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「クソッ」などの悪態をつくだけで痛みへの耐性が上がることが判明


うっかり熱い物に触れてしまったり足を家具にぶつけたりして痛みを感じた際に、思わず「クソッ」などと汚い言葉を口にしてしまった経験がある人もいるはず。そんな「悪態をつくことと痛みの関係」についての研究結果から、「Fワードをつぶやくことで痛みへの耐性が上がる」「悪口の鎮痛作用は人によって異なる」といったさまざまなことが判明しています。

Frontiers | Swearing as a Response to Pain: Assessing Hypoalgesic Effects of Novel “Swear” Words | Psychology
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpsyg.2020.00723/full

Pain Experiment Shows There Really Is Something Soothing About Saying The 'f' Word
https://www.sciencealert.com/saying-the-f-word-really-does-make-things-seem-to-hurt-less-pain-experiment-shows

The F-word’s hidden superpower: Repeating it can increase your pain threshold | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2020/06/the-f-words-hidden-superpower-repeating-it-can-increase-your-pain-threshold/

The science of why bad words feel so good during painful moments | CBC Radio
https://www.cbc.ca/radio/quirks/the-science-of-why-bad-words-feel-so-good-during-painful-moments-1.5589136


多くの人が痛みを感じた時に思わず悪態をついてしまった経験を持っており、経験的に「悪口を言っていると痛みが紛れる」と感じている人も少なくありません。しかし、実際に悪態をつくことと痛みの感覚についての研究をする人は少ないとのこと。そんな悪口と痛みの研究についての第一人者が、イギリスのキール大学で心理学講師を務めるリチャード・スティーブン氏です。

スティーブン氏は、出産中の妻が汚い言葉を吐いていることに関心を持ち、「悪態をつくことで痛みが緩和されるのか?」という謎を研究することに決めたそうです。2009年の研究では、氷水に手を浸した人々が悪態をつくと手に感じる痛みが軽減され、より強い痛みに耐えることができるようになることを示しました。このユニークな研究は多くの人々から注目を集め、スティーブン氏は2010年のイグ・ノーベル平和賞を受賞しました。

また、その後に行われた研究では「普段はあまり悪態をつかない人の方が、悪態をつくことによる鎮痛作用が大きい」ことも判明しました。悪態をつくことによって痛みが緩和されるのは英語圏の人々に限らず、日本人を対象にした研究ではFワードの代わりに「クソ」という言葉が用いられましたが、やはり「クソ」とつぶやくことで痛みの許容範囲が広がることが確かめられたとのこと。


新たな研究で、スティーブン氏は大学院生のオリー・ロバートソン氏と共同して、Fワードの代わりに「架空の汚い言葉」を使った実験を行いました。実験では研究チームが92人の被験者らに対し、「3~5度という非常に冷たい温度に保たれた氷水に手を浸して可能な限り痛みに耐える」というタスクを与え、被験者の心拍数を測定しました。

このタスクを遂行する間、被験者らは3秒に1回の間隔でそれぞれ決まった単語をつぶやきました。つぶやく言葉は「Fワード」「中立的な単語(例:『solid』など)」「fouch(架空の悪口)」「twizpipe(架空のユーモラスな言葉)」のうち1つで、fouchとtwizpipeは研究チームがこの実験のために作り出した架空の単語でした。研究チームによると、fouchは悪口を意図した単語であり、twizpipeはユーモラスなニュアンスを意図した単語だとのこと。

実験の結果、架空の悪口をつぶやいた人は中立的な単語と同程度の痛みにしか耐えられませんでしたが、Fワードをつぶやいた人は痛みを感じるしきい値が32%、痛みへの耐性が33%上昇したことが判明。ロバートソン氏は、「氷水に手を入れて悪態をついた場合、そうでない場合と比較して18秒も長く冷たい水に耐えることができました」と述べ、実際にこの恐ろしい体験を18秒間も耐えなければならないのは大変だと指摘しています。


一体なぜ悪態をつくことが痛みへの耐性を上昇させるのかについては不明な点が多く、「通常は言うことが禁止されているワードをつぶやくことで戦うか逃げるか反応がオンになり、アドレナリンが分泌されるため」「ストレスの後に悪態をつくことで脳がリラックスするため」といった複数の仮説があるとのこと。

悪態をつくことによる鎮痛作用は幼少期からの環境が影響していると見られており、「悪口が力を得る方法については適切に理解されていませんが、悪口は子ども時代に学習され、悪口を使うことによる感情の喚起は嫌悪感のある古典的条件付けが寄与していることが示唆されています」と研究チームは指摘。悪口を知った状況とそれを使う場面についての学習が、悪態をつくことによる鎮痛作用に関連している可能性があると主張しました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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