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パンデミック中に子どもたちが触れる「オンライン上のヘイト」が増加、子どもたちへの影響は?


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックで人々の生活は大きく変化しており、リモートワークを余儀なくされた子どもたちは、これまで以上に多くの時間をPCやスマートフォンの画面を見て過ごしています。そんな中、ウェスタンシドニー大学で子どもとテクノロジーの関わりについて研究しているJoanne Orlando氏が、「パンデミック中に子どもたちが見る『インターネット上のヘイト』が増加した」と述べ、その影響について解説しています。

Toxicity_during_coronavirus_Report-L1ght.pdf
(PDFファイル)https://l1ght.com/Toxicity_during_coronavirus_Report-L1ght.pdf

Young people are exposed to more hate online during COVID. And it risks their health
https://theconversation.com/young-people-are-exposed-to-more-hate-online-during-covid-and-it-risks-their-health-148107


外出が制限されたパンデミック中でも、子どもたちはSNSやメッセージアプリ、チャット、オンラインゲームなどを使って友人と連絡を取り合うことができました。しかし、パンデミック中にはオンライン上での有名人に対する暴言や特定人種への差別などのヘイトが増加し、子どもたちはオンライン上で以前より多くのヘイト発言を目にしているとのこと。

ヘイトスピーチは個人または人種や宗教に基づいたグループに対し、そのアイデンティティに基づいた攻撃や存在の否定を行うことです。ヘイトスピーチの種類は文章による差別に限らず、画像や記号もヘイトを訴える武器として用いられます。

また、近年ではヘイトスピーチの主張をコード化する動きも進んでいます。たとえばネオナチや白人至上主義のムービーが流行しているTikTokでは、「14 Words」という言葉が白人至上主義を訴える隠語として用いられています。これは14語からなる「We must secure the existence of our people and a future for white children(我々は、民族の存続と白人の子どもたちの未来を確かなものにしなくてはならない)」という白人至上主義のスローガンを表しているとのこと。


子どもたちは自分自身でヘイトを主張していなくても、誰かから差別発言を投げかけられたり、他の人がヘイトスピーチを行う様子をオンライン上で目撃する可能性があります。人工知能を用いたフィルタリングシステムなどを提供するL1ghtは、パンデミック中にオンライン上でヘイトスピーチや嫌がらせがどう変化したのかを知るため、数百万ものウェブサイトや子どもやティーンエイジャー向けのチャットサイト、ゲームサイトなどの発言や交流を分析しました。

調査の結果、L1ghtは「子どもやティーンエイジャーの間ではパンデミック中にヘイトスピーチが70%も増加している」「パンデミック中にゲーマー向けのプラットフォームで有害な発言が40%増加した」といった傾向が判明したと述べています。以下のグラフは縦軸が子どもやティーンエイジャー間で見られるヘイトスピーチの量、横軸が時間を示しており、パンデミックが起きた2020年1月以降はヘイトが急速に増加したことがわかります。


特に注目するべきだとOrlando氏が指摘するのが、何億人ものユーザーを抱えるTikTok上でパンデミック中にヘイトが増加していることです。研究者は2020年初頭からTikTok上でファシズム・人種差別・反ユダヤ主義・反移民主義・外国人排斥といったイデオロギーを含む極右のコンテンツが増加していると指摘しており、多くの子どもやティーンエイジャーがパンデミックという不安定な時期に、これらのヘイトにさらされています。

人種や宗教、地域間の対立が深刻化している近年では、オフラインやオンライン上のやり取りに差別的な発言が持ち込まれることが増えています。Orlando氏はこうした状況により、他者への共感が軽蔑に取って代わり、人とつながるためにヘイトスピーチが行われる可能性があると指摘。


また、単純にオンライン上で日常的にヘイトを目にすることで、「悪意のある言葉に鈍感になってしまう」という危険もあります。子どもたちがヘイトスピーチを見れば見るほどそれに対する動揺は少なくなり、誰かを傷つけてしまう発言にも無関心になります。さらに、悪質な発言をジョークと見なしたり、ヘイトスピーチの影響を過小評価したり、ヘイトスピーチを「言論の自由」に結びつけてしまったりするそうです。

FacebookやTikTokはヘイトスピーチを規制するガイドラインを拡大していますが、全てのヘイトスピーチを規制することはできません。オンライン上でのヘイトスピーチに伴う罰則やリスクも小さいため、子どもたちはオンライン上で悪い発言や行動を学習し、ヘイトスピーチを用いたコミュニケーションを受け入れてしまうとOrlando氏は述べています。


ソーシャルメディアにおけるヘイトの高まりは関係する多くの人々に精神的な害を与えており、短期的には気分の落ち込みや疲労感を引き起こします。長期的にヘイトスピーチにさらされると、うつ病や不安神経症、ストレス性疾患、認知障害のリスク増加といった悪影響が成人期まで続く可能性があるとのこと。

「残念ながらオンライン上でヘイトを根絶することはできません」と語るOrlando氏は、子どもやティーンエイジャーがヘイトスピーチに対処するには、不満を抱えた人々がヘイトスピーチを投稿する理由や、ヘイトスピーチを広める戦略について理解することが重要だと指摘。ヘイトスピーチが投稿される動機や構造について理解するほど、自分の環境をよりよくコントロールでき、影響を受けにくくなるとOrlando氏は述べました。

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in メモ,   ネットサービス,   サイエンス, Posted by log1h_ik

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