なぜスポーツイベントは強烈に記憶に残るのか?
「侍ジャパン」によるワールド・ベースボール・クラシック大会連覇や、「スポーツ史上最大の番狂わせ」と報じられたラグビー日本代表による南アフリカからの大金星など、スポーツイベントは時に記憶に長く残り続けます。アメリカのプリンストン大学の研究チームは、試合の中で生じた「予期せぬ驚き」が記憶に長く残り続ける原因だという研究結果を発表しました。
Behavioral, Physiological, and Neural Signatures of Surprise during Naturalistic Sports Viewing: Neuron
https://www.cell.com/neuron/fulltext/S0896-6273(20)30853-9
Basketball on the brain: Neuroscientists use sports to study surprise
https://www.princeton.edu/news/2020/11/25/basketball-brain-neuroscientists-use-sports-study-surprise
Brain study shows why sports create especially powerful memories
https://www.inverse.com/mind-body/how-watching-sports-affects-memories
プリンストン大学のジェームズ・アントニー氏らはスポーツイベントが記憶に残る原因を調べるため、20人のバスケットボールファンに2012年の全米大学体育協会男子バスケットボールトーナメントで実施された9試合のうち「最後の5分間」の映像を見てもらうという実験を行いました。被験者がプレーの映像を視聴している間の目の動きや脳波が、それぞれアイトラッキングカメラやMRIスキャナーで測定されました。なお、バスケットボールが試験対象として選ばれたのは、得点の頻度が高いことが理由です。
この実験の結果、勝敗を決定づけるような攻守交代や、時間ギリギリの3ポイントシュートなどを見た被験者で急速な瞳孔拡張と前頭前野などの脳領域の活性化が確認されました。そして、被験者が示した一連の反応の中でも、「予想が覆されるような出来事が起きたときには特に反応が大きくなる」という現象を研究チームは特筆しています。
研究チームによると、被験者はゲームを見る中で「どちらのチームに勢いがあるか」「どちらのチームが勝ちそうか」などのストーリーを構築しており、そのストーリーに反する出来事が生じた際に反応が大きくなり、「記憶に最も残る」という現象が生じたとのこと。こうしたことから、研究チームは驚きと記憶力の間に関連性があるとみています。
研究チームは予想が覆された場合が最も記憶に残るという今回の実験結果について、熱心なスポーツファンであるならば、こうした試合展開の予想を直感的かつ自然に考えてしまうと述べて、スポーツの観戦という状況が被験者が驚いたタイミングを知るのに適した実験環境だと説明。今回の結果から得られた課題として、「現実の世界では驚いたタイミングと驚きの大きさを正確に特定することが難しく、現実の世界でも今回の結果が適用されるかはわからない」という点を挙げています。
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