Facebookが「紛争地から略奪した文化的遺産の闇市」と化してテロ組織の資金源になっている
ヘイトスピーチの温床となっていることなど多くの問題が指摘されているFacebookですが、新たにAntiquities Trafficking&Heritage Anthropology Research(骨董品追跡と遺産人類学研究/ATHAR)プロジェクトは、Facebookが「略奪品の闇市」になっていることを報告しました。Facebookでの略奪品の売買は、テロ組織の資金源となっているとのことです。
Facebook is deleting evidence of war crimes, researchers say - The Verge
https://www.theverge.com/2020/11/25/21664951/facebook-ban-stolen-artifacts-aids-criminal-organizations
ATHARプロジェクトは2020年11月18日、以下の一連のスレッドをTwitterに投稿しました。
THREAD: Today Zuck faced a lot of questions about FB hate speech. But the platform is also hosting criminal activity.
— ATHAR Project (@ATHARProject) November 18, 2020
In the case of antiquities war crime, Facebook is actually *facilitating* it.
We'll show how once trafficker in Libya is using FB to maximize potential buyers pic.twitter.com/vteI6Ju1bD
たとえば、以下の画像は、リビアのデルナ県に在住であるFacebookユーザーのアカウント。このユーザーは複数のFacebookグループで骨とう品が販売中であることを商人に対してアピールしました。
ユーザーの最初の投稿は2020年10月24日。1万3000人のメンバーを持つFacebookグループで骨とう品について、文章のない、写真のみの投稿を行いました。
Facebook上の情報から、このユーザーが投稿を行う1日前にグループに参加したことがわかります。このグループ名はアラビア語で「antiquities for sale」(販売中の骨とう品)を意味するものであり、テキストの投稿がなくても写真の投稿だけで骨とう品が売りに出されていることが理解できます。
そしてこのユーザーは10月25日に、5200人のメンバーを持つ別のグループにも彫像の写真を投稿。
タバコの箱と並べられた彫像の頭部や……
頭や足が欠けたもの。
胴体のみの彫像など、複数の写真を投稿しています。
ユーザーがこのグループに参加したのは、投稿を行った日と同日。
上記のグループが作られたのは、骨とう品の略奪と略奪品の売買が急増しだした2020年5月のこと。Facebookは2020年6月には略奪品の売買を禁じていますが、このグループがFacebookから警告や処分を受けた形跡はありません。
11月3日、1万8000人のメンバーを持つ別のグループにも同じユーザーから写真の投稿がありました。
ただし、この投稿だけは、他の投稿とは異なり、投稿の数日前にユーザーがグループに参加した形跡が見られました。
ユーザーが位置情報を登録しているデルナ県は紛争のさなかにあり、11月には過激派組織「イラク・レバントのイスラム国(IS)」が2つの爆弾を落とし最低18人が亡くなったことが報じられています。紛争の中、大きな美術品を外に持ち出すには時間がかかりますが、Facebookを利用すれば数日のうちに何万人もの買い手候補に略奪品を見せることが可能。このような仕組みにより、Facebookが闇市化しているとATHARは指摘します。
Facebookは略奪品の売買を禁じるポリシーを設定しているものの、投稿の多くがアラビア語であることからポリシーを適切に実施することができないとのこと。また、Facebookはポリシー違反であるグループを特定するとグループを削除しますが、そのような行動は犯罪の証拠を抹消するだけであり、「問題を悪化させている」とも非難されています。
中東では麻薬密売や武器販売は厳しく規制されていますが、盗品販売はそれらほど強く規制されていません。そして中東は文化的遺産が多く存在するため、2014年以来、略奪された骨とう品が多く売買され、ISのようなテロ組織の資金源になっています。
Facebookはポリシーに違反するコンテンツやグループを削除し、法執行機関の要請がある場合にのみ、その証拠を保存します。このため、ATHARのような研究グループは略奪グループを追跡する際の監視に困難を抱えています。Facebookが削除したコンテンツは研究者や人権団体、弁護士がアクセスできるようアーカイブされるべきだという指摘はかねてから存在しますが、2020年11月時点でFacebookはこの指摘にかかわらず、研究者とデータを共有しない方針です。
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