サイエンス

睡眠時間は長すぎても短すぎても認知能力が低下すると判明


ワーキングメモリの容量に関係しているといわれる脳領域「白質」の微細構造が睡眠時間に影響を受けるという新たな研究結果が発表されました。この研究では、睡眠時間が長すぎても短すぎても認知能力が低下するとしています。

Sleep duration is associated with white matter microstructure and cognitive performance in healthy adults - Grumbach - 2020 - Human Brain Mapping - Wiley Online Library
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/hbm.25132

Brain mapping study links abnormal sleeping patterns to decreased white matter integrity
https://www.psypost.org/2020/11/brain-mapping-study-links-abnormal-sleeping-patterns-to-decreased-white-matter-integrity-58647

睡眠は人が発揮できる認知能力に大きく関わっていることが知られており、既存の研究では「睡眠不足の状態では認知能力が下がる」ことが確認されています。ドイツのヴェストファーレン・ヴィルヘルム大学(ミュンスター大学)の脳科学者グループは睡眠と認知能力の関連性を調べるため、既存のデータセットを使って睡眠時間・睡眠の質・認知能力・脳の白質の統合性(白質の神経線維がどれだけ一方向に揃っているかやどれほど強度が高いかの度合い)における関係性を調べました。


研究チームは、アメリカの国立衛生研究所が実施した神経系内の各要素がどのように接続されているかを地図化するコネクトームに関する大規模研究プロジェクト「ヒューマン・コネクトーム・プロジェクト」の調査データから、健康な成人1065人の脳スキャンデータに加え、認知能力テストや睡眠の質・睡眠時間に関するアンケートの結果を取得。これらの結果について、関係性が存在するかどうかを調べました。

調査の結果、睡眠時間が短すぎる被験者ではワーキングメモリや言語処理に関して重要とされる脳白質の上縦束の統合性が低下しており、認知能力も低下していることが判明。一方、睡眠時間が長すぎる被験者の場合は脳白質の統合性の低下は確認されませんでしたが、認知能力が低下していることがわかりました。また、睡眠の質と認知能力の間に関連性は見られませんでした。


今回の結果について、研究チームは「あくまで単なる関連性で、睡眠時間によって脳の構造と機能の変化が引き起こされるというような因果関係を示したものではありません」と断った上で、「以前の研究結果から、睡眠不足は脳の化学的性質を変化させて脳白質の完全性を損なわせると推測しています」とコメント。脳白質の完全性を損なわずに認知能力に負の影響を与えないような睡眠時間については、「最適な睡眠時間は人それぞれですが、平均7~8時間の睡眠をとる人は高い認知能力を発揮することがわかっています」と述べています。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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