細菌は生存競争に打ち勝つため「大規模な自爆攻撃」を行っていると判明
細菌は攻撃的な生き物であり、多様な方法で競争相手を殺して自分の株を繁栄させようとします。そんな細菌が「大規模な自爆攻撃を行う」ということが判明しました。
The Evolution of Mass Cell Suicide in Bacterial Warfare - S0960-9822(20)30646-1.pdf
(PDFファイル)https://www.cell.com/current-biology/pdf/S0960-9822(20)30646-1.pdf
Bacteria perform mass suicide to defend their colony | University of Oxford
http://www.ox.ac.uk/news/2020-06-05-bacteria-perform-mass-suicide-defend-their-colony
細菌が競争相手を殺す方法の1つに、「自爆攻撃」があります。この自爆攻撃は細菌が能動的に自分を壊して、他の株を殺す毒素を大量に放出するというもの。一部の細菌がこの種の自爆攻撃を行うことはこれまでにも知られてきましたが、その規模についてはわかっておらず、「自爆攻撃を行う細菌は全体のうちほんのわずか」だと考えられてきました。
しかし、「細菌の自爆攻撃はかなり大規模に行われており、数百万もの細菌がいっせいに自爆攻撃を行うこともある」という論文をオックスフォード大学の研究チームが新たに発表しました。
研究チームは「自爆攻撃を行う細菌に色を付ける」という技術を開発し、微弱蛍光をタイムラプス撮影できるタイムラプス顕微鏡を使って、別個のコロニー同士で争い合っている最中の「細菌の戦争」を撮影しました。
公開されたムービー(37.9MB)を見ると、細菌の戦争において自爆攻撃がかなり大規模に行われていることが理解できます。
ムービーでは、2つのコロニー同士が戦争を行っています。
敵側のコロニーに面する部分は戦争の最前線ともいえる箇所で、多数の細菌が自爆攻撃を繰り返し、大量の毒素が放出されています。
この最前線をタイムラプス顕微鏡で拡大するとこんな感じ。緑色は通常状態の細菌、紫色は自爆攻撃を行った細菌を示しています。
時間が経過すると、自爆攻撃を行う細菌は増え続け……
戦争開始時から8時間後には、最前線となった箇所は自爆攻撃を行った細菌だらけに。この自爆攻撃は、「死にかけている細菌」がよく行うそうです。
研究チームによると「自爆攻撃」を行うのは細菌だけではなく、アリやハチなどの社会性を持つ昆虫でも、外敵に対して大規模な自爆攻撃を実行することが知られているとのこと。
科学研究で最も頻繁に使われる細菌である大腸菌もこの自爆攻撃を行うことに触れて、論文の共著者であるケビン・フォスター教授は「大腸菌のような細菌は、私たちの体内に住む病原体であると同時に、共生生物でもあります。そのため、大腸菌のような細菌が『細菌の戦争』に勝利するかどうかは人の健康を左右する問題です。細菌の戦争を研究することは、体内の病原体を弱めたり、人体にとって都合のいい細菌を促進したりすることにつながる可能性があります」とコメントしています。
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