サイエンス

不要不急の外出を控えて社会的距離を保つと新型コロナウイルスの流行はどの程度抑えられるのか?


新型コロナウイルスの感染を抑えるためにはできるだけ人との接触を減らし、社会的距離を保つ生活を送ることが重要だといわれています。実際に社会的距離を保つことでどれほど新型コロナウイルスの流行を抑制できるのかについて、スマートフォンの位置データに基づいて分析した結果が医学誌のJAMA Network Openに報告されました。

Association of Social Distancing, Population Density, and Temperature With the Instantaneous Reproduction Number of SARS-CoV-2 in Counties Across the United States | Infectious Diseases | JAMA Network Open | JAMA Network
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2768570

Study Confirms Social Distancing as Most Effective Intervention Against COVID-19 | PolicyLab
https://policylab.chop.edu/press-releases/study-confirms-social-distancing-most-effective-intervention-against-covid-19

How Much Can We Reduce COVID–19 Spread by Staying Home? A Lot, New Research Shows
https://www.sciencealert.com/how-much-can-we-reduce-covid-19-spread-by-staying-at-home-a-lot-new-research-shows


新型コロナウイルスのパンデミックが発生してから大きな注目を集めた指標として、「基本再生産数(R0)」というものがあります。R0値は疫学の分野において、「感染症の患者1人が平均してどれほどの人数に感染症を拡散させるのか」を示す値として使われるもの。R0値が1を下回れば各患者が他の人に感染させる数は次第に減少し、最終的に流行は落ち着きますが、R0値が1を超えると次第に患者数は増加していくこととなります。

他者との社会的距離を保つ政策はR0値を下げるために有効だとみられていますが、実際に社会的距離を空けることでどれほどの効果が出るのかを体感することは困難です。そこでペンシルベニア大学医学大学院David Rubin教授が率いる研究チームは、アメリカの各州にまたがりアメリカの総人口の54%をカバーする211の郡を対象に、新型コロナウイルスの流行抑制に関連する要因を調べる研究を行ったとのこと。

研究チームは2020年2月25日~4月23日までの約2カ月間にわたり、位置情報に基づく人々の移動に関するデータを提供する企業・Unacastから入手したスマートフォンの位置情報や期間中の温度、対象となる地域の人口密度などのデータを収集。このデータと新型コロナウイルスの感染状況に関するデータを照合し、どの要因が最もR0値に影響を与えるのかについて調べました。社会的距離の他に人口密度もウイルスなどの流行と密接に関わっていると予想されており、「夏になれば新型コロナウイルスの流行は終わる」など、気温が新型コロナウイルスの流行を左右するとの意見もあります。


研究チームはスマートフォンの位置データを基に「レストランや美容院など、必須ではないお店などへの訪問」について測定し、パンデミック中とパンデミック以前で訪問頻度を比較。パンデミックが起きた後、どれほど人々が社会的距離を保つ政策に応じたのかを調査しました。

その結果、平均して「必須でない訪問が50%減るとR0値が46%減少し、必須でない訪問が75%減るとR0値は60%減少する」という相関関係が発見されたとのこと。また、人口密度が高いこともわずかなR0値の増加に関連していたそうです。一方で、寒すぎず暑すぎもしない気温はR0値の減少に関連していたものの、気温とR0値の関連はやや不明確だったと研究チームは述べています。

今回の研究はあくまでも観察された結果から相関関係を導き出したものですが、社会的距離を保つことが新型コロナウイルスの流行抑制に役立つ推測を支持するものだといえます。Rubin教授は今回の結果を受けて、アメリカ全体がより長く社会的距離を保つ戦略を継続していれば、ヨーロッパやカナダのように症例数を減少させることができたかもしれないと指摘。将来的な感染を抑えるため、全国的に社会的な距離を保ちマスクを着用する戦略を取るべきだと主張しました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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