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「宇宙最大の星」はどの星なのか?


宇宙は広く、現代の人類にとって謎に満ちあふれています。そんな宇宙において「最大の星はどの星なのか」という疑問について、科学系YouTubeチャンネルのKurzgesagtがアニメーションムービーで解説しています。

The Largest Star in the Universe – Size Comparison - YouTube


巨大な星のうち最も身近な例としては、太陽系最大の惑星である木星が挙げられます。木星の大きさは地球のおよそ11倍、重さは317倍です。


木星よりもさらに大きいのが、褐色矮星。褐色矮星は、木星のおよそ13倍から90倍の質量を有しています。


褐色矮星の次に大きい星のカテゴリが、Main Sequence Stars(主系列星)です。


水素やヘリウムなどのガスが、一定の質量を超えるほど集まった場合、中心部は燃焼が生じるほどの高温に達します。


その結果、中心部では水素がヘリウムに変換される核融合反応の一種である陽子-陽子連鎖反応が発生。膨大な量のエネルギーを放出します。主系列星は質量が大きければ大きいほど温度が高く、強い光を放つ反面、その寿命は短くなります。


陽子-陽子連鎖反応によって中心部の水素が枯渇すると、主系列星は一気に数十万倍の大きさに巨大化した後に、死を迎えます。


このように「星の大きさを比べる」といっても、星はその一生の間に大きさが変わるので、「大人と子ども」を比較してしまうという可能性に留意しておくべきです。


主系列星の中でも最も小さい赤色矮星は木星の100倍ほどの質量を有しています。


赤色矮星の質量は小さいため、大きな核融合反応は生じません。それゆえ、放出する光は非常に弱く、死を迎えるまでに一度も巨大化することはありません。


また、赤色矮星の寿命は10兆年にも達するため、宇宙で最も多く存在する恒星でもあります。ビッグバンによって宇宙が誕生したのがおよそ138億年前と計算されているので、10兆年は宇宙の年齢のおよそ1000倍です。


主系列星の中で赤色矮星の次に大きいのが、太陽のような星です。太陽の表面温度はおよそ6000度と高温で、なおかつ放出する光は強いものの、100億年ほどの寿命しかありません。


太陽よりも大きな星について話を移します。太陽を除いて地球上から見える最も明るい恒星であるシリウスを構成するシリウスAは、質量は太陽の倍、半径の大きさは太陽の1.7倍。太陽の25倍も明るく輝きます。


しかしその反面、シリウスAの寿命はガクッと下がって約25億年ほど。


ケンタウルス座ベータ星は質量が太陽の10倍、大きさは13倍。表面温度は2万5000度に達し、放出する光も太陽の2万倍のパワーを持っています。そして、寿命は2000万年ほどしかありません。


これまでの例からわかるとおり、質量が大きい星ほど大きさは大きくなります。


これまでに発見された中で最も質量が大きい星はR136a1という星です。R136a1は太陽の315倍の質量を有しており、その明るさは太陽の900万倍。


しかし、質量や明るさに比べてサイズの差は小さく、R136a1は太陽の30倍ほどの大きさです。なお、寿命はおよそ数百万年ほど。


R136a1からは恒星風によって大量の質量が逃げ出しており、毎秒32.1京トンものペースで質量を失っていると予想されています。


R136a1は巨大質量の惑星が合体して形成されたと考えられており、核中の水素も数百万年で尽きるとみられています。


以上の星は、質量と大きさが一貫して比例してきました。しかし、これよりも大きなサイズの星を考える場合は、「膨張」が重要な要素になります。


主系列星が核中の水素を使い果たした場合、核での核融合効率の低下にともなって核は圧縮され、温度と圧力は上昇します。その結果、外向きのエネルギーが増加するため、時間の経過と共に恒星の外層は膨張します。


例えば、みなみじゅうじ座ガンマ星は太陽の1.3倍ほどの質量ですが、その半径は太陽の84倍に達します。


一方で、太陽も死ぬ間際においては、半径が200倍に膨張すると考えられています。


200倍の半径まで膨張した場合には、水星や金星がのみ込まれてしまう見込みです。


そして、そんな膨張した太陽が比較にならないほどの大きさを誇るのが、この宇宙で最大の星であるHypergiant(極超巨星)です。


極超巨星は、非常に明るいものの表面の重力が弱く、表面から大量の質量が流出していると考えられています。


ピストル星は太陽の25倍の質量ですが、その半径はおよそ300倍。寿命は予測困難とされていますが、およそ数百万年ほどだとみられており、青い光を放つことから高光度青色変光星と分類されています。


ピストル星のような高光度青色変光星よりも大きいのが、黄色極超巨星


最も研究が進んでいる黄色極超巨星のカシオペヤ座ロー星は、地球から1000光年離れているにも関わらず、肉眼で捉えることが可能なほどの明るさを誇ります。


カシオペヤ座ロー星は太陽の40倍の質量で、その半径は500倍。明るさにいたってはおよそ50万倍にも達します。


もしカシオペヤ座ロー星が太陽と同じ位置にあった場合には、人類は燃え尽きて死ぬでしょう。


黄色極超巨星は珍しく、これまでに15個しか発見されていません。これは、黄色極超巨星の寿命が短いことを意味しています。


この黄色極超巨星よりも大きいのが、赤色極超巨星です。赤色極超巨星は観測される限り最大の星で、ひょっとするとこれ以上大きな星は存在しないかもしれないとのこと。


それでは、結局のところ「宇宙最大の星」は、どの星になるのかというと……


正確な答えは、「わからない」とのことです。これは、赤色極超巨星に分類される星は、明るすぎる上に地球から遠く離れたものばかりであり、小さな計測エラーでも大きな測定結果の誤差を生む可能性があることが原因。


さらに、赤色極超巨星は太陽系に匹敵するサイズである上に、大量の質量を放出しているため、計測自体も困難です。従って、科学技術が進歩し、計測機器自体が改善するにつれて、「宇宙最大の星」という問いに対する答えは変わると考えられます。


これまでに発見された中ならば、スティーブンソン2-18が最大です。


スティーブンソン2-18は、誕生時は太陽の数倍の質量を持っていましたが、全質量の半分を失ったと考えられています。


平均的な赤色極超巨星はおよそ太陽の1500倍の半径を有すると考えられていますが、スティーブンソン2-18は太陽の2150倍の半径を持ち、明るさは太陽の50万倍に達するとみられています。


スティーブンソン2-18と比較すると、太陽はチリほどのサイズ。人類にとって、スティーブンソン2-18の巨大さは想像がつかないほどです。


スティーブンソン2-18を一周するのにかかる時間は、光の速さでおよそ8.7時間。ブラックバードの愛称で知られる人類史上最速の航空機「SR-71」の場合では、一周するのに500年近くかかります。


太陽の位置にスティーブンソン2-18が存在した場合、その表面は土星にまで達します。


スティーブンソン2-18は質量を放出し続けているため、その温度は上昇し続け、核には重金属が蓄積され続けます。そして、スティーブンソン2-18は最終的に超新星爆発を引き起こし、宇宙に重金属を含むガスをまき散らすと考えられます。


まき散らされたガスによって、星々が生まれたり死んだりするサイクルが新たに始まるというわけです。

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in サイエンス,   動画, Posted by darkhorse_log

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