激しい運動を伴うフィットネスクラスは新型コロナウイルスの拡散にうってつけ、ただし拡散しない運動もある
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関してはジムやフィットネスで多くの感染者が発生したと報告されています。しかし、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の最新の報告では、一言で「フィットネスクラス」といっても多様であり、「COVID-19がまん延するクラス」と「COVID-19がまん延しづらいクラス」があると示されています。
Early Release - Cluster of Coronavirus Disease Associated with Fitness Dance Classes, South Korea - Volume 26, Number 8—August 2020 - Emerging Infectious Diseases journal - CDC
https://wwwnc.cdc.gov/eid/article/26/8/20-0633_article
韓国ではCOVID-19感染者の追跡が行われていますが、公衆衛生当局によると、連続して確認されたCOVID-19感染者に聞き取りを行っていったところ、その全員が2月15日に行われたダンスのクラスに参加していたことが判明したとのこと。檀国大学校医学部で感染症を研究する臨床助教授のSukbin Jang氏は、フィットネスクラスを通じてどのように感染が広まっていったかを調査しました。
韓国ではラテン音楽に合わせたフィットネスダンスクラスが強度の高い有酸素運動として人気を博しています。2月15日のワークショップでは27人のインストラクターが4時間の集中トレーニングに参加しており、そのうち8人がRT-PCRで陽性を示したことがわかりました。感染した当日、感染者は全員無症状でした。COVID-19に感染した8人のうち6人は天安市から、1人は大邱広域市から参加していたとのこと。
その後、3月9日までに天安市にある12箇所のスポーツ施設でフィットネスダンスクラスに関連する112件のCOVID-19症例が特定されています。2月15日のワークショップに参加し、後にCOVID-19陽性が確認されたインストラクターは軽いせき症状だけだったため、ワークショップの後1週間は天安市で週2回、1回50分のレッスンを行っていました。
以下は、ワークショップに参加し、その後COVID-19陽性が確認された天安市のインストラクター6人からどのように感染が広がっていったかを示した図。赤色で示されたA・B・C・D・E・Fがインストラクターで、インストラクターが実施したクラスの参加者が多いほど、感染が広がっていることがわかります。
COVID-19陽性が確認されたフィットネスダンスクラス生徒は平均するとクラスに参加した3.5日後に症状を呈しました。追跡した感染のうち50.9%は「フィットネスクラスのインストラクターから生徒に」という形で起こり、33.9%はインストラクターや生徒の「家庭内感染」、15.2%は同僚や知人と会った際に移ったケースでした。
天安市でインストラクターから生徒への感染が起こったケースの特徴として、「クラスの人数が多いこと」「スペースが狭いこと」「運動強度が高いこと」が挙げられています。スポーツ施設の湿度が高く温かい空気が、強度の高い運動によって生み出された乱気流とあいまって、高密度の飛沫感染をもたらしたとみられています。
また、感染が見られたクラスは60平方メートル以内の部屋で5~22人の生徒が50分の高強度運動を行っていました。同じクラスで5人以内の生徒がレッスンに参加しているとき、感染は見られなかったとのこと。また、同施設でヨガやピラティスを7~8人の生徒に対して教えているクラスでもPCR検査で陽性が出なかったことから、研究者は強度が低いヨガやピラティスでは、強度の高い運動のクラスのような感染が起こらない可能性が高いと仮説を立てています。
ただし、この調査では、スポーツ施設の完全な名簿が利用できず、感染者の見逃しがあった可能性は排除しきれないとのことです。
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