電気だけを食べて生きられるバクテリアとは?
生物が生きていくためには水や酸素などとともに「食料」が不可欠ですが、電気を「食べる」ことで生命を維持できる微生物が発見されています。
Meet the electric life forms that live on pure energy - New Scientist
https://www.newscientist.com/article/dn25894-meet-the-electric-life-forms-that-live-on-pure-energy/
人間に限らず多くの生物は、食料と水と酸素を消費しながら生きています。例えば、エネルギー源として摂取した砂糖は化学的に分解されて酸素と反応させることでエネルギーを取り出しますが、このメカズムは「電気(電子)を酸素に受け渡す」ということを意味しています。つまり、「食べる」という行為は、途中でアデノシン三リン酸(ATP)というエネルギー貯蔵物を媒介させてエネルギーを放出させるという形をとりますが、突き詰めれば「電子を受け渡す」行為でもあるわけです。
一般的に、ほとんどの生物が、食物を食べることで電子を受け渡すのに対して、ごく一部の微生物(バクテリア)は、直接、電子を受け渡すことでエネルギーを取り出し生命活動を行えることが分かっています。つまり、一部のバクテリアは「電気を食べて」生きることができるというわけです。
By NIAID
このバクテリアは「Electric bacteria(電気細菌)」と呼ばれており、世界中の鉱物中に存在することが知られています。南カリフォルニア大学のケネス・ネルソン博士はElectric bacteriaを研究しており、研究室で電気以外の食物を断った状態でElectric bacteriaを生存させることに成功している数少ない研究者です。
ネルソン博士は海底から持ち帰った泥土に電極を挿入してわずかに電極間に電圧の高低差をつけることで、Electric bacteriaを収集するとのこと。
Electric bacteriaの様子は以下のムービーで確認できます。
Electric bacteria connect to form wires - YouTube
何かのプレパラート。
2つの○の間に挟まれた20マイクロメートル分の厚みに入れられているようです
上の○は酸素でしたの○は硫化水素。
拡大すると無数のバクテリアはケーブル状に連なることで、電子を数センチメートルもの距離に渡って伝達可能とのこと。
まるでロープのような形状が、食物と酸素をとらえるように絡みつきます。
Electric bacteriaを発見しているのはネルソン博士以外にも、南カリフォルニア大学のヤムニ・ジャンガー博士がデスバレーのモハーベ砂漠の井戸から発見した例があるとのこと。また、ネルソン博士の指導するアネット・ロウさんは、近く、電気を食べるバクテリアは少なくとも8種類特定されているという論文を投稿する予定だとのこと。
また、レンセラー工科大学のユーリ・ゴルビー博士は、「2電極間で電気を使って成長させることに成功したElectric bacteriaは、理論的には電気を流し続けることで、永遠に生命を維持できる」と考えており、永遠に生き続けられる電圧変化について研究を行っています。
ネルソン博士は「電気を食べて生きられるElectric bacteriaは、まるで別世界から来たエイリアンのようなものです。Electric bacteriaの存在は、私たちの全く知らない世界があるということを教えてくれます」と述べています。
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