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Amazonの「ライバルを駆逐して市場を支配する方法」をまとめたレポートが公開される


世界最大手のECサイトを運営するAmazonは近年、「反トラスト法(独占禁止法)に違反している可能性がある」と指摘されており、排他的な行動で独占力を強化したとして世界各国で調査対象となっています。2020年12月22日、ウォール・ストリート・ジャーナルが「Amazonが競合他社を蹴散らして市場支配を強めた方法」についてまとめたレポートを公開しました。

How Amazon Wins: By Steamrolling Rivals and Partners - WSJ
https://www.wsj.com/articles/amazon-competition-shopify-wayfair-allbirds-antitrust-11608235127

Go read this Wall Street Journal report on Amazon’s obsession with cloning and crushing its rivals - The Verge
https://www.theverge.com/2020/12/22/22195719/amazon-antitrust-wsj-investigation-competition-marketplace-sellers

ウォール・ストリート・ジャーナルが公開したレポートはAmazonが激しい市場競争を繰り広げ、競合他社を蹴散らすさまざまな戦略についてまとめたものです。ジェフ・ベゾスCEOはAmazonが世界最大手のECサイトとなった後も従業員に対し「Amazonをスタートアップと見なす」ことを推奨しており、大きな独占力を活用して競合他社を排除しているとのこと。


Amazonは単に通販プラットフォームを提供するだけでなく、自社ブランド製品を開発・販売していることでも知られています。近年では「Amazonが自社ブランドの商品を他社製品より目立つ位置に表示している」と指摘されているほか、自社製品の販売を促進するために検索アルゴリズムを変更していたとも報じられています。

また、Amazonでは多数のサードパーティ販売業者がAmazonマーケットプレイスで商品を販売していますが、Amazonはマーケットプレイスを介したサードパーティの販売データを自社製品の開発に役立てていたとのこと。ベゾスCEOも「サードパーティの販売データにアクセスしない」という自社ポリシーについて「このポリシーに違反したことがないと保証することはできない」と語っており、2020年11月にはEUが「マーケットプレイスに出品している小売業者の販売データを活用して小売市場で不当な優位性を得ている」として、Amazonを独占禁止法で提訴しました。

EUがAmazonを独占禁止法違反で提訴 - GIGAZINE

by William Warby

Amazonがライバルを駆逐した事例として挙げているのが、かつてベビー用品のオンラインショップとして人気を集めたダイパーズ・ドット・コムです。Amazonは2009年に、ダイパース・ドット・コムを打倒するために「12のステップ」を策定し、Amazon上でオムツなどの大幅割引を実施することで顧客を奪ったとのこと。

ダイパース・ドット・コムの試算によると、Amazonはこの割引によって「オムツ1箱が売れるたびに7ドル(約800円)の赤字」だったそうですが、顧客をAmazonに引きつける効果は十分にありました。さらに、Amazonは割引を実施した直後にダイパース・ドット・コムを運営するQuidsiと接触し、同社の買収計画を持ちかけたそうです。QuidsiはAmazonとの価格競争に勝つことはできないと判断し、2010年に約5億ドル(約600億円)でAmazonに身売りしました。

Quidsiの取締役だったLeonard Lodish氏は、「Amazonがしたことは法律に違反していました」と述べており、巨額の資金を背景に赤字でオムツを販売して顧客を奪う戦略は独占禁止法違反だと主張しています。しかし、Amazonを独占禁止法で訴えるにも数千万ドル(数十億円)もの費用と長い年月がかかるため、たとえ訴訟を起こしてもQuidsiは結果が出るまでに破産してしまっただろうと述べています。


Amazonが競争を繰り広げたのは対立するECサイトだけではなく、さまざまなメーカーもAmazonによる脅威にさらされています。たとえばAmazonはカメラの三脚を販売するブランド・Ravelliに目をつけ、2011年にはRavelliの三脚と同じ構成とデザインを持つ自社ブランドの三脚を販売し始めたとのこと。2015年にはAmazon上で、Ravelliの三脚が「信頼性に問題がある」として一時販売停止される事態となり、記事作成時点ではRavelliの売上は最盛期より大幅に落ち込んでいるそうです。

ウォール・ストリート・ジャーナルによると、Amazonはマーケットプレイス上で販売されている競合他社の製品に「偽造品」のラベルを付け、販売者のアカウントを認証する名目で「製造業者の詳細な情報」を要求しているそうです。この情報を元にしてAmazonは同じ製造業者と連絡を取り、自社製品を作っているとウォール・ストリート・ジャーナルは指摘。これに対しAmazonは、「サードパーティ販売者の製造業者に関する情報を自社ブランド製品のために使っていない」と否定しています。

また、ウールなどの環境に優しい素材を使用した靴メーカーのAllbirdsも、Amazonによって類似品が販売されていると主張しています。Amazonが開発・販売する靴はAllbirdsの靴と外観は似ているものの環境に優しくなく、価格はAllbirdsの靴の半分以下だとのこと。Amazonの広報担当者はウォール・ストリート・ジャーナルに対し、Amazonの靴はAllbirdsのデザインを侵害しておらず、「顧客の反応がよいトレンドに影響された商品を提供することは小売業界の常識です」と述べました。

多くの企業がAmazonの戦略に打撃を受けている一方で、中にはAmazonとの競争で勝利を収めている企業も存在します。たとえばAmazonは2016年に家具や家庭用品を販売するオンラインサイトのWayfairのビジネスを分析するチームを作成し、Wayfairのサプライヤーを特定してAmazon上での家具販売を強化しました。しかしWayfairはその後もシェアを拡大し、直近の四半期決算でも黒字を計上しているとのこと。


オンライン通販プラットフォームを展開するShopifyも、Amazonの強力な競合他社として存在感を強めています。Shopifyはエンドユーザーに直接商品を届けるのではなく、販売業者に対してオンライン通販のプラットフォームを提供する企業です。さまざまな販売業者による多様性が生まれるShopifyのモデルは「Amazon打倒のカギ」ともいわれており、2020年のブラックフライデーでは総売上高が50億ドル(約5200億円)を超え、Amazonマーケットプレイスを上回りました。

最強の捕食者Amazonを打ち負かすのは多様性を持った「真のプラットフォーム」だという指摘 - GIGAZINE


なお、AmazonはShopifyのビジネスモデルを複製するために秘密のチーム「Project Santos」を設立したとウォール・ストリート・ジャーナルは報じており、Amazonは今後も競合他社との激しい戦いを継続すると見られています。

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in ネットサービス, Posted by log1h_ik

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