サイエンス

新型コロナウイルスの「病原性が低い変異種」をワクチンとして活用するというアイデア


世界中の医療機関が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンや治療薬を全力で開発していますが、そういったワクチンや治療薬は「一般的に流通するまでには1年以上かかる」と考えられています。このような状況に対して、ウイルスの専門家であるダニエル・ティレット氏が、「致死性が低い新型コロナウイルスの変異種にわざと感染する」という予防方法を提案しています。

A (possible) solution to COVID-19 – Daniel Tillett
https://www.tillett.info/2020/04/05/a-solution-to-covid-19/

How would a search for a natural attenuated SARS-CoV-2 strain work in practice? – Daniel Tillett
https://www.tillett.info/2020/04/12/how-would-a-search-for-a-natural-attenuated-sars-cov-2-strain-work-in-practice/

全てのウイルスと同様に、新型コロナウイルスは人に感染するたびに少しずつ遺伝子に変異が生じています。そして、それぞれの変異種で致死力や感染力が少しずつ異なります。


ティレット氏が考案した予防法は、「新型コロナウイルスの変異種の中でも病原性の低いものにあらかじめ感染する」というもの。病原性の低い変異種は感染しても重病化しにくいという傾向があり、感染することによって新型コロナウイルスに対する「抗体」が得られるようになります。このような病原性の低い変異種を含むワクチンは「生ワクチン」として知られており、ポリオワクチンはしかワクチン、風疹ワクチン、水痘ワクチン、BCGワクチンは全て生ワクチンです。

ティレット氏によると、中国の浙江大学の研究チームは「ZJ01型」と呼ばれる変異種は感染しても体全体に広がることはなく、通常種よりも病原性が低いことをすでに突き止めているそうです。このZJ01型のように病原性の低い新型コロナウイルスの変異種は存在が確認されているため、さらなる研究を続けて人体にほぼ影響を与えないような変異種を特定して、それを投与すべきだというのがティレット氏の主張です。


病原性の低い新型コロナウイルス変異種を特定して、ワクチンにする具体的な方法もティレット氏はすでに考案しています。その手順が以下。

1.軽度・無症状のCOVID-19感染者からサンプルを綿棒で収集する。
2.全てのサンプルをゲノム解析する。
3.ゲノムが欠損した種(欠失突然変異株)の中でも弱毒かつこれ以上変異しにくい種を特定する。
4.この変異種に感染している人を見つけ出す検査手法を開発する。
5.この変異種に感染している人を実際に見つけ出す。
6.この変異種に感染している人が実際に重病化しないことを確認する。
7.確認後、この変異種を培養して生ワクチンとする。


「インフルエンザのように、抗体が共有されないほど変異してしまうのでは?」という疑問に対して、ティレット氏は「コロナウイルスは遺伝的に安定していると判明しており、インフルエンザ、HIV、C型肝炎ウイルスとは異なり時間の経過とともに抗原性があまり変化しない傾向があります。また、最悪の場合でも同じプロセスで生ワクチンを製造すればいいだけです」と返答。ティレット氏は、ポリオウイルスの生ワクチンが100%安全とはいえない事実を挙げて、「新型コロナウイルスの生ワクチンも100%安全とはいえない」と前置きした上で「リスクを受け入れて、前に進む時期です」と語りました。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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