6年間で10万人の労働者が漁船で強制労働を強いられていることがAIを用いたデータ分析によって明らかに
AIを用いたデータ分析によって、公海に出て漁を行う漁船で最大10万人の労働者が強制労働を強いられていることが判明しました。
Thousands of ocean fishing boats could be using forced labor – we used AI and satellite data to find them
https://theconversation.com/thousands-of-ocean-fishing-boats-could-be-using-forced-labor-we-used-ai-and-satellite-data-to-find-them-152166
環境データサイエンティストのギャビン・マクドナルド氏によると、公海での漁業において強制労働が常態化していることはよく知られているとのこと。しかし、どれだけの人々が強制労働を強いられているかは明らかになっていませんでした。
そこで、マクドナルド氏はAIを用いて強制労働の実態を明らかにすることにしました。まずは、世界中の漁船の動きを追跡できるウェブサービス「Global Fishing Watch」を用いて、過去にに強制労働を行ったことが明らかになった漁船の動きを追跡。この漁船の動きから、自然保護団体のグリーンピースやEnvironmental Justice Foundationの協力を得て、強制労働を行っている漁船に特徴的な動きがないかを分析しました。
強制労働を行っている漁船の動きを分析したところ、「長時間漁を行っている」「他の漁船と比べて港から離れた場所で漁を行っている」といった特有な動きのパターンを見つけることに成功。マクドナルド氏は、このパターンをGoogleのデータサイエンティストの助けを借りてAIに学習させ、92%の精度で強制労働を行っている漁船を見分けられるAIを開発しました。
開発したAIに2012年から2018年までの1万6000隻におよぶ漁船の追跡データを読み込ませ、強制労働を行っている可能性のある漁船を探した結果、漁船の14~26%が強制労働を行っていることが疑われると検出され、最大10万人が強制労働を強いられている可能性が明らかになりました。さらにデータを分析したところ、強制労働を行っている漁船は世界中に散らばっており、特にイカ釣り漁を行う漁船で強制労働が多く行われているという実態が明らかになりました。
マクドナルド氏は「さらに多くのデータを収集してAIの精度を高めることで、労働条件を改善して強制労働の犠牲者を解放し、最終的にはこのAIが強制労働という人権侵害の抑止力になることを願っています」と語っています。
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