動物に「意識」はあるのか?
by Oleksandr Pidvalnyi
動物に意識が存在するのかどうかという問題に関する議論は、動物が持つ知能や外界に対する反応が明らかになるにつれて増しています。The AtlanticのライターであるRoss Andersen氏が動物の意識について、生き物を傷つけない教義を厳守するインドの宗教、ジャイナ教についての思索を交えながら考察しています。
Do Animals Have Feelings? - The Atlantic
https://www.theatlantic.com/magazine/archive/2019/03/what-the-crow-knows/580726/
ジャイナ教は徹底した苦行と禁欲主義によって知られる宗教であり、人間に対する非暴力だけでなく、ほかの生物に対しても害をなさないアヒンサーの教えが重要だとされています。ジャイナ教徒の多いグジャラート州を訪れたAndersen氏は、白衣に身を包んだジャイナ教の僧が、なるべく地面の生き物に影響を与えないように車を使わず裸足で歩く様子を見たとのこと。全ての生き物には感情や欲望といった意識が存在すると信じるジャイナ教の僧たちは、できるだけほかの生物に害をなさずに過ごすことを重視しています。
アジアにおいて動物に意識があるという思想が発達した一方で、西洋では長らく「動物に意識は存在しない」と考えられていました。意識は人間にだけ授けられた神の贈り物であり、チャールズ・ダーウィンが自然選択説にもとづく進化論を提唱してからも、多くの科学者は意識が人間に特有なものであると考えていたとのこと。
しかし、近年では霊長類や犬、ゾウ、クジラといった哺乳類が高い知能を持っており、意識を持っている可能性が高いという主張が盛んです。哺乳類でないタコにも高い知能が存在することがわかっており、どの動物に意識があってどの動物に意識がないのかといった議論に答えは出ていません。また、意識についての科学的研究は困難であり、これから先もしばらくの間、明快な科学的説明がされることはないかもしれません。
by blickpixel
動物の意識とジャイナ教について興味を持ったAndersen氏は、ジャイナ教の信徒によって運営されている「鳥の病院」を訪れました。鳥の病院には大勢のジャイナ教徒がケガをした鳥を持って訪れ、専門の医師が鳥の治療に当たっています。鳥の病院で働く獣医のDheeraj Kumar Singh氏は、運ばれてきたハトやインコ、カラスといった鳥に対して治療を施し、再び飛べるようになると自然に離しているとのこと。
鳥の中には非常に高い知能を持つ種類がいることが、これまでの研究で知られています。カササギは哺乳類以外で初めて動物が視覚的な自己認知能力を持っているか否かを調べる「ミラーテスト」に合格しており、オーストラリアには「火を使って狩りをする鳥」が存在することも確認されました。
火を使って狩りをする鳥の存在が確認される - GIGAZINE
また、カラスも体の大きさに比べてかなり大きく、ニューロンの密度が高い脳を持っており、高い知能を持っていることで知られています。2018年にも、カラスは複数の道具を組み合わせ、エサを取るために必要な道具を作り出せるという研究結果が発表されています。
カラスはバラバラのパーツを組み立てて便利な道具を作り出すことができる - GIGAZINE
Singh氏が世話している1匹のカラスは非常に賢く、お腹がすいた時に独特の鳴き声でエサを催促するそうです。これまでに巣立ったカラスの中にも、自由になってからもしばらく鳥の病院の周囲に現れ、まるでお世話になったSingh氏を探すかのような動きを見せる個体がいるとのこと。
このように、鳥は非常に賢い存在であるとみられていますが、人間の脳で重要な役割を果たしている大脳が鳥においては未発達であり、鳥の脳は人間の脳と大きく違います。Andersen氏はもしもカラスが意識を持っているとするならば、鳥類に意識が発生した2つのパターンが考えられるとしています。1つ目のパターンは人間と鳥がそれぞれ違った脳を発達させ、その中でお互いに別個の意識を発生させたというもの。2つ目のパターンが、人間と鳥が別の存在として進化していく以前から、動物には意識が備わっていたというパターンです。
「いずれのシナリオにしても、動物の脳がこれまで以上に簡単に意識を発生させることが可能だと信じる理由になります。ひょっとすると、世界中の大小さまざまな動物が今もそれぞれに鮮やかな意識を経験しているかもしれません」と、Andersen氏は述べました。
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また、鳥よりも人間とかけ離れているように見える魚にも、近年では意識の存在が疑われています。魚にも痛覚があるという見解が科学者の中で広がっているほか、ミラーテストをクリアした魚の存在が研究者らに衝撃を与えるといった事態が起こっています。
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ジャイナ教の祖師とされる24人のティールタンカラの1人であるNeminathaは、結婚式の際に供宴の料理に使うために殺された動物たちの泣き声を聞き、悲しみによって出家したとされています。結婚式を中止して逃げ出す際、Neminathaは生き残った魚を川に放してあげたとのこと。
そんなNeminathaが入滅したとされるギルナール山はジャイナ教の聖地であり、Andersen氏は実際にギルナール山を登ったそうです。登山道には出家したジャイナ教の信者がおり、信者は生き物をうっかり吸い込まないように、口元を白い布で覆っていたとAndersen氏は述べています。
ギルナール山にあるジャイナ教の寺院へ向かう道中、Andersen氏は1匹のスズメバチが飛んでいるのを見かけました。ハチは人間との共通点が薄い存在と思われており、実際にハチと人間に共通する祖先にたどり着くには7億年もさかのぼらなくてはなりません。
しかし、そんなハチは「ゼロの概念」を理解し、自身の知識をほかの固体に教えることすらできることが判明しています。
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さすがに人間とハチが持つ意識のありようは大きく違うかもしれないものの、さまざまな研究結果が発表されている今では、ハチにだって意識がないとは言い切れないとAndersen氏は述べました。
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in サイエンス, 生き物, Posted by log1h_ik
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