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歴史的に国家は人命より経済を優先してきたという指摘


トランプ大統領が経済活動再開に向け、2020年4月30日が期限となっている感染防止の行動指針を延長しない方針を示唆しています。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の収束と経済活動、どのようにバランスを取っていくかは難しいところですが、学術系ニュースサイトのThe Conversationが、人命よりも経済が優先されてきた歴史があることを指摘しています。

As states weigh human lives versus the economy, history suggests the economy often wins
https://theconversation.com/as-states-weigh-human-lives-versus-the-economy-history-suggests-the-economy-often-wins-137204


南カリフォルニア大学のピーター・C・マンコール教授が例に挙げたのは、北米大陸の植民初期のエピソードです。

北米への植民を試みていたイギリスはロアノークなどでの失敗を経て、1607年に初の恒久的植民地・ジェームズタウンの建設に成功します。ジェームズタウンは現在のバージニア州にあり、チェサピーク湾の支流・ジェームズ川沿いに位置する、たばこの栽培に適した土地でした。たばこは、新大陸で普及していたものがヨーロッパ人の目にとまり、ヨーロッパでも吸われるようになっていました。


1607年の建設から1624年までにバージニア州に入植した人は約7300人。しかし、1625年には約1200人に減っていました。これは、1622年に起きたパウタハン族による反乱や干ばつによる食糧不足の影響もあったものの、主に病気によるものでした。ジェームズタウンは、腸チフスや赤痢の原因となる細菌の理想的な繁殖地でもあったためです。

植民地を建設したロンドンのバージニア会社が移民として送り込んでいたのは、職を求めてロンドンに移住したものの仕事を得られなかった若者たちでした。彼らは植民地の農場で季節労働者として働き、満期時に報酬を受け取れるという契約を結んでいましたが、新大陸で病気の犠牲となりました。会社は、こうした問題点があることを認めたあとも、「将来は明るい」と移民を送り込み続けました。

一方、時期の近い1655年にロンドンで腺ペストが流行。翌1956年には大火事があり、人口が大きく減少しました。減少幅は15%から20%に上るといわれています。この出来事により、それまでならバージニア州に移住していたであろう労働力がロンドン再建に携わることになりました。これにより打撃を受けたのがバージニア州やメリーランド州の農場主です。会社は、人間の労働力の業務割合(労働集約性)が低いトウモロコシなどの作物を栽培するように指導していたそうですが、現地の農場主は労働集約性は高くても稼ぎのいいたばこ栽培にこだわり、奴隷を使うという選択肢を採用。最初にアフリカからの奴隷が到着したのは1619年のことですが、1660年代以降、数が大幅に増加したことがわかっています。


すでに奴隷制度が廃止されている現代のアメリカですが、マンコール教授は、似たような状況が続いていることを指摘しています。この場合、「奴隷」にあたるのは移民労働者たちです。

現実問題、アメリカでは農場の労働力などを移民に大きく依存しており、トランプ政権は移民排斥の方針を打ち出している一方で、必要不可欠な存在であることを認めています。トランプ大統領は、COVID-19の影響によって失業したアメリカ人の雇用を守るために移民の受け入れを停止すると発表しましたが、このあとで農場労働者が対象から外されています。

移民受け入れ、米国が60日間停止へ トランプ氏が表明:朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/ASN4Q3HYQN4QUHBI00J.html

東京新聞:移民規制の米大統領令署名 トランプ氏、60日間停止:国際(TOKYO Web)
https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2020042301000628.html

マンコール教授は、経済活動再開を検討する以前から、移民の労働者たちは適切な治療を受けられない状態で働いていたと指摘。人命よりも経済が優先されているのではないかと、疑問を呈しています。

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in メモ, Posted by logc_nt

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