国連の「社会的距離を保つためのアプリ」が基本的な機能すら満足に動作しないと大バッシング

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行を抑えるために、他者との距離をとって社会的距離を保つ戦略が重要視されています。2020年4月29日、国連の研究機関であるUN Technology Innovation Labs(UNTIL)が、社会的距離を保つためのアプリ「1point5」を発表しました。ところが、このアプリは最も基本的な機能すら満足に動作しないと、テクノロジー系メディアのMotherboardが指摘。多くのユーザーからも非難の声が上がっています。

UNTIL released free social distancing app 1point5 | United Nations Technology Innovation Labs
https://until.un.org/news/until-released-free-social-distancing-app-1point5

The United Nations Coronavirus App Doesn’t Work - VICE
https://www.vice.com/en_us/article/g5xz37/united-nations-coronavirus-app-1point5-doesnt-work

UNTILの発表によると、1point5はLTO Networkという企業と共同で開発されたモバイルアプリであり、Bluetoothを利用してほかの携帯電話や電子機器との距離を測定し、社会的距離が保てない範囲に別のデバイスが近づいた場合に警告を発するとのこと。1point5が警告を発する距離はデフォルトだと1.5mですが、ユーザー側で距離を広げたり縮めたりすることも可能だそうです。

実際に1point5を使うとどうなるのかは、以下のムービーで見ることができます。

1Point5App - Social Distancing | COVID-19 - YouTube

インストールした1point5のアイコンをタップし……

「Start」ボタンをタップ。

「接近しすぎ」を警告する距離はデフォルトだと1.5mとのことですが、2.0m、2.5m、3.0mのいずれかに変更することも可能です。

距離を決めたら「Next」をタップ。

「GO！」ボタンをタップすると、ほかの電子機器が発するBluetoothを受信して距離を測り、近づきすぎの場合は警告を出してくれるとのこと。

ほかの電子機器が近くにある場合、「PLEASE KEEP YOUR DISTANCE」と警告が表示されます。

1point5は非常にシンプルな作りのアプリとなっていますが、Motherboardが4月29日にアプリをインストールして使用してみたところ、Bluetoothがオンになっているほかのデバイスを上手く検出することができなかったとのこと。同様の批判はGoogle Playストアページにも寄せられているとのことで、「動作しない」「時間の浪費」「無駄なアプリ」といったコメントも見られます。

また、社会的距離を保つためのアプリが持つそもそもの機能として、「ほかの電子機器が発するBluetoothの信号を検出する」というシステムは欠陥だという指摘もあります。Bluetooth信号がゲーム機、コンピューター、スピーカー、スマートホームアシスタント、IoT機器といったさまざまなデバイスから出ているため、固定されているデバイスや自分自身が持つほかのデバイスに反応して1point5が警告を出してしまう可能性があるとのこと。テクノロジー系コンサルタントのAshkan Soltani氏は、1point5は上手く動作しないだろうと述べ、1point5は単にユーザーを煩わせるだけのアプリだと非難しました。

1point5の開発者とされているRenato Cardoso氏はMotherboardに対し、「国連がリリースしている現在のバージョンは、あなたの周囲にある全てのBluetoothデバイスを検出します。私たちはコンピューターやテレビなどのデバイスをフィルタリングし、次のバージョンではアプリがインストールされているデバイスのみを検出できるようにします」とコメントしたとのこと。また、1point5について国連のメディア担当者であるStephane Dujarric De La Riviere氏に問い合わせたところ、「私はこのアプリについて聞いたことがありませんでした」との返答があったそうです。

Soltani氏は、パンデミックに役立つとの名目で大量のアプリやサービスが節操なく展開され、人々を混乱させてしまう可能性があると指摘。上手く動作しないアプリやサービスの乱立により、必要かつ効果的なシステムの成功が妨げられてしまうことが懸念されるとSlotani氏は述べました。