サイエンス

金属とバクテリアを使って糖をジェット燃料に変える技術を開発


空気や水をエネルギー原料として利用する仕組みが作られる一方で、バクテリアを用いて代替燃料となるバイオ燃料を作ったりと、再生可能な生物由来の有機性資源であるバイオマス資源の生成には多くの研究が行われていますが、カリフォルニア大学の研究によって金属とバクテリアを使って糖からジェット燃料を作り出す方法が新たに開発されました。

More Bang for the Biofuel Buck « Berkeley Lab News Center
http://newscenter.lbl.gov/news-releases/2012/11/08/more-bang-for-the-biofuel-buck/

Integration of chemical catalysis with extractive fermentation to produce fuels : Nature : Nature Publishing Group
http://www.nature.com/nature/journal/v491/n7423/full/nature11594.html

Combined bacterial/metal catalysis turns sugars to jet fuel | Ars Technica
http://arstechnica.com/science/2012/11/combined-bacterialmetal-catalysis-turns-sugars-to-jet-fuel/


これまでバイオマス資源の生成方法には大きく分けて発酵法と化学反応の2種類があり、発酵法からはメタンやエタノール・ブタノール、化学反応からはディーゼル燃料などが合成されていました。発酵法によるバイオマス資源の生成は1910年ごろから研究され、特に第二次世界大戦後の1950年代には航空燃料を合成するための原料、ブタノールを生成するために多用されました。石油化学工業の発達によってその後衰退しましたが、化石燃料の枯渇問題に伴い、現在ではブタノールを生成するためのアセトン・ブタノール発酵(ABE発酵)も多く行われています。このABE発酵によって最終的にアセトン・ブタノール・エタノールの3種類が生み出されるのですが、ブタノールはエタノールよりも発熱量が大きく燃料として効率的であるため、いかにアセトンとエタノールの合成量を減らし、総溶媒に占めるブタノールの比率を引き上げるかといったようなことが重要となってきます。

そこで、アメリカ・カリフォルニア大学の研究チームが新たに開発したのが、クロストリジウム・アセトブチリクムというバクテリアの力を借りる伝統的な発酵法と化学触媒を利用する化学反応の2つを組み合わせて新たなバイオマス燃料を作るという方法。ABE発酵では通常、バクテリアに原材料となる糖を加えることにより、アセトンやエタノール・ブタノールといった小さな炭素化合物を生産します。しかし、これらの炭素化合物において炭素は最大でも4つしか含まれず、化合物の全てが構造の中に酸素を組み込んでいます。新たな研究ではこの炭素化合物をアルキル化させることによってより効率的なバイオマス燃料を作り出すのです。


これらの代謝作用は生成するバクテリアに対して有害になるまで行われ、有害になると反応は終わってしまいます。そこで、カリフォルニア大学の研究者たちは化合物生成の際に水と混ざらないグリセリルトリブチレートを使用するという解決策を見つけだしました。グリセリルトリブチレートは優先的にアセトンやブタノールを溶かし、それらをバクテリアが生息する水から切り離します。なお、この時エタノールも取り残されるため、エタノールについては別のバイオ燃料として再度使える可能性もあります。

そして、一旦分離された炭素化合物において、パラジウムなどの金属を触媒として縮合反応を引き起こします。この反応で水分子は放出され、ブタノールはアセトンと結合します。この反応は同時にケトンと呼ばれる有機化合物を残します。ケトンは第1反応のアセトンと構造が非常に似ており、別の縮合反応を起こすため、結果として、ケトンが間に入った11の炭素で構成される化合物ができあがるというわけです。この化合物は反応によって生まれたすべての化合物のうち約半分を占めているとのこと。これは従来の炭化水素燃料と異なりますが、ディーゼル燃料と非常によく似た燃え方をするため、ディーゼル燃料やジェット燃料の原料油として使用することも可能です。既存の原料油よりは少し値が張りますが、自然燃料は限界があることからも、このバイオ燃料は代替燃料として今後の利用が考えられています。

By caribb

このバイオ燃料の問題の一つとして触媒として使用するパラジウムが非常に高価である、ということがあります。しかし、研究者らによればパラジウム1モルで3000モルの製品の反応を起こすことが可能であり、そこまでコストが問題になることはないと考えられています。また、同様の効果がありより安価な触媒も今後見つけられるかもしれない、とのこと。

さらにもう一つの問題としては、反応の際に酸素を含んだ複雑な炭化水素の混合物が生まれるということです。もしかすると有効利用できる方法があるかもしれませんが、いずれにしてもディーゼルエンジンとして使用する前にこの混合物をなんとかして再度分離させる必要があります。

これまでバイオ燃料の研究は発酵法と化学触媒のいずれかに着目して行われてきましたが、今回はその両方を使うことによってより効果的なバイオ燃料が開発されたとのこと。価格にネックがありますが、今後このバイオ燃料は大きな役割を果たすはずです。

By USDAgov

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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