っていたのに行けなかったことを思い出しました。

高篠:
そうでしたね……。『ガンダム』で、たとえばグフと戦うのが砂漠だったように、いろんなシチュエーションで戦うロボットアニメみたいなことをやろうとしたんですね。実は企画書にも「美少女アニメの皮を被ったロボットアニメ」と書いていたりして(笑)


G:
(笑)

高篠:
『ダンボール戦機』の起源をたどっていけばやっぱり『ガンダム』であり、『ガンダム』ではホワイトベースがいろいろな舞台で戦っていたな、という話になった気がします。ステージが移っていくと考えると、ゲームっぽくもありますしね。

G:
このロードムービー、西へ向かう旅だということなのですが、現代とは大きく異なる設定なので、どこへ向かう旅であっても問題なかったであろう中で、西にしたのは、何か理由はあったのでしょうか。

元永:
まず、京都に行きたかったんです。「京都、壊してぇな」と(笑)

(一同笑)

元永:
1つはマジでこれです(笑)。もう1つは「レベルファイブ(本社が福岡)まで行ってみよう」ですね。

高篠:
確かに、レベルファイブさんが原作なので、九州がいいのではというのがありましたね。

G:
監督は京都で「これを壊したい」というものがあったんですか?

元永:
言うと怒られますけれど、重要文化財とか壊してみたかったんです。「有名なアレとかソレとか、壊してみたいね」って軽いノリで言って、あとで後悔するパターンのやつです(笑)

◆メインキャラについて
G:
今回、メインキャラクターとなる5人の女の子たちはどのように生まれたのでしょうか。

元永:
女の子たちについては……むとうさんにお任せ(笑)。「こんな感じかな」と打ち合わせていたら「こんなのどうでしょう」と案を出してくれて「それ、採用です」と。かなりいいバランスでむとうさんが考えてくれたので、こちらはそれに乗っかった感じです。


むとう:
人数を絞ってのメインパーティ編成だったので、確か、ミハルというキャラのパーソナリティを決めるのに紆余曲折あったことを覚えています。また、メインヒロインのリコがスナイパーポジションというのが、あまりないケースだなと思いました。

元永:
いつも主役は前に立つから、たまにはスナイパーでもいいよね、という話でしたね。


むとう:
この編成に決まったとき、内容的にどう配置・機能させていくか困りそうだなとは思いつつ(笑)、でも、面白そうだなと。

高篠:
アタッカーがいて、ガンナーがいて、司令塔もいて、と役割から決めていった気がします。旅をしていくけれど、同時にバトルものでもあるので。

むとう:
キャラの名前も決まっていない頃、カラーリングを割り振って話していましたね。レッドとブルーがいて、みたいに。

元永:
そうそう。

高篠:
そこから逆算して装着するLBXが決まりました。「ガンナーならどのLBXがハマるだろう?」と、みんなで会議をして決めた覚えがあります。LBXからの逆算ではなく、この役割に当てはまるLBXはどれだろう、という順ですね。ただ、アキレスとかオーディーンとか、そういった主役級のLBXはいないとダメだということは考慮した上で、「普通にやったらこうなるよね」というところからズラしたところには狙いもあります。決めるときに「主役機が主役なのは普通だから、そうじゃないほうがいいんじゃない?」と監督がおっしゃっていたのを覚えています。また、現在のゲーム『装甲娘 ミゼレムクライシス』には結構メカっぽいデザインのキャラクターも増えてきていますが、初期の旧装甲娘はどちらかというと「鎧」っぽいデザインが多かったので、ロボットアニメ感のある絵作りを目指すためにアニメ版のデザインを安藤賢司さんにお願いしました。同じLBXがモチーフでもアニメとゲームで違っているのはそのためです。


◆『銀河機攻隊 マジェスティックプリンス』とほぼ同一のチームでの作品作り
G:
今回、『ダンボール戦機』をベースにした作品だということで、それゆえの「縛り」というか「制約」みたいなものはありませんでしたか?

元永:
かなり自由にやらせてもらいましたが、あえて「制約があった」という点を挙げるなら「必殺(アタック)ファンクション」でしょうか。技について整合性を考えていくと、映像が同じになってしまうところが出てくるので、そこにいかにクセを出すかは考えたポイントです。あとは、それぞれのLBXの特性をどう女の子たちに持たせるかということでしょうか。絵作りでは、意識しないとダメなところがあったので、いろいろと計算して出しています。これは「あえて縛りを作った」という感じだったかもしれません。

G:
「あえて縛って作った」というのはカッコいいですね。

元永:
いえいえ、好きにやり過ぎないようにという感じですね(笑)。正直に言って、現場のほうでいい感じに暴走してくれて、3Dのクオリティはかなり高いものになっています。

G:
絵作りの方では縛りがいい感じに作用していそうですが、むとうさんの脚本作りにおいては、なにか課された制約みたいなものは……

むとう:
なかったですね。今回は本当に好きに書かせていただきました。

G:
即答で(笑)

むとう:
普通は最初に立てた「シリーズ構成案」をまず監督やプロデューサーの皆さんと揉んでいくものなんですが、今回はざっくりとしたものを1回作ったら、あとはもうお任せといいますか、一気に具体的な内容へ入らせてもらうことになって。「この話はだいたいこんな感じです」というペラ1くらいのプロットもなく、「これを縦書きに変換したらもうシナリオなのでは?」という分量と密度のものを毎回初っ端から提出していました。

G:
すごい(笑)

むとう:
オリジナル作品ということで、キャラクターについてはセリフを通してわかってもらう必要があったというのもあるのですが。にしてもさすがに書き込み過ぎたかな、と思っていたら、元永監督が面白がってくださって「最終的には責任を持つから、好きにやっていいよ」と。それで自由度高く、悪く言うと行き当たりばったりに(笑)書かせてもらいました。この仕事をやってきて、ここまで好きにやらせていただいたのは初めてです。

G:
監督の懐の広さもまたすごかった!(笑)

むとう:
はい。シナリオって、どんどん直しを重ねていって、整合性をとったり辻褄を合わせていったりしますが、その一方で、直しを入れていくとどうしてもカドがとれてつまらなくなる部分が出てくるんです。今回は監督から「本来、ライターが最初に上げてきたものが一番面白いんだよ」と言っていただけて、直しがほとんどありませんでした。ただ、とても嬉しい反面、こわいというか、どんどんハードルが上がっていってしまって(笑)

(一同笑)

むとう:
しんどくはなっていきましたが、経験したことのない、楽しいしんどさでした。念頭に置いたのは、「修学旅行」というキーワードです。新しいクラスで、最初はあまりお互いのことを知らない状態から始まって、いろいろなイベントで仲良くなり絆を深めていく。見てくれている人に、その修学旅行に同行している気分で楽しんでもらえて、旅の終わりが近づいてきたら一緒にちょっと寂しい気持ちになってもらえたらいいなと。意識したのは「5人と友達になってもらいたい」ということでした。

高篠:
序盤は、ちょっとギスギスしたところもあるんです。進学した学校で最初にクラスで一緒になった時、みたいな感じで、関係が硬くて、そこからイベントをこなして打ち解け、仲良くなっていくという。そもそも、最初は作品としてもうちょっとシリアスめな方向を考えていたんですけれど、思っていたよりゆるくなりましたよね。


むとう:
最初はチーム内にも、シリアステイスト強めな気分があったように思います。謎の金属生命体・ミメシスを倒すための機能集団・戦闘集団で、生き延びるために共闘しているという子たちだから、仲良しグループではないという前提があって。そこに、ふわ~っとしたヒロインのリコが入って、皆が少しずつ修学旅行気分になっていくという。高篠さんも当時「まさかリコがこんなにバカだとは思わなかった」とおっしゃっていましたが(笑)、それで全体が予想以上にゆるさを帯びた面はあると思います。

高篠:
いやぁ、主人公が思ったよりアホの子になっちゃいましたね。とにかく明るい子なので、ゆるく見ていけると思います。そのゆるい日常パートと、A-CATさんが頑張って作ってくれた3Dパートのギャップみたいなものも見どころだと思います。

G:
相当な落差がありそうな。

高篠:
みんな、リコにメロメロにされていっちゃうんです。もう「キャラ変」といっていいレベルです。

G:
ミメシスや軍事関連のことについてガッチリ設定されているのも、大きなギャップを生む要因かもしれません。

高篠:
監督、これは設定や軍事考証を担当された鈴木貴昭さんの仕業ですよね(笑)


元永:
いやもう、鈴木さんですね。どうせやるならしっかりやろうということで「機械生命体」的なものを作りたいと。敵は敵であればどうでもいいじゃんという考え方もありますが、かっこよさと気持ち悪さを両立させたデザインを森木靖泰さんにお願いしました。今回、ほとんど知り合いのスタッフが集まっていて、長い間一緒にやってきたチームになったおかげで、こちらの意図をつかんでくれてやりやすかったです。ほとんど、『銀河機攻隊 マジェスティックプリンス』とキャラクターデザインが違うぐらいかな。ノリもかなり近いです。

高篠:
私も『マジェプリ』でプロデューサーの一人をしていましたが、『マジェプリ』が好きな人は好きになってくれる作品だと思います。ロボットアニメらしさに、キャラクターのゆるさとザンネンさが加わっていて、まるで「『マジェプリ』の2期か!?」みたいな(笑)。女の子版の『マジェプリ』といえるかもしれません。


元永:
シリアスをずーっとやっていると、見ている側も疲れちゃいますから。いろいろ、軍事的な部分について勉強させてもらったとき、「みんな緊張していると倒れてしまうので、バカなことも入れておくといい」と学んだので、本作もそうやっちゃおうと。街にいる普通の女子高生が戦場に連れていかれて大変なことになる、というのをまず画作りとして意識していて、3Dの方からハードなものを上げてくれています。それこそ、コンテ以上のものをかましてくるので(笑)、嬉しい悲鳴です。「ここまでやるんだ」ということをやっています。

高篠:
世界設定や軍事考証、作戦などに関しては、もうアニメ業界では『ストライクウィッチーズ』『ガールズ&パンツァー』『戦翼のシグルドリーヴァ』などでおなじみの鈴木貴昭さんによる濃いめの作りになっています。そこをちゃんと作った上で、元永さん、むとうさんにドラマにしていただき、ロボットアニメのリアリティを頑張ろうとした雰囲気はしっかり出ているかなと。ミリタリーっぽさを感じられる、見応えがあるものになっていると思います。なんといってもむとうさんは、ガンダムの脚本を書かれている方ですし。ちょっと最近、ロボットアニメが少ないところですが、その中で、昔ながらの「美少女×メカ」というアニメになっていますね。

G:
確かに、こうしたオリジナルのロボットアニメは減っていますね。

高篠:
メンツ的に「ロボットアニメ魂」が宿っていますから、その魂を持っている美少女アニメだと言えます。本作でいえばゲーム『装甲娘』や、ベースになった『ダンボール戦機』を知っている人に向けているのではと思われてしまうかもしれませんが、実際には、まったく知らなくても問題ないです。むしろ、本作を通じて『装甲娘』のゲームや『ダンボール戦機』を知っていただく形でいいと思います。世代的には『ダンボール戦機』を知らないという上の世代の方や、若い人たちもいらっしゃると思うので。

G:
『ダンボール戦機』は、ゲームもアニメもだいたい2011年から2013年の展開ということなので、『装甲娘』を抜くとおよそ7年のブランクですか。確かにそうなのかもしれませんね。

高篠:
ものすごく『ダンボール戦機』が好きな人、濃いファンの方からすれば、「そのままのLBXが出てくる作品が見たかった」という思いがあるかもしれませんが、本作が原典に触れていくきっかけになれば、というものだと思っていただければと思います。

◆「コロナ禍」の影響はどうだったのか
G:
本作は3年ほど前から企画が進められていたとのことで、ちょうど実制作がコロナ禍の影響を受ける形になったのではないかと思いますが、現場はどうでしたか?

元永:
3Dのところは問題なかったのですが、作画には影響が出た部分がありました。ここはキャラクターデザインの堀井久美さんが特に頑張って、絵を徹底的に直してくれました。途中からは平山円さんも参加してくれたので、2人で徹底的にやってくれました。3Dが多い話数だとキャラ崩れがないのでなんとかなるんですが、作画の多い話数はちょっと大変でした。

G:
なるほど。

元永:
あとは、すべてのスケジュールが狂ってしまって、音響と編集に集中してしまったので、間を縫ってすべてをやるという過密なスケジュールになってしまいました。最後は踏ん張って踏ん張って終わるしかないので、そこはもうA-CATさんに頑張っていただいたという感じです。

G:
アニメの制作現場ではいろいろな段階で打ち合わせが入ると聞きますが、こうした打ち合わせはリモートでの実施が増えましたか?

元永:
そうですね、打ち合わせする人によって、ですね。今回は作画よりもCGとの打ち合わせの方が多かったと思います。事前に流れとかは決めた上で「この中で考えてください」と伝えたら「わかりました、では好きにやってみます」みたいな感じで、上がってきたものを見せてもらって「ここまでやれるのであれば、これもいける?」と聞いてみたら希望よりも上のものができあがってきて、自分で自分の首を絞めていくような感じもあり(笑)

G:
(笑)

元永:
『マジェプリ』のときのオレンジさんもすごくて「ここまでやるの!?」というものを上げてきてくれましたが、今回、「あれに負けないものを」と、A-CATのけっこう若い人たちがいろいろと勉強してくれて。爆発1つ取っても、どういうところが爆発するだとか、装甲をつけた後の動きはどうなるかとか、それこそ、空を飛んでいるときに体重移動するとどうなるかを計算してくれたりだとか。「このデザインだとこういう動きはできませんが、デザインをこう変えるとできるのでこうしますか」とかの相談もあって、時間を使いました。


G:
おおー、なるほど。むとうさんはコロナの影響はありませんでしたか?

むとう:
脚本会議の頃にはまだコロナの影響がなかったので、顔を合わせてやっていました。僕の立場で影響があったものだと、アフレコの立ち会いとかですね。

高篠:
結果として、「2021年1月アニメ」として放送されますけれど、もしコロナがなかったらもうちょっと前に放送されている作品だったんです。本来は、ゲームのサービスインと合わせようか、とか相談していたスケジュールだったので。

G:
あっ、そうだったんですか。コロナの影響で多数の作品が3カ月、6カ月と延期されていましたが、本作も相当な影響を受けていたんですね。

高篠:
やはり、メディアミックスとしてはゲームのサービスに合わせて始めたいという思いはありましたが、コロナの影響ですから、やむを得ず、というところです。

G:
影響という点では、広報活動も大変だったのではないかと思うのですが、どうでしょうか。

宣伝・石原良一さん(以下、石原):
この作品に限らず、声優さんとお客さんを呼んだイベントは見通しが立たないなと。先行上映会とか、人を集めてワイワイというのが難しいですから。

高篠:
もう試行錯誤ですよね。本当にそこは困ったなと……。

石原:
その分の予算は浮いたので、別のところで頑張っていこうというのもありますけれど。

G:
「すでにコロナ禍で1つ作品の制作を終えた」というような方からのフィードバックみたいなものはあるのでしょうか。

高篠:
一応、1件1件進めている中で「こういうことはやらないようにしよう」という積み重ねはあったりします。業界的には、打ち上げはできていないですね(笑) むとうさんはすでに作業を終えられてから長いんですけれど、かといって「ちょっと飲みに行こう」と気軽に誘えないですから。

G:
確かに、それは今一番ダメと言われてるヤツですね。

高篠:
業界としては、作品が次々とかぶってくるのが大変なところです。2020年の前半がスカスカになった一方で、それが後半にずれ込んできて、中には大きなタイトルもあって、もう大変です。

◆メインスタッフの「推し」ポイント
G:
制作においてはさまざまな苦難があったと思いますが、その上でうまくやれた、ここを見て欲しいというポイントはどういったところですか?

元永:
まずはバトルです。3Dのクオリティの高さ。女の子の顔がすべて見えた状態で戦うのですが、キャラが壊れず、戦っている最中もかわいいので、そこはぜひ見ていただきたいです。それと、2Dの会話劇の面白さ。むとうさんの紡いだ言葉を出せればと思って、ノリで突っ走った部分もありますが、うまくいけているんじゃないかと思います。その、バトルと日常の差というのも見せ場ですね。バトルは激しく格好よく、日常はほわん、と。「この子たち、普通にそのへんにいるよね」という感じになっていると思います。それと、隠し球でビッグな声優さんが絡んでくるところも面白いと思います。


高篠:
そうですね、3Dの女の子が「カッコかわいい」、格好よくてかわいいというのは他のアニメにも負けない部分であるというのを感じます。「美少女×メカ」という、トラディショナルなアニメの好かれる部分のエッセンスが強く出ていると思います。最近は「ロボットアニメはあまり好きじゃない」という声も多くて「女の子がかわいいアニメがいい」と。そこで、「ロボくささをかわいく」見てもらえるところに、本作のよさがあるのではないかと思います。『ダンボール戦機』という作品は、『ガンダム』やプラモといったホビーから生まれたコンテンツだと思うので、そのエッセンスをしっかり受け継いで、『ロボらしさ』『ホビーらしさ』を感じられるものになっています。それこそ「フィギュア化、よろしくお願いします」と(笑)

G:
(笑)

高篠:
また、是非『装甲娘 ミゼレムクライシス』にも触れていただければと思います。アニメコラボイベントも準備していますので、期待してください。

むとう:
CGは本当にかわいいし、かっこいいし、想像の数倍上を行くものになっていてびっくりしました。脚本には、皆で顔を合わせて話すからこそ出る生きたアイデアというのもある中で、幸いにも、本作はまだ集まれる時期にやりとりしながら作業できたので、より血の通ったものになっていると思います。監督には好きにやらせて戴けたのと同時に、1話につき1つか2つ、画期的なアイディアを出して戴いて、どんどん面白くなりました。LBXはそのままの姿では出てきませんが、『ダンボール戦機』ファンおなじみのオタクロスが賑やかしではなくちゃんとした役割を持って出てきます。キャストも同じ田久保修平さんなので、楽しみにしていただければと思います。


G:
まさかのここでオタクロス登場とは(笑)。宣伝の石原さんはどうですか?

石原:
では、私は「某ラーメン」を推しておきます。

高篠:
ラーメンね(笑)。作中で、ラーメンを食べるシーンが何度も出てくるんです。


石原:
それで、とあるラーメンとのコラボが決まっているので、お楽しみに、と(笑)

高篠:
野戦キャンプで食べるシーンがあって、ちゃんとご当地ラーメンが出てきます。それは見どころの1つかもしれません。

G:
この作品でラーメンとコラボするというのは、かなり意外な感じです。美少女、メカ、さらにラーメンと、幅広くカバーしているんですね(笑)

高篠:
先方は「アニメ?なんですか?」ぐらい意外な反応でした(笑)

G:
そこもまた楽しみですね。お忙しい時期に、ありがとうございました。

……ということで、アニメ『装甲娘戦機』は2021年1月6日(水)から放送・配信がスタートします。インタビュー中でも話に出たように、ゲーム『装甲娘 ミゼレムクライシス』とともに『ダンボール戦機』をモチーフとして生まれた作品ではありますが、ゲームや『ダンボール戦機』のことをまったく知らなくても大丈夫な独自展開作品となっているので、「かわいい女の子が戦うロボットアニメ」として、心のハードルを下げて楽しんでください。

TVアニメ『装甲娘戦機』本PV - YouTube


今回インタビューに登場した4名のプロフィールは以下の通りです。

・監督:元永慶太郎(もとなが・けいたろう)
アニメーション監督・演出家。福岡県出身。代表作に「銀河機攻隊 マジェスティックプリンス」「ヨルムンガンド」「刀語」「超可動ガール1/6」等。

・脚本:むとうやすゆき
脚本家。代表作に「戦国BASARA」シリーズ、「機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)」「ガンダムビルドダイバーズRe:RISE」「ローリング☆ガールズ」等。

・プロデューサー:高篠秀一(たかしの・しゅういち)
プロデューサー。DMM pictures所属。同社では「LISTENERS」「土下座で頼んでみた」等を担当。

・宣伝プロデューサー:石原良一(いしはら・りょういち)
宣伝プロデューサー。合同会社ツナガルヒト所属。

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in インタビュー,   動画,   アニメ, Posted by logc_nt

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