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オンライン対戦ゲームでサブアカを作り初心者狩りなどを行う「スマーフィング」はなぜ生まれたのか?


スマーフ(スマーフィング)」とは、オンライン対戦ゲームなどでサブアカウントを作成・使用することで実際の腕前よりも低いレベル帯でプレイする行為であり、「初心者狩り」につながる不正行為であると受け止められています。この「スマーフィング」がどのように生まれてインターネット上で波及していったかをInverseがまとめています。

Smurfing meaning in gaming: How an annoying strategy became a viral meme
https://www.inverse.com/gaming/smurfing-meaning-gaming-overwatch-league-of-legends

スマーフィングとは、オンライン対戦ゲームなどで高度なスキルを持つプレイヤーが、初心者などの自分よりも下手なプレイヤーと対戦するために、新しいサブアカウントを作成してゲームをプレイする行為を指します。高度なスキルを持ったプレイヤーからすると、普段よりもレベルの低い相手と対戦することができるため、ちょっとした息抜きになったりプレイそのものをより楽しんだりすることが可能ですが、本来の対戦相手よりも高いスキルを持った相手と対戦しなければならなくなる初心者にとっては、百害あって一利なしな迷惑行為といえます。


Inverseはスマーフィングを「NBA選手のカイリー・アービングが老人に扮してストリートバスケに参加するペプシのCMとまったく一緒です。確かに面白いし、NBA選手に会うことができますが、それは4回連続でダンクが決まってからです。実際に一緒にプレイした側は、だまされたような感覚に陥ります」と指摘しています。

スマーフィングはオンライン対戦ゲームの基本的な「プレイヤーを同じレベルの相手と対戦できるようマッチングさせる機能」をあざむく行為にほかなりません。なお、人気オンラインバトルロイヤルゲームの「フォートナイト」はスマーフィングを禁止していますが、League of Legendsはプレイヤーが新しい戦略をテストするための方法としてスマーフィングを擁護したことがあります。


YouTubeのチャンネル登録者数が1180万人を超える人気配信者のひとりTfueは、視聴者を楽しませるための企画のひとつとして、フォートナイトでスマーフィングする様子を動画にしたこともあります。

Smurfing in ranked fortnite - YouTube


スマーフィングという用語はゲーム界隈以外でも利用され始めており、インターネット上では例えば「プロが『面白映像を投稿するアマチュア』のフリをすること」として使用されているとのこと。また、海外掲示板のReddit上では「IRLSmurfing(現実世界におけるスマーフィング)」というゲームの中ではなく現実世界で行われるスマーフィング専門のサブレディットが存在しており、9万6000人近くのユーザーが参加しています。「IRLSmurfing」上には、プロのミュージシャンが初心者のフリをするムービープロサッカー選手が初心者のフリをするムービーなどが投稿されています。

IRLSmurfing: Real life smurfs
https://www.reddit.com/r/irlsmurfing/top/


ゲーム界隈だけでなく現実世界でも広く使われるようになってきている「スマーフィング」を最初に行ったのは、1996年に登場した「Warcraft II:Tides of Darkness」の有名プレイヤーだったGeoff “Shlongor” Frazier氏と、Greg “Warp” Boyko氏の2人。当時、Warcraft IIやコマンド&コンカーなどのオンライン対戦を行うときには「Kali」と呼ばれるソフトを使う方法が主流で、2人もKaliを使用してWarcraft IIのオンライン対戦を行っていたそうです。

Kaliを使ってWarcraft II:Tides of Darknessでオンライン対戦するには、オンライン対戦ロビーに入って対戦相手を待つ必要がありました。しかし、ロビーで待機中のプレイヤーを確認することが可能であり、Frazier氏とBoyko氏が有名プレイヤーであったため、他のプレイヤーは2人と対戦することを回避しがちだったそうです。そこで、Frazier氏とBoyko氏は他のプレイヤーが自分たちと認識できなくなるように、サブアカウントを作成するという案を思いつきます。Frazier氏の作成したサブアカウントの名前が「PapaSmurf」で、Boyko氏のサブアカウントは「Smurfette」でした。


当時はゲームのプレイ画面を録画する術がなかったため、スクリーンショットを撮影してブログ上にスマーフィングの記録などを残すプレイヤーが多くいました。Frazier氏は自身のブログの中で「俺はWarpと一緒にWarcraft IIでサブアカを作り、他プレイヤーとの対戦を楽しんでるぜ!」「スマーフ(サブアカウント)として遊ぶのはメッチャ楽しいぜ!」と記しています。

Frazier氏とBoyko氏がサブアカウントを使ってゲームを遊んでいることはたちまち広がり、同じようにサブアカウントを作ってゲームをオンライン対戦を楽しむプレイヤーに、Frazier氏らが遭遇したこともあったとのことです。

Warcraft II:Tides of Darkness以降のゲームでよりオンライン対戦が一般的になるにつれ、スマーフィングは山火事のように広がっていきます。特に、2004年にリリースされたオンライン対戦対応の「Halo 2」で画期的なマッチング機能が搭載されたことで、「スマーフィング」という用語はオンライン辞書サイトのUrban Dictionaryに登録されるほど広く知られることとなりました。

Halo 2のオンライン対戦には、Halo 2のオンライン対戦には、プレイヤーをスキルごとにランク分けして、対戦時には同程度の腕前のプレイヤーとマッチングするシステムが採用されています。これはオーバーウォッチの「ライバルプレイ」やフォートナイトの「アリーナ」、スプラトゥーンの「ガチマッチ」のようなランクマッチの基礎となり、初心者がスマーフィングに苦しむ大きな理由にもなっています。


オンライン対戦ゲームにおけるランクマッチでは、プレイヤーが敗北すると自身のランクを決めるポイントが減少します。しかし、ゲーム側が「このプレイヤーはスマーフィングしている」と知ることはできないため、サブアカウントを作成しているプレイヤーには実害がないまま、スマーフィングに敗れたプレイヤーだけが一方的に多くのポイントを減らしてしまいます。

そのためこれまで多くのゲームでスマーフィングが問題視されており、開発者はスマーフィングに対処するか否か、またはスマーフィングそのものを禁止するか否かといった問題に直面することとなります。オーバーウォッチのディレクターであるジェフ・カプラン氏は2019年にプレイヤー間で大きな問題とされていたスマーフィングについて、「スマーフィングに対する非常に悪い認識が存在することを私は知っています。しかし、実際にはオーバーウォッチのマッチングシステムではスキルの高いプレイヤーがスキルの低いプレイヤーから急速に隔離されるようになっています」と述べました。フォートナイトはスマーフィングを禁止していますが、アカウントをサブアカウントと判別する情報は「プレイヤーからの報告」に依存しているのが現状です。

プレイヤーは同じランクのゲーマーと対戦した際に、相手が同ランクのゲーマーなのか、それともTwitch上でゲーム実況を行う配信者のイタズラに巻き込まれているのか、知る術はありません。また、ゲームに負けたからといって「相手がスマーフィングしている!」と対戦相手を通報すれば、罪のないプレイヤーを貶めてしまう可能性もあるため、プレイヤー側にできることはまさに何もないというのが現状。そのため、Inverseは「時代を超え、オンライン対戦上でスマーフィングは今も続いています」と記しています。

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in 動画,   ゲーム, Posted by logu_ii

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