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全地球航法衛星システム「ガリレオ」は地上局の影響でさまざまな問題が出ている


カーナビゲーションシステムなどで位置や進路の測位に利用されている全地球航法衛星システム(GNSS)といえば、「GPS」が特に有名ですが、GPSはアメリカ国防総省が運用しているため、有事の際のサービス中断や劣化の可能性があるとして、ヨーロッパでは欧州委員会が独自のGNSSとして「ガリレオ」を運用しています。しかし、「ガリレオ」には地上局側で問題があると、事情に詳しい起業家のバート・ヒューバート氏が指摘しています。

Galileo's Ground Segment Problem - Articles
https://berthub.eu/articles/posts/galileos-ground-segment-problem/


ヒューバート氏は起業家・ソフトウェア開発者。「ガリレオ」に詳しく、2019年11月に「ガリレオ」が1週間以上にわたってシステムダウンした理由を独自に分析したこともあります。

GPSより高精度な衛星測位システム「ガリレオ」が1週間以上システムダウンした原因とは? - GIGAZINE


ヒューバート氏によると、「ガリレオ」は日常的に問題が発生しているというわけではないものの、時折、問題が発生しているとのこと。特に、2020年に入ってから状態が悪化していて、2020年9月には、測位に5mほどの誤差が出るケースがあったそうです。

人工衛星は完全に同一の軌道を周回しているわけではないので、誤差は必ず生じます。このため1時間に1回程度、地上の原子時計と通信を行って、「エフェメリス」と呼ばれる詳細な軌道予定情報を更新しています。


ヒューバート氏によれば、「ガリレオ」は100億ユーロ(約1兆2400億円)以上が投入されている巨大プロジェクトであるにも関わらず、なぜか地上とのデータ通信で常に容量制限がかかるような状態になっているとのこと。アクティブに地上と通信を行っているのは一部の衛星だけで、ここ数年の目標は「すべての衛星が100分に1回は地上と通信すること」だそうです。

設計自体はシンプルで、すべての仕組みがうまく働いていれば、打ち上げられた衛星のうち20基が同時に通信できるはずなのですが、うまくいっていないのが現状。ヒューバート氏の調べでは、ガリレオの衛星と通信しているアンテナは、だいたい「13基」のことが多いとのこと。


ヒューバート氏は、こうした状況について、地上局側に問題があると指摘しています。

原因の1つは、多くの地上局が離島や北欧の群島に設置されていて、新型コロナウイルスの影響により、現地へ行ってメンテナンス作業や拡張工事ができていないからだとみられます。

もう1つは、地上局の一部がイギリスにあること。イギリスは2020年に正式に欧州連合離脱(ブレグジット)を果たしており、ブレグジット以降はこれらの地上局が機能していないのだそうです。

なお、技術的な問題により、利用できない地上局がある場合、ネットワークに衛星を新規追加したときに波及効果が出ることがあり、地上局側の問題が修正されたとしても影響が長引くことがあるとのこと。

ガリレオは2021年初頭にさらに2基の衛星が追加される予定となっていて、10分の1メートル(デシメートル)単位でリアルタイムに更新される高精度サービスと、ナビゲーションメッセージに暗号署名を付加するオープンサービスネットワークメッセージ認証サービスの提供も始まる予定です。

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in メモ, Posted by logc_nt

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