髪の毛から「新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる影響」を計測する研究プロジェクト
オークランド大学のエリザベス・ブロードベント健康心理学教授が、ノッティンガム大学とキングス・カレッジ・ロンドンと共同で、髪の毛を分析することで新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによる影響を調査する研究プロジェクトを推進しています。
Coronavirus: Impact of Covid-19 pandemic tracked through hair | Stuff.co.nz
https://www.stuff.co.nz/national/health/121478225/coronavirus-impact-of-covid19-pandemic-tracked-through-hair
ブロードベント教授の研究テーマは、「COVID-19のパンデミックによって引き起こされるストレス」です。「私たちの現況は大きく変化しており、大きな不確実性とストレスを伴います。パンデミックがストレスに与える潜在的な影響は、これまで見たことのないレベルの規模と範囲に及んでいると考えられます。人々の不安やうつ、ストレスのレベルは、一般的なものよりも高くなるでしょう」とブロードベント教授は語っています。
ブロードベント教授が進める研究プロジェクトでは、被験者から数回にわたって髪の毛を採取。そして、髪の毛に含まれるコルチゾールの含有量を分析します。
コルチゾールは副腎皮質から分泌されるホルモンの一種で、糖利用の調節、血圧制御など、代謝で重要な役割を担う物質。また、コルチゾールはストレスを感じると分泌量が増えることから、ストレスのバイオマーカーとしても注目されています。
コルチゾール濃度は血液や唾液から測定されるのが一般的ですが、血液の場合は「血液採取そのものがストレスの原因となる」という問題が、唾液の場合は「直前に行った飲食や運動の影響を強く受けやすい」という問題があります。そこで、毛髪や爪に含まれるコルチゾールからストレスを定量化する手法が近年採用されています。
さらに、ブロードベント教授の研究では、髪の毛を採取するほかに、被験者の年齢・性別・民族など人口統計学的要因を調査。さらに就業状況、ウイルスへの暴露レベル、医療や交通などの社会インフラを支えるエッセンシャル・ワーカーであるかどうかについても情報を収集するとのこと。
ブロードベント教授は、この研究結果が将来の健康危機対策に役立つだろうとコメント。「COVID-19パンデミックが心理的にも肉体的にも人にどのような影響を与えるのかがわかれば、同じようなことが再び起こった場合に、人々を助ける計画をどのように立てるべきかがわかります」と述べました。
なお、被験者対象は18歳以上のニュージーランド人で、1000人以上からサンプルとアンケート回答を収集するとのこと。研究データはイギリスのデータとも比較する予定だそうです。
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