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中国がアメリカを上回ってロボット産業で優位性を確保できる要因とは?


近年ではレストランでネコ型配膳ロボットが用いられるなど、ロボティクス産業の需要が高まっています。これまでは、ボストン・ダイナミクスのヒューマノイド型ロボット「Atlas」や商用物流ロボット「Stretch」など、アメリカがロボティクス産業における優位性を保持していましたが、近年、中国がロボティクス技術と製造業において急速にその地位を拡大しています。

America Is Missing The New Labor Economy – Robotics Part 1 – SemiAnalysis
https://semianalysis.com/2025/03/11/america-is-missing-the-new-labor-economy-robotics-part-1/


分析会社・SemiAnalysisによると、中国のロボット国産化の取り組みは順調に進んでおり、中国国内のロボティクス産業における中国メーカーのシェアは2020年時点で30%だったものの、2025年3月には50%に達したとのこと。さらに一部の中国メーカーは西側諸国の大企業と肩を並べるほどにまで成長したローエンドロボット市場を離れ、近年ではより高価格帯の市場に進出し始めているそうです。

その代表例が、中国のロボット開発メーカー「Unitree」が開発した「Unitree G1」で、SemiAnalysisは「アメリカの部品に依存しない中国メーカーの高い技術力を示しています」と評しています。

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こうしたロボティクス産業における中国メーカーの急速な発展の背景には、中国政府の強力な推進力や圧倒的な製造能力、国内市場が持つ特性、そして将来を見据えた戦略的な投資が挙げられます。実際に中国政府は、ロボティクス産業を「国家戦略の重要な分野」と位置付け、「中国製造2025」などの計画を通じて、積極的な投資と補助金政策を推進しています。特に近年では、ヒューマノイド型ロボットを経済成長の新たなエンジンと捉え、集中的な投資を行っているとのこと。

また、長年にわたり世界の工場としての地位を確立してきた中国は、高度な大量生産技術と巨大な産業基盤を有しています。この基盤はロボットの製造においてもコストパフォーマンスや生産スピードにおいて他国を大きく引き離す要因になっています。具体的には、アメリカ国内でユニバーサルロボット「UR5e」を製造しようとした場合、中国国内で製造した時と比べてそのコストは約2.2倍にまで膨れあがります。また、バッテリーなどの重要部品においても、中国企業は世界市場で高いシェアを有しています。

中国のロボットメーカーの中には、主要部品の垂直統合に取り組んでいる企業もあり、実際にロボットメーカーのESTUNの内製化率は95%に達しています。これにより、製品開発のスピードと柔軟性を著しく向上させることが可能です。


競争が激しい中国国内市場では、最速で規模拡大できる企業が有利になる構造が存在しており、この環境こそが企業による迅速な製品開発と改良を促しています。その最たる例がDJIで、経済特区の深圳に拠点を置くことで部品調達と施策の迅速な繰り返しを実現し、ドローン市場で競合他社に対する圧倒的優位性を確保しています。

加えて、中国のロボティクス産業は外部環境の変化に対する高い適応力と強力なサプライチェーンを保有しており、2020年の新型コロナウイルスのパンデミックの際には、中国メーカーは迅速に自動化を進め、労働力不足を補ったそうです。


これまでのロボティクス産業は、ボストン・ダイナミクスを代表するようにアメリカが大きな支配力を持っていました。しかし、近年ではその優位性が失われており、その理由についてSemiAnalysisは「アメリカ経済はこれまで、デジタルイノベーションや最先端技術、サービス業に重きを置いており、この結果製造業の能力が低下しました。そのためアメリカのメーカーはコストパフォーマンスに優れる海外に生産拠点を置くようになっています。この結果、国内の製造基盤が貧弱になり、ロボティクスに必要な部品や材料の製造能力が不足しています」と指摘。さらに、「Made in America」のラベル表示に関する原則では中国から輸入した主要な部品をアメリカ国内で組み立てた場合でも、「Made in America」と表示できるため、海外依存の実態が曖昧になっています。

また、中国が長期的な国家イニシアチブでロボティクス産業を育成しているのに対し、アメリカではCHIPS法といった、政権ごとにその方向性が変わる制度が定められているのみで、一貫した戦略が存在しません。そのほか、長年ロボティクス業界をけん引してきた「Big 4」と呼ばれるFANUC・ABB・安川電機・KUKAなどの企業は、研究開発への投資や次世代ロボット開発への意欲が中国メーカーと比べて低いことも指摘されています。一方で中国のSiasunはドイツの職業訓練学校を買収し、海外での人材育成や技術ノウハウの獲得に積極的に取り組んでいます。


SemiAnalysisによると、あらゆるタスクをあらゆる環境で実行できる「汎用(はんよう)ロボティクス」は現代のロボティクスにおける「聖杯」であり、最初に開発に成功した国が大きな恩恵を得られるとのこと。現代のロボットは構造化された環境と静的なタスクに限定されていますが、近年ではハードウェアの制約やデータ不足、AIの限界などが克服されつつあるそうです。

アメリカでは、ロボティクス産業において遅れをとっている現状に対する認識が高まっており、政府や産業界、研究機関の連携を促す声も挙がっています。SemiAnalysisは「中国によるロボティクス産業の支配を阻止し、アメリカが今後も競争力を維持するために、適切な国家戦略の策定や国内製造業の再構築、サプライチェーンの強化、研究開発への投資などが喫緊の課題である」と論じました。

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in Posted by log1r_ut

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