Appleによるプリンタードライバーの開発がひそかに幕を閉じていたと判明
一昔前は仕事に欠かせないデバイスだったプリンターは、スマートフォンやタブレット端末の普及、ビデオ会議の導入が進んだことなどにより、活躍する機会を大きく減らすこととなりました。iPhoneやiPadでペーパーレス化の流れを生んだAppleも実はプリンターを動作させるためのドライバーの開発を行っていたのですが、2020年に入ってその開発がぱったり止まってしまっていることがわかりました。
Apple's CUPS Repository Has Died A Quiet Death - LinuxReviews
https://linuxreviews.org/Apple%27s_CUPS_Repository_Has_Died_A_Quiet_Death
UNIXやLinux向けのプリンタードライバー「CUPS」は、Michael Sweet氏によって1999年に公開され、Linuxでプリンターを利用する際の業界標準となっていました。2007年、CUPSはAppleによって買収され、開発者であるSweet氏はAppleに入社することに。その後、CUPSのメンテナンスはAppleのGitHubリポジトリで行われていました。
アップル、UNIX向け印刷システム「CUPS」を買収 - ZDNet Japan
https://japan.zdnet.com/article/20352942/
そんなCUPSの開発が2020年に入った途端に止まってしまったと、ジャーナリストのYoon Chae-kyung氏が自身のブログで報告。CUPSの開発は2019年まで盛んに行われていましたが、2020年に入ってからはプログラムの変更を表す「コミット」数が激減。CUPSのGitHubリポジトリはほとんど誰も開発を行っていない状態です。
開発が止まってしまったのは、2019年12月にSweet氏がAppleを退社したため。Sweet氏は2019年12月20日付のブログで「Appleを退社すること」と「妻と新しい会社を立ち上げること」を報告しています。CUPSリポジトリの直近のコミットログを確認すると、ほとんどがSweet氏によるコミットであり、Sweet氏の退社がAppleによるCUPSの開発ストップにつながるのも納得できます。
だだし、AppleによるCUPSの開発終了は「CUPS」そのものの終了にはつながらないとYoon氏は指摘。UNIX/Linuxでのプリンター動作をサポートするプロジェクト「OpenPrinting」がAppleのCUPSプロジェクトを継承しており、こちらのGitHubリポジトリでCUPSの開発が継続されています。
GitHub - OpenPrinting/cups: OpenPrinting CUPS Sources (Apple CUPS + common patches)
https://github.com/OpenPrinting/cups
OpenPrintingがメンテナンスしているCUPSリポジトリのコミットログにはSweet氏の姿も確認でき、Sweet氏によるCUPSの開発場所がOpenPrintingに移ったことがうかがえます。Sweet氏はCUPSの開発だけでなく、CUPSとアプリケーション間で利用できるフレームワーク「PAPPL」の開発も行っているとのこと。
Yoon氏は「数年先でもLinuxでプリンターを使えそうでうれしいですが、その未来はAppleではなく、OpenPrintingによって実現されることになりそうです」とコメントしています。
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