浮遊する液体に上下逆さまのヨットが浮かぶ不思議な現象が発表される
アルキメデスの原理とは、「流体に入った物体は、それが押しのけた流体の重さに等しい上向きの浮力を得る」という法則のことです。しかし、この法則に反して「通常とは異なる浮力が発生しヨットが上下逆さまに浮かぶ」という現象を発生させることができたことを報告した論文が、2020年9月2日に発表されました。
Floating under a levitating liquid | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-020-2643-8
Vibration overcomes gravity on a levitating fluid
https://www.nature.com/articles/d41586-020-02451-w
Up Is Down in This Fun Physics Experiment - The New York Times
https://www.nytimes.com/2020/09/03/science/floating-upside-down-liquid.html
水槽に入った油の上にゆっくりと水を注ぎ入れても、ちょっとした拍子にバランスが崩れて、油より密度が高い水が油の下に沈みます。しかし、特定の条件をそろえると、空気など密度が低い物質の層の上に液体の層を浮遊させることができるとのこと。
今回論文を発表したパリ市立工業物理化学高等専門大学のEmmanuel Fort氏らの研究チームは、「鉛直方向の振動を与えることで液体を浮かせることが可能」だという過去の知見からさらに発展した研究を行うため、水より粘度の高いシリコン油やグリセロールに振動を与える実験を行いました。
以下の学術誌Natureのムービーを再生すると、実際に液体が浮いている様子を見ることが可能です。
The weird physics of upside down buoyancy - YouTube
液体の上にある空気の層の上に、さらに液体が浮かんでいます。
この現象は、水槽に激しい縦揺れを加えることで引き起こされています。
砂時計のように上下をひっくり返せる水槽に粘性の高い液体を入れてからひっくり返すと……
液体は重力に従って、上から下にしたたり落ちます。
通常は液体が重力に引っ張られ、こんな感じで液滴を作って落ちていく様子が観察できます。
そこで、今度は適切な振動を与えつつ水槽をひっくり返すと、一部はしたたり落ちずに上の方にとどまり続けました。これは、振動で水滴の形成が妨げられたからだとのこと。
この現象自体は過去に発見されたものですが、Fort氏らの研究チームは今回、プラスチック製のボートを水槽に入れてみました。そして、ボートに取り付けられている磁石を使って、ボートの底を宙に浮かんだ水の層につけると……
ボートが上下逆さまに浮かびました。
今回の研究により、宙に浮かんだ液体層の下部では、「物が上向きに浮かぶ」という常識が覆されることがわかりました。オークランド大学のウラジスラフ・ ソロキン博士らは学術誌Natureへの寄稿文の中で、「この発見は単なる珍現象にとどまらず、流体中に閉じ込められたガスや物体の輸送に応用できるかもしれません」と述べています。
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