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「アルゴリズムって何?」を専門家が分かりやすく解説


アルゴリズム」という言葉を知っていても、改めて「アルゴリズムって何?」と聞かれるとうまく答えられないという人は多いはず。アルゴリズムという言葉の意味や、PCが登場する前から人間の生活に息づいてきたというアルゴリズムの正体について、コンピューターサイエンスの専門家に取材したIT系ニュースサイトMashableが分かりやすく解説しています。

What is an algorithm?
https://mashable.com/article/what-is-an-algorithm/

ワシントン大学でコンピュータサイエンスを教えているペドロ・ドミンゴス教授は、Mashableの取材に対し、以下の6つのポイントに分けてアルゴリズムについて語りました。

◆1:アルゴリズムとは「一連の命令」のこと
ドミンゴス教授によると、アルゴリズムの定義は 「一連の命令」だとのこと。広い意味では「2+2の求め方」「ケーキの焼き方」「憲法にのっとって国を運営する方法」なども全てアルゴリズムですが、一般的には「PCに何をすべきかを指示する一連の命令」とされています。

専門分野であるコンピュータサイエンスにおけるアルゴリズムについて、ドミンゴス教授は「PCのアルゴリズムは非常に複雑です。足し算も数行のテキストで定義されたアルゴリズムといえますが、PCのアルゴリズムは時に何百万行にも及ぶことがあります」と話しました。


◆2:PCが登場するずっと前から人類はアルゴリズムを書いてきた
上記のように、現代ではPCに関する文脈で使われるアルゴリズムですが、その歴史はPCよりはるかに古く、元をたどると古代のバビロニアで初期の農耕社会を管理する計算にまでさかのぼることが可能とのこと。

PCが発明される前からアルゴリズムが存在していたということについて、ドミンゴス教授は「アルゴリズムを実行するためにはPCは必要ありません。アルゴリズムは人間が実行することもあるからです」と述べています。


20世紀半ばにPCが登場すると、軍隊が移動しながら砲撃するための計算にPCを導入したのを皮切りに、アルゴリズムは給料の計算や天候を予測する計算などの用途で注目を集めるようになりました。そんな現代のアルゴリズムの転機となったのが、Googleの登場です。

Googleを創業したラリー・ペイジ氏とセルゲイ・ブリン氏は、検索エンジンにページランクというアルゴリズムを組み込みました。このページランクは、検索ワードとサイトの関連性だけでなく、そのサイトがどれだけリンクされているかなどから分かる記事の評判などを大規模に評価することができるという点で画期的なものでした。


◆3:現代ではあらゆる場所にアルゴリズムが存在している
PCやインターネットの普及に伴い、アルゴリズムは生活の至る所で見られるようになりました。例えば、個人向けにカスタマイズされるFacebookのニュースフィードや、Amazonが商品をユーザーに勧めるための仕組みも、アルゴリズムで成り立っています。

また、ドミンゴス教授によると、食器洗い機が洗浄モードから乾燥モードに移行するタイミングや、自動車による燃料消費や供給の計算、デジタルアニメーション映画が人物の影を現実そっくりに再現する方法など、実にさまざまなものがアルゴリズムに基づいているとのこと。

「私たちがPCやインターネットを使う時、そこには間違いなくアルゴリズムが関わっています。最近ではありとあらゆるものにアルゴリズムに関与しているのです」とドミンゴス教授は話しました。


◆4:アルゴリズムと機械学習
技術の進歩によって形を変えてきたアルゴリズムは、人工知能(AI)の一種である機械学習の登場により、さらに新しい変化を迎えつつあります。PCに命令をするためのアルゴリズムは、プログラマーによって非常に細かく書かれています。これを料理のレシピに例えると、まずタマネギとは何なのかを定義してから、タマネギをみじん切りにして炒めるといった手順を1つずつ指示しているようなものです。

しかし、料理に慣れた人ならレシピに「あめ色のタマネギ」と書かれているのを見るだけで、自分で考えてタマネギを炒めることができます。同様に、機械学習を使ってトレーニングすることで、PCは独自にアルゴリズムを開発して目的を達成することができるようになります。

ドミンゴス教授は「PCは人間にプログラムされる代わりに、自分をプログラムすることを学習するようになります。これは非常に強力です。なぜなら、人間の介入をほとんど必要とせず、非常に複雑なアルゴリズムを生成することができるからです」と話しました。


◆5:アルゴリズムは決して完璧はない
PCに詳しくない人は、なんとなく「アルゴリズムは完璧なもの」と考えがちですが、ドミンゴス教授は「アルゴリズムには人間と同様の欠陥がある可能性がひそんでいます」と指摘しています。

その大きな要因の1つが「偏見」です。人間と違い、機械学習を利用したアルゴリズムには偏見がないと思われがちですが、現実はその逆で、学習に使用したデータに偏見が含まれていた場合、バイアスは一層強固なものになってしまうとのこと。

例えば、アメリカのヘルスケアシステムには人種に関する情報が含まれていませんが、システムが参照した医療費のデータに偏りがあったため、結果的に人種バイアスを除去することが不可能なほどの人種差別が発生してしまったことが問題となりました。

医療システムに組み込まれたアルゴリズムの人種バイアスを取り除くことは困難 - GIGAZINE


◆6:それでもアルゴリズムは世界を変える力を持っている
ドミンゴス教授は「インターネットやソーシャルメディアなど、私たちが当たり前だと思っているものはすべて、アルゴリズムなしには存在しなかったでしょう」と指摘。たとえ完璧なものでなくても、アルゴリズムには世界を変える力があるとの見方を示しました。

その上でドミンゴス教授は、「かつて産業革命が手工業にしたことを、現代のアルゴリズムは頭脳労働で行おうとしています。つまり、アルゴリズムは知性の自動化といえます。そして、アルゴリズムが公正なものになるか偏ったものになるか、有益なものになるか有害なものになるかどうかは、私たち次第です」と述べて、アルゴリズムの解説を締めくくりました。

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in ソフトウェア, Posted by log1l_ks

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