AIを駆使してペットの感情を読み取るアプリ「Happy Pets」が誕生
ペットを飼っている人なら「ペットが何を考えているか」気になったことがあるはず。そんなペットの考えを分析する試みとして、人工知能(AI)を駆使した表情分析をベースにペットの感情を読み取るアプリ「Happy Pets」が誕生しました。
Ever wondered what your pet is thinking? | Pursuit by The University of Melbourne
https://pursuit.unimelb.edu.au/articles/ever-wondered-what-your-pet-is-thinking
毎年オーストラリアで開催されているSplendour in the Grassという音楽祭では、テクノロジー関連の発表などが行われているのですが、2020年の開催は新型コロナウイルスの影響で延期となりました。そんな2020年のSplendour in the Grassで発表すべく開発が進められてきたのが、AIを用いてペットの感情を読み取ることを目指したアプリ「Happy Pets」です。
Happy PetsはiOSおよびAndroid向けアプリとして配信されています。
Happy Pets on the App Store
https://apps.apple.com/au/app/happy-pets/id1515202735
Happy Pets - Google Play のアプリ
https://play.google.com/store/apps/details?id=au.edu.unimelb.eresearch.happypets
そもそも、表情は人間のコミュニケーションにおけるもっとも重要な側面のひとつであると心理学者や人類学者が考えているように、顔は考えや感情を他者に伝えるための重要なパーツです。実際、幸福や恐怖、驚きなどの一部の感情は、民族や社会、コミュニティといった垣根を超えて一様な表情として識別できます。つまり、人間の表情ベースの感情表現は、文化的な学習結果ではなく、進化の過程で培われてきたものであり、育った環境などにかかわらず一様というわけ。
そんな表情と感情のつながりを分析するという試みを、動物にもあてはめる形で行ったのが、メルボルン大学の研究チーム。その成果として誕生したのが「Happy Pets」です。Happy Petsには技術的な観点からすると2つの重要なステップがあったそうで、1つ目が「顔認識でどの動物の感情を読み取るか?」というもの。今回は、人間に飼われる「ペット」を対象に表情から感情を読み取ることを行っています。そして2つ目は、「感情を表す主要な特徴やパターンを識別すること」で、これには畳み込みニューラルネットワークが活用されています。
ニューラルネットワークは教師あり学習と呼ばれるメカニズムを用いて、どの出力(ラベル)がどの入力(画像)に対応しているかを学習させるというもの。ニューラルネットワークを用いた画像認識はリンゴとナシの違いを子どもに教えるのと同じように、アルゴリズムを用いて入力と出力に変換する関数の重み付けとパラメーターを調整します。トレーニングデータで最適な結果が得られるまで調整を続けることで、アルゴリズムがリンゴの画像を正しくリンゴと認識できるように調整するわけです。
そして畳み込みニューラルネットワークは画像認識に最適化されたもので、通常のニューラルネットワークのように機能しながら、「畳み込み」という手法を用いて画像から特徴を抽出して識別することが可能となります。
Happy Petsはその畳み込みニューラルネットワークを用いており、オンラインデータセットを使用することでニューラルネットワークがペットの品種を認識できるように学習しています。なお、学習前の段階ではチワワとマフィンを区別することもできないそうです。
さらに、Happy Petsではペットの感情を読み取るために、ニューラルネットワークのパラメーターに多くの微調整を加えているとのこと。具体的に、Happy Petsではペットの幸福・怒り・中立・悲しみ・恐れという5つの感情のうち、ペットが抱いている可能性の最も高いものが示せるように調整されているそうです。
また、Happy Petsでは何千もの画像から感情と特定の表情を関連付けるための学習が行われ、これをベースにペットの感情を検出します。例えば、犬が耳の位置を特徴的に変えながら、目や口を引き締めている場合、それは恐怖を感じているサインだそうです。
メルボルン大学の研究チームはHappy Petsについて、「かなりしっかりしており、アプリを広範囲にテストすることができたと自負しています。ただし、Happy Petsが正確かどうかを判断すべきなのはあなた自身です」と記しており、実際に使用してその正確性を確認してほしいと述べました。
なお、記事作成時点ではHappy Petsで感情を読み取ることができるペットの品種は限られているとのこと。そのため、対応品種以外は最も近い品種に分類され、その正確性も低くなる模様。加えて、ネコは犬よりも感情が読み取りづらいことが明らかになっており、今後は顔だけでなく体も含めてペットの感情を分析することで、その精度を高めていく予定だそうです。
研究チームは「全体としてペットの感情は識別しにくいものですが、人間の感情を特定することは比較的容易です。したがって、人間の感情をペットの感情に関連付けることができるかどうか、そして共通の特徴を持っているかどうかは、将来のよりエキサイティングな研究分野となる可能性があります」と記しています。
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