イセエビが海中であげる「うなり声」は3キロメートル先まで届く
ロブスターとイセエビはどちらも「海中に生息する大きなエビ」ですが、ロブスターはザリガニ下目アカザエビ科、イセエビはイセエビ下目イセエビ科と、まったく別の生き物です。ロブスターがよく食べられるフランスの海に生息するPalinurus elephas(ヨーロッパイセエビ)が海中で放つ音は最大3キロメートル先まで届くという驚きの研究結果が発表されました。
Spiny lobster sounds can be detectable over kilometres underwater | Scientific Reports
https://www.nature.com/articles/s41598-020-64830-7
Spiny lobster noises may be heard up to 3 kilometers away
https://phys.org/news/2020-05-spiny-lobster-noises-heard-kilometers.html
近年では、生物が発する音をキャッチして生き物の位置や個体の大きさを特定する「パッシブ音響モニタリング(PAM)」という研究方法が注目されています。特に、地上と違って視認が非常に難しい海中では、PAMによって音の周波数や検出範囲を調べることで生物の空間分布を把握することも可能になります。
ヨーロッパイセエビは触角の下にやすりのような組織を持ち、この組織をこすりあわせることで、まるでうなるようなノイズを発生させることができます。その音の大きさは、ヨーロッパイセエビから20センチメートル離れた海中で最大170デシベルを記録するとのこと。なお、ジェットエンジンで環境省のかかげる(PDFファイル)騒音の目安によれば、パチンコ店内の音の大きさは90デシベルです。
Institut Universitaire Européen de la Mer(欧州海洋大学研究所、IUEM)の研究員であるYouenn Jézéquel氏は、フランス西部のサンタンヌ・デュ・ポルツィック湾で24匹のヨーロッパイセエビによるノイズを1560件記録しました。
Nouvel article de thèse accepté dans @SciReports sur les sons des langoustes Bretonnes qui nous révèlent plein de belles choses en Mer d'Iroise (plus d'infos prochainement). Une bonne nouvelle pendant ces temps difficiles... @UBO_UnivBrest @INEE_CNRS @IUEM_Brest @LemarLab pic.twitter.com/Jn3PSQTfx4
— Youenn_Jézéquel (@youenn_jezequel) April 1, 2020
ノイズは、ヨーロッパイセエビから0.5メートル~100メートルの間に設置された水中マイクで記録されました。24匹のヨーロッパイセエビのうち、大きな個体が放つノイズは100メートル離れても記録できましたが、中型の個体は50メートル、小さな個体は10~20メートルが限界だったそうです。
Jézéquel氏によれば、大きなヨーロッパイセエビが発するノイズは400mまで検出可能だとのこと。また、体長13.5cmの最大個体が放つノイズは、その周波数と音量から、最高で3キロメートルまで届くと推定しました。Jézéquel氏は、海中のノイズを拾って分析することで、本来目視で確認が難しいヨーロッパイセエビのおおまかな分布や大きさが予測できるとしています。
Hâte de visiter SanDiego lundi prochain pour la conférence d'acoustique #ASA178 @ASA_JASA! Je parlerai des sons produits par la langouste Bretonne en Mer d'Iroise (résultats qui font suite à notre 1er article: https://t.co/sySQS1pYCV) avec de belles photos d'@erwanamice @LemarLab pic.twitter.com/qMafHamcs6
— Youenn_Jézéquel (@youenn_jezequel) November 26, 2019
ヨーロッパイセエビは乱獲によって、近年その個体数を大きく減らしているとのこと。Jézéquel氏は「音響を使って非侵襲的かつ非破壊的に海中生物を検出できるPAMの開発は、ヨーロッパイセエビのように乱獲で激減している種を管理するために必要です」と述べました。
・関連記事
ペンギンは水中で獲物を狩る時に鳴き声を出していることが判明 - GIGAZINE
全長120メートルの「超巨大なヒモ」のような生物が発見される、シロナガスクジラを抜いて世界最長の生物である可能性 - GIGAZINE
海底の岩石中に1立方センチメートル当たり100億個の微生物が生息していると判明、火星に生命がいる可能性が急上昇 - GIGAZINE
イッカクの牙は大きいほど性的魅力があることを生物の「性淘汰」に取りつかれた研究者が明らかに - GIGAZINE
ウミガメがプラスチックゴミを食べてしまうのは「おいしそうな匂いがする」から - GIGAZINE
・関連コンテンツ