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Facebookのモデレーターが「利益のために命が危険にさらされている」と主張、割増賃金や権利の拡大を求める


2020年11月、Facebookのコンテンツモデレーターたちが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策の強化とサポートの拡充を求める公開書簡を発表しました。Facebookはモデレーターをオフィスに戻しつつあり、モデレーターたちはFacebookの利益のために命の危険にさらされていると主張しています。

Open letter from content moderators re: pandemic — Foxglove
https://www.foxglove.org.uk/news/open-letter-from-content-moderators-re-pandemic


Facebook content moderators demand better coronavirus protections - The Verge
https://www.theverge.com/2020/11/18/21573526/facebook-content-moderators-open-letter-coronavirus-protections-demands-accenture

'Without Our Work, Facebook Is Unusable': Content Moderators Demand Safer Offices : NPR
https://www.npr.org/2020/11/18/936282353/facebook-contract-workers-demand-safer-conditions-amid-pressure-to-return-to-off

COVID-19のパンデミックが起きたことを受け、Facebookは他のテクノロジー企業と同様に在宅勤務への移行を決定し、正規の従業員や下請けのコンテンツモデレーターたちを在宅勤務にしました。Facebookは2020年8月に、COVID-19による在宅勤務措置を2021年7月まで延長することを明らかにしています。

その一方で、コンテンツのモデレーターたちは次第にオフィスでの勤務に戻されつつあるそうです。2020年10月には、下請け業者の一つであるAccentureがテキサス州オースティンのオフィスに従業員を出勤させ、フェイスマスクの着用や清掃体制の強化、座席数の削減といった対策を講じた上で社内勤務を再開しました。

ところが在宅勤務が終了してから数日後、Facebookのコンテンツ監視が行われるAccentureのオフィスで働く1人の従業員が、COVID-19陽性だと診断されたと海外メディアのThe Interceptが報じました。Accentureの人事担当者は同じオフィスで勤務する従業員の感染リスクについて、「必ずしも心配する必要はありません」と主張したとのこと。


Facebookは2020年アメリカ大統領選挙の前後に、新型コロナウイルスや選挙に関連するフェイクニュースや有害なコンテンツの拡散を阻止し、プラットフォームを健全に保つことを強く要求されました。パンデミックの影響でモデレーターたちが在宅勤務をする間、FacebookはAIによるコンテンツ監視の自動化を検討したそうですが、AIはうまく有害コンテンツを判別できなかったそうです。

そこでFacebookは人間のモデレーターによるコンテンツ監視を行うため、モデレーターたちをオフィスに戻しているとのこと。いくつかのコンテンツはセキュリティ上の問題から在宅勤務で処理することができず、オフィスでの作業が必要になるとFacebookは主張しています。


モデレーターたちは、「パンデミックが発生する前から、コンテンツの監視はFacebookの最も残酷な仕事でした」と公開書簡で述べ、有害なコンテンツをいくつも見ることになるモデレーターは過酷な仕事であると主張。そして今回、AIによるコンテンツの監視が失敗したことにより、Facebookのビジネスに占める人間のモデレーターの重要性が認識されたとモデレーターたちは訴えています。

公開書簡では、「教訓は明らかです。Facebookのアルゴリズムは、コンテンツを自動的に監視するために必要なレベルに洗練されるまで何年もかかります」「私たちの仕事がなければFacebookは利用できず、Facebook帝国は崩壊します。アルゴリズムは風刺を見つけることができず、ジャーナリズムから偽情報をふるいにかけることができず、自傷行為や児童虐待に素早く対応できません。私たちはそれができます」「Facebookは私たちを必要としています。Facebookが私たちの仕事を認め、評価する時が来ました」と述べられました。


オフィスへ戻るように伝えられたモデレーターのうち、医師から「COVID-19のリスクが高い」と判断された人は引き続き在宅勤務が認められているそうですが、そうでないモデレーターはオフィスに戻る必要があるとのこと。公開書簡では、自分自身のリスクが低いものの家族に高リスクの人物がいるモデレーターにも在宅勤務を認め、可能な限り在宅勤務を延長することを要求しています。

また、緊急事態に危険な勤務を行うモデレーターに対し、Facebookが1.5倍の割増賃金を支払うことも公開書簡では求められています。パンデミックの間にFacebookの広告収益や利用者が増加していることが報じられていることから、Facebookの重要な業務を担うモデレーターにも恩恵を与えるべきだとモデレーターたちは主張。さらに、Facebookがモデレーターを下請けから正社員に切り替え、正社員と同様のヘルスケアやメンタルサポートを提供するべきだと訴えています。

今回の公開書簡には実名を公表した63人の労働者と、匿名を希望したアメリカとヨーロッパにまたがる171人の労働者が署名しました。公開書簡の発表を行った法律事務所のFoxgloveは、「これはFacebookモデレーターによるこれまでで最大の国際共同的な取り組みです」と述べました。


Facebookの広報担当者は海外メディア・The Vergeへの声明で、コンテンツモデレーターたちが在宅勤務できず、十分なサポートを受けられないという公開書簡の内容に異を唱えています。「私たちはコンテンツのレビュアーが行う貴重な仕事に感謝しており、彼らの健康と安全を優先します」「全世界にまたがる1万5000人のコンテンツレビュアーの大多数は自宅で仕事をしており、パンデミックの間は在宅勤務が続きます。彼ら全員が就職初日からヘルスケアと福祉リソースにアクセスでき、オフィスを安全に保つための充実した健康ガイダンスを備えています」と、広報担当者は述べました。

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in メモ, Posted by log1h_ik