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IBMがCOBOLプログラマーの募集と育成に本腰、現役を退いたベテランに熱視線


アメリカの大手IT企業IBMが、メインフレームコンピューター向けソフトウェアのオープンソース開発プロジェクトであるOpen Mainframe Projectと共同で、プログラミング言語COBOLのスキルを持つ人材の募集と育成を開始することを発表しました。

Explore IBM - IBM Systems
https://newsroom.ibm.com/2020-04-09-IBM-and-Open-Mainframe-Project-Mobilize-to-Connect-States-with-COBOL-Skills

IBM's Open Mainframe Project initiative to help train COBOL coders - Mashviral News
https://mashviral.com/ibms-open-mainframe-project-initiative-to-help-train-cobol-coders/

If you’re an expert in COBOL, you’re suddenly in high demand
https://www.dallasnews.com/business/technology/2020/04/13/if-youre-an-expert-in-cobol-youre-suddenly-in-high-demand/

COBOLは1959年に開発された非常に古いプログラミング言語ですが、信頼性の高さから2020年現在でも根強い支持を受けています。また、新型コロナウイルスの影響で失業者が急増したことに伴う失業保険給付申請の急増を受けて、いまだCOBOLで稼働し続けているアメリカ・ニュージャージー州の失業保険システムの改修や整備のためCOBOLのスキルを持つ人材が急募されたことでも、注目を集めました。

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COBOLのスキルが求められているのは、ニュージャージー州だけではありません。イギリスの大衆紙Daily Mailの報道によると、ニュージャージー州の他にもカンザス州・コネチカット州・メイン州・ロードアイランド州・ミシシッピ州・オクラホマ州など、アメリカ各地で失業保険の申請が急増し、これに伴い失業保険システムの改修が可能な人材の需要が高まっているとのこと。

こうした状況について、IBMは「新型コロナウイルス感染症の世界的なパンデミックの中で、当社のクライアントは前例のない事態に直面しています。特に、一部の州では記録的な数の失業保険給付申請を処理するという、当面の課題に迫られていることが明らかとなりました」と現状を明らかにし、一時的な需要の急増に対応すべく、Linux Foundation傘下のOpen Mainframe Projectと協力し、以下の3つの取り組みを新しく開始することを発表しました。

・あらゆるCOBOLプログラマーのコミュニティに募集をかける人材ポータルを新設することで、退職したベテランCOBOLプログラマー・COBOL講座を修了した学生・ボランティアに意欲のある専門家を新たなニーズと結び付ける。
・COBOL Technical Forumの開設:経験豊富なCOBOLプログラマーが無償でのアドバイスや専門知識の提供ができるように、一時的なフォーラムを開設することで、COBOLプログラマーが問題を共有し、新しい技術を習得し、迅速に解決策を得ることを可能にする。
・Open Source COBOL Trainingの創設:専門家が初心者にCOBOLを教え、豊かな経験や知識を継承させるためのオープンソースのトレーニングプログラムを開始し、誰でも無料でCOBOLを学べるカリキュラムを用意する。

IBMのメインフレーム事業IBM Zを担当するヴァイスプレジデントのメレディス・ストーウェル氏は、「COBOLで作られたシステムに、変更を加えるプログラミングスキルを必要としている州がいくつもあります。これらのコードの変更作業は、非常に限られた時間の中で失業保険給付の適格性に関する新しいパラメータを考慮しなくてはなりません。IBMは、こうしたスキルを必要としているクライアントと緊密に連携してそのニーズに応え、彼らが直面している課題の解決策を見いだす人材の結集に尽力します」と述べました。

COBOLのスキルの必要性が叫ばれている現状について、ベテランのCOBOLプログラマーからはさまざまな反応が寄せられています。保険会社や官公庁のCOBOLシステム開発者を歴任してきた75歳のマフムード・エッツェルディン氏は「大変な災難です。COBOLは学ぶのが難しく、インターネットを前提に設計されたものでもありません。大学を出たばかりの人たちはもっと簡単な言語を学びたいと思っていますが、そんな人たちを責めることはできません」とコメントしました。

ワシントンD.C.の近郊に住んでいるエッツェルディン氏は、政府のボランティア募集に喜んで応じるつもりだとのこと。なお、IT分野の調査会社Gartnerの調べによると、COBOLプログラマーの平均年齢は60歳を超えているとのことです。

by Karen

また、スタンフォード大学の元教授であるジオ・ ウィダーホールド氏は「COBOLを勉強することは、今どきの学生にはあまりお勧めできません」と話しています。1979年にスタンフォード大学に教職として迎えられ、Apple・Facebook・Googleのエンジニアにコンピューターサイエンスを教えてきた経験もあるウィダーホールド氏ですが、COBOLを教えたことは1度もないとのこと。

一方、世界最大のコンピュータネットワーク機器開発会社Cisco SystemsのCEOを務める53歳のチャック・ロビンズ氏は、バンク・オブ・アメリカの前身となった金融企業のCOBOLプログラマーだった経験から、「幸いなことに、私はCOBOLはそれほど難解な言語ではなかったと記憶しています。今の若い人なら理解できるでしょう」と述べて、若手COBOLプログラマーの活躍に期待感をのぞかせました。

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in ソフトウェア, Posted by log1l_ks

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